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第559回:目指すは“世界3大タイヤメーカー”の仲間入り
大志を抱くコンチネンタルタイヤは日本でも受け入れられるか?

2019.03.06 エディターから一言 生方 聡
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コンチネンタルタイヤの新商品「エココンタクト6」。
コンチネンタルタイヤの新商品「エココンタクト6」。拡大

自動車大国ドイツのタイヤブランドであるコンチネンタルタイヤ。世界に冠たるジャーマンクオリティーと、“タイヤ専門”ではない総合自動車部品メーカーならではの強みを武器に、コンチネンタルが目指す目標とは? 今年発表の新製品とともに紹介する。

会場に設けられていたタイヤの展示スペース。「エココンタクト6」は省燃費性能だけでなく、ハンドリングや乗り心地のよさ、グリップ性能の高さなども追求された商品となっている。
会場に設けられていたタイヤの展示スペース。「エココンタクト6」は省燃費性能だけでなく、ハンドリングや乗り心地のよさ、グリップ性能の高さなども追求された商品となっている。拡大
「グリーン・チリ2.0」と呼ばれる新しいコンパウンド配合技術が用いられた「エココンタクト6」。トレッドパターンについてもリブのエッジの形状をタイヤの内側向き、外側向きで変更するなど、工夫が凝らされている。
「グリーン・チリ2.0」と呼ばれる新しいコンパウンド配合技術が用いられた「エココンタクト6」。トレッドパターンについてもリブのエッジの形状をタイヤの内側向き、外側向きで変更するなど、工夫が凝らされている。拡大
会場の片隅にはこんな展示も。コンチネンタルは、アディダス製シューズのソールのラバーも開発しているのだ。
会場の片隅にはこんな展示も。コンチネンタルは、アディダス製シューズのソールのラバーも開発しているのだ。拡大
コンチネンタルタイヤ・ジャパンのグレゴリー・メイ社長(左)と、技術サービス&トレーニング・マネジャーの小川直人氏。
コンチネンタルタイヤ・ジャパンのグレゴリー・メイ社長(左)と、技術サービス&トレーニング・マネジャーの小川直人氏。拡大

走りが自慢のエコタイヤ?

2019年2月21日、都内某所でコンチネンタルタイヤの新製品発表会が催された。案内状には、商品名はもとよりどんなタイヤなのかも一切触れられていなかったので、会場に入るまで何が出てくるのか興味津々だったのだが、果たして今回の主役は……コンチネンタルタイヤが「ハイパフォーマンス・エコタイヤ」とうたう「エココンタクト6」だ。

“エココンタクト”といえば、ヨーロッパのコンパクトカーなどに新車装着されているのをよく見かけるベーシック系タイヤで、実際、2003年に登場した「コンチエココンタクト3」はメーカーの新車装着承認が66件、2011年登場の「コンチエココンタクト5」では135件を数える。

そんな、ヨーロッパ車を支えるエココンタクトがフルモデルチェンジして、エココンタクト6に進化。その特徴は、転がり抵抗、ウエットブレーキ、耐摩耗性能という、相反する性能を満遍なく向上させたことだ。実際、従来のコンチエココンタクト5に比べて、転がり抵抗を15%、ウエットブレーキ性能を6%、耐摩耗性能を20%向上させたという。

興味深いのが、エコタイヤでありながら“ハイパフォーマンス”を強調している点だ。説明によれば、ハンドリング性能を17%向上させながら、静粛性はコンチエココンタクト5と同レベルを維持しているとのこと。そしてタイヤサイズも、コンチエココンタクト5が13~20インチだったのに対し、エココンタクト6は13~22インチに拡大。これによって、よりプレミアムなモデルへの新車装着が増える見込みで、実際、アウディの「A7スポーツバック」や「A6」への新車装着も決まっているというし、22インチについても、あるメーカーのSUVに装着されるということである。

“Conti”が消えた!

エココンタクト6の詳細はぜひ既出のニュースをご覧いただくとして、ここまで読み進めてきた読者の中には、なにやらモヤモヤしている人も少なくないに違いない。おそらくその原因は、新しい製品名だろう。新製品の登場を機に、名前から“Conti(コンチ)”の文字が消えたのだ。

もっとも、この流れは今に始まったわけではない。コンチネンタルタイヤは、かねて新世代の製品名に「コンチ」の文字を使わない方針を示していた。ウルトラハイパフォーマンス/スポーツタイヤの「スポーツコンタクト6」、ハイパフォーマンス/コンフォートの「プレミアムコンタクト6」、そして今回のエココンタクト6。同社のサマータイヤ“3本柱”から「コンチ」の名か消えたことは、同社の主力製品が第6世代に移行したことを示しているのだ。

なじみのある「コンチ○○○コンタクト」が「○○○コンタクト」に変わるのは少し寂しい気もするが、末尾の“コンタクト”がブランド名と同じくらい浸透していること、また名前を短くすることで、サイドウオールの製品名が大きく表記できることなどから、この判断に踏み切ったという。

逆に言えば、コンチ、コンチとブランドを喧伝(けんでん)しなくてもいいくらい、ヨーロッパなどではコンチネンタルタイヤがポピュラーな存在ということだ。実際、ヨーロッパでは新車の3台に1台がコンチネンタルタイヤを装着。世界的に見ると、コンチネンタルタイヤはブリヂストン、ミシュラン、グッドイヤーに次ぐ4番目のタイヤメーカーなのだ。

