ダイハツ・タントカスタムRS プロトタイプ(FF/CVT)/タントXターボ プロトタイプ(FF/CVT)/タントX プロトタイプ(FF/CVT)
軽自動車を革新せよ 2019.06.08 試乗記 ダイハツが「DNGA」と称する次世代のクルマづくり技術を総動員して開発した新型「タント