第34回:BMW 3シリーズ(後編)
2019.05.22 カーデザイナー明照寺彰の直言 拡大 |
従来のモデルを大事にし、より洗練させていくのがBMWデザインの真骨頂……のはずが、新型「3シリーズ」はどうもそうはなっていない様子。自動車デザイナー明照寺彰が、次世代の大黒柱の“気になるポイント”を語るとともに、BMWデザインのゆらぎの原因を探った。
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厚みを増したフロントマスクに思う
明照寺彰(以下、明照寺):新しい3シリーズに話を戻しますけど、プロポーションは典型的なFRセダンで、すごくスポーティーですよね。それに対して、ディテールは少し煩雑かな、と思います。
ほった:……ここまではいい感じだったのに(前編参照)、今回も、ここにきて雲行きが怪しくなってきましたね。
永福:いやいや、そうですよね! キドニーグリルのフチのメッキが太くなってる点なんか、ちょっと大味じゃないですか?
明照寺:そこなんですけど、実は今回の型は“顔”が厚くなってるんですよ。前の型より。前の型って、とても低い姿勢で構えてるイメージですけど、新型は高級車的な堂々とした厚みのある顔つきになった。それはある意味、3シリーズもフツーになったということです。普通の高級セダン的になった。
ほった:「デリカD:5」が「トヨタ・アルファード」のセンを狙って、顔をオラオラにしたようなもんでしょうか。
明照寺:たぶん市場の要望なんでしょうけど、従来のBMW 3シリーズのイメージから離れて、顔を大きくした感じですね。「5シリーズ」も同様です。3も5も、どうも顔のイメージが違うなぁと思って見ていたんですが、側面から見ると、明らかに顔が厚くなってるんですね。
永福:いわゆる厚顔。
明照寺:これは、単純にデザイン的なものなのか、それとも歩行者保護や衝突安全がらみのものなのかは定かではないですけど、中国や北米などで、より顔を強く見せたいという市場の要望があるんじゃないかな。
永福:デザインに関しては、中国市場の要望を犯人にしておけば「仕方ない」で済まさざるを得ないのが実情ですよね~(笑)。
ディテールが大味になってませんか?
永福:それにしても、実際にこうして先代と新型を並べると、マイナーチェンジレベルの変化ではあるんだけど、よく見るとやっぱり大味になってる。
明照寺:確かに、グリルなどもあまりつくり込んだ感じがしないですね。今回の型からキドニーグリルのフチがつながりましたけど、太くてしかも均一の幅で回っているから平面的に見えます。先代は結構立体だったんですよ。
永福:そうなんですよ! もうひとつ微妙な部分の話をすると、ヘッドライトとキドニーグリルが、先代は少しだけつながってたじゃないですか。その小さなつながりが意外にインプレッシブで、上品に感じたんです。女性の微妙なメイク技みたいな。
ほった:印象は目元で決まりますからねぇ。
永福:おっ、ほった君も女性の目元にはこだわるんだ。
ほった:言ってみただけです。
明照寺:クルマも目元は当然重要です(笑)。
永福:そのつながりが、新型はドーンと太くなりましたよね。5シリーズも同様ですけど、それだけでずいぶん大味に感じるんですよ。個人的に先代3シリーズのオーナーだけに、そのあたりには特に敏感でして。サイドのメインキャラクターラインが消えてシンプルになったといっても、実物を前にすると、そっちには全然目がいかない。鼻と目元ばっかり見ちゃう。
ほった:さすがにそれは気にしすぎです(笑)。
世界をリードする存在であってほしい
明照寺:ちょうどサイドビューの話になったんで言っちゃいますけど、例のキャラクターラインがなくなってシンプルになったのは確かですが、それがいいかどうかは話が別です。
ほった:ありゃ、そうなんです?
明照寺:「X2」では新鮮に見えたんですけど、3シリーズでは、それが原因でサイドの上下寸法がずいぶん長くなったように見える。縦に厚みが増したイメージです。クルマによっては、そういう手法でよりスポーティーに、マッチョに見せることもありますが、新型3シリーズに関しては、ソリッドでスポーティーだった先代までと比べると、そこまでスポーティーには感じない。
永福:BMWにしたら、ちょっとつくり込みが甘いんじゃないですかね。
明照寺:つくり込みという点でもうひとつ挙げると、「Mスポーツ」のフロントバンパーのこの煩雑な感じっていうのは、これまでのBMWにはないでしょう。
永福:これも気になりますね。バンパーがうにゃうにゃっと、無意味にうねってるじゃないですか。
明照寺:バンパー上にヘッドランプにつながるV字型のキャラクターラインが入っているのですが、これによりバンパー中央部が3分割されています。さらに両サイドに別立体があるので、全部で5分割ですよ。これじゃ立体としての強さが感じられない。これまでのBMWは、こういうことはしなかったと思うんですよね。その他の仕様はそうでもないですが。
永福:どうしてこんなことしたんだろう?
明照寺:正直、ここの形状は意図がよくわからないです。3シリーズって、自分らもセダンをデザインする時は必ずベンチマークにするクルマなんですよ。だから、新しい世界観を期待したい。業界をリードしてもらいたいんですけどね。
この造形は“セダン冬の時代”が原因か
永福:細かい指摘が続きますけど、サイドウィンドウ後端の「ホフマイスターキンク」の部分も、なんでこんなにカクカクさせちゃったんでしょう? わざわざ後ろに伸ばして伸びやかさを表現したらしいけど。
明照寺:わざわざ別部品を付けて、後ろ側に伸ばしてますね。
永福:付け足し方も形状も、滑らかじゃないんですよ。
明照寺:サイドウィンドウ後端の形状は、わずかなことで全体のイメージが大きく変わります。デザイナーは非常に吟味するはずなんですけど……。確かに、今回の新型は、全体的にBMWとしては詰めが甘い気がしますね。
永福:甘いですよね~。
明照寺:どうしてだろう? やっぱりセダンって、いま世界的に難しいところにあるから、無理に個性を出そうとしたのかな。
永福:モデルチェンジによって洗練させていくのがドイツ流なのに……。
ほった:うーん。個人的には新型3シリーズ、そんなに悪くないと思うんですけど。……でも確かに、新しい「7シリーズ」なんか見ると「え!?」ってなっちゃいますもんね。キドニーグリル、こんなにデカくて。
永福:ここまで来ると、振り切っちゃってていいかもよ。デリカD:5的に(笑)。その点、新型3シリーズは中途半端だな。守旧派BMWファンには、先代3シリーズがオススメだよ! 中古車、とってもお買い得なので。
明照寺:実は私も、ちょっと欲しいなと思ってるんです(笑)。
(文=永福ランプ<清水草一>)

明照寺 彰
さまざまな自動車のデザインにおいて辣腕を振るう、現役のカーデザイナー。理想のデザインのクルマは「ポルシェ911(901型)」。
永福ランプ(えいふく らんぷ)
大乗フェラーリ教の教祖にして、今日の自動車デザインに心を痛める憂国の士。その美を最も愛するクルマは「フェラーリ328」。
webCGほった(うぇぶしーじー ほった)
当連載の茶々入れ&編集担当。デザインに関してはとんと疎いが、とりあえず憧れのクルマは「シェルビー・コブラ デイトナクーペ」。
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