そんなコンチネンタルタイヤが「ビジョン2025」のひとつとして目指しているのが、世界トップ3のタイヤメーカーになること。もちろん「3位になりたい」わけではなく、あくまで狙うのがトップなのはいうまでもない。いずれにせよ、今以上の拡販を図る上で、安定したシェアを誇るヨーロッパ市場や現時点で売り上げを伸ばしているアメリカ市場に加え、アジアパシフィックエリアでも販売を拡大する必要に彼らは迫られているのだ。

「エココンタクト6」のサイドウオールに書かれた商品名。これまでの商品は「コンチエココンタクト○」(○には数字が当てはまる)という名称だったが、今回の新製品では、冒頭の「コンチ」の文字が消えた。
「エココンタクト6」のサイドウオールに書かれた商品名。これまでの商品は「コンチエココンタクト○」(○には数字が当てはまる)という名称だったが、今回の新製品では、冒頭の「コンチ」の文字が消えた。拡大
「ホンダNSX」のマイナーチェンジモデルに装着された「スポーツコンタクト6」。コンチネンタルタイヤでは、いわゆる第6世代の商品から「Conti(コンチ)」の文字を使わない商品名を採用している。(写真=荒川正幸)
「ホンダNSX」のマイナーチェンジモデルに装着された「スポーツコンタクト6」。コンチネンタルタイヤでは、いわゆる第6世代の商品から「Conti(コンチ)」の文字を使わない商品名を採用している。(写真=荒川正幸)拡大
コンチネンタルタイヤの世界的な業績と、今後の目標について語るコンチネンタルタイヤ・ジャパンのメイ社長。
コンチネンタルタイヤの世界的な業績と、今後の目標について語るコンチネンタルタイヤ・ジャパンのメイ社長。拡大
ヨーロッパでは多くのクルマに純正装着されているコンチネンタルタイヤ。近年では世界3大タイヤメーカーの仲間入りを果たすことを目標に掲げている。
ヨーロッパでは多くのクルマに純正装着されているコンチネンタルタイヤ。近年では世界3大タイヤメーカーの仲間入りを果たすことを目標に掲げている。拡大

高い技術力をうまくアピールできれば……

日本でも、ヨーロッパ車ユーザーにはなじみのあるコンチネンタルタイヤ。最近では、「ホンダ・シビック タイプR」や「ホンダNSX」「スズキ・スイフトスポーツ」といった日本車にも新車装着され、着実に知名度は上がっているが、まだまだ勝負はこれからだろう。

そんな彼らの強みは、「ジャーマンテクノロジー」と「自動車開発で培ったノウハウ」だという。いまさらだが、コンチネンタルタイヤは1871年にドイツのハノーバーに誕生したゴム製品の会社で、1904年には世界で初めてトレッドパターンを採用した自動車用タイヤを発表するなど、ドイツの高度なテクノロジーによりモノづくりを続けてきたブランドだ。その伝統が、仮にドイツ車好きでなくても、心に響く日本人は多いだろう。

さらにコンチネンタルは、タイヤメーカーの他に別の顔を持っている。自動車部品サプライヤーとしては、「ボッシュ」に次ぐ世界第2位の企業なのだ。当然その守備範囲は広く、ブレーキやABS、スタビリティーコントロールから、メーター、ドライバーアシスタンスシステムに必要なカメラ、さらには自動運転を支える技術など、クルマに欠かせないものばかりだ。

中でもブレーキには強みがあり、全自動ブレーキ性能屋内試験場「AIBA」を2012年に稼働させ、天気に関係なくさまざまな状況でのブレーキテストができる環境を整えた。そのノウハウはタイヤづくりにも生かされており、コンチネンタルタイヤは「We are Best in Braking.」の合言葉とともにタイヤの力で交通事故死亡者ゼロを目指している。

高い理想と、それを無責任な標語にしない技術力。このあたりをうまく伝えていくことが、日本でのファン獲得のカギになるのだろう。

(文=生方 聡/写真=コンチネンタル、webCG/編集=堀田剛資)

2017年に登場した現行型「ホンダ・シビック タイプR」に装着される「スポーツコンタクト6」。コンチネンタルタイヤの商品は、日本車の間でも徐々に浸透しつつある。
2017年に登場した現行型「ホンダ・シビック タイプR」に装着される「スポーツコンタクト6」。コンチネンタルタイヤの商品は、日本車の間でも徐々に浸透しつつある。拡大
自動車部品メーカーとして世界第2位の規模を誇るコンチネンタル。手がける分野は多岐にわたり、自動運転技術の開発にも積極的に取り組んでいる。写真は高速道路における自動運転機能「クルージングショーファー」の試験車両。
自動車部品メーカーとして世界第2位の規模を誇るコンチネンタル。手がける分野は多岐にわたり、自動運転技術の開発にも積極的に取り組んでいる。写真は高速道路における自動運転機能「クルージングショーファー」の試験車両。拡大
2012年に稼働した全自動ブレーキ性能屋内試験場「AIBA」。油圧装置による路面の交換が可能で、季節や天候によらず、さまざまな路面状態でのブレーキ性能を効率的にテストできる。
2012年に稼働した全自動ブレーキ性能屋内試験場「AIBA」。油圧装置による路面の交換が可能で、季節や天候によらず、さまざまな路面状態でのブレーキ性能を効率的にテストできる。拡大
ドイツの高度なテクノロジーを背景とした商品のクオリティーを訴求できれば、日本でもより多くのファンを獲得できるかもしれない。
ドイツの高度なテクノロジーを背景とした商品のクオリティーを訴求できれば、日本でもより多くのファンを獲得できるかもしれない。拡大
生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

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