第556回:スバルは「リアル」な雪国を走る
日本有数の豪雪地帯で4WDの伝統と実力を再確認
2019.02.23
エディターから一言
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降雪地帯の日常を知るために、訪れたのは山形県だった。実は月山の北東麓に位置する肘折温泉は、昨2018年2月に445cmという観測史上4位の積雪を記録した、日本でも有数の豪雪地帯である。クルマにも人間にも厳しい環境下におけるロングドライブで、スバルが長年培ってきた4WDの実力を試してみた。
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一般道でこそわかる真実
スバルの雪上試乗会は、他の同様のものとは違う。世界販売の98%を占める自慢のAWD(4WD)モデルの実力を体験してもらうのが狙いであることは言うまでもないが、テストコースなどのクローズドコースではなく、現実の一般公道を走り「リアルワールド」を体験できるのがユニークだ。
この時期、凍結した湖上や北海道の特設コースなどで行う“雪上試乗会”は珍しくはないが、ついでにちょこっと一般道をひとまわり、ぐらいが関の山で、変化する天候の中でさまざまな路面コンディションが現れる本当の雪道をおなか一杯走ることはまず難しい。ずっと前からどこかが企画してくれないかと期待していたのだが、スバルが昨年から乗り出してくれた。さすがは4WDを“家業”とするスバルである。
もちろん、特設コースでの雪上試乗会にもメリットはある。ほとんど雪道の経験がないドライバーでも安心して試せるのが一番大きな利点だ。安全に“限界”を経験できることも挙げられるが、いっぽうで箱庭的なコースではウインタードライブのごく一面しか経験できず、そこを何周かしただけで「やっぱり4WDはすごい!」と手放しで喜ぶのは、まあ経験ある人には無理な話だ。
そもそも、せっかく安全に試すことができるクローズドの特設コースを設営するなら、4WDではなくても簡単に乗り越えられるモーグル路などではなく、限界を体感できる難コースも作るべきではないかと思う。自分たちの製品の長所をアピールしたいのは当然ではあるけれど、できることとできないことを知らしめることが大切なはずである。
だったら両方やればいいじゃないか、というのはもちろん正論だが、厄介なのは一般道をある程度の距離を走る試乗会は何より主催者側の負担が大きいことだ。準備と実際のオペレーション、万一のアクシデントの場合の対応などを考えれば、特定の場所で行うものと、一般車が行き交う公道を丸一日走るものとでは手間暇もリスクも大違いである。だからこそスバルの英断が際立つ。何より冬の山間部は天候が急変するリスクもある。
実際に今回も肘折温泉に登る山道では、一時数m先も見えないような吹雪に見舞われた。視界が真っ白くなると、スバル自慢のアイサイトもたちまち音を上げ、“認識不能”との警告が表示された。カメラのみの検知方式はこういう状況ではお手上げだから仕方がないが、それも合わせて体験できることが、繰り返すが重要なのである。雪国に暮らす人は日常的にそんな場面に遭遇している。AWDもADASもスタッドレスタイヤも大変ありがたい装備ではあるが万能ではないということを忘れてはいけない。
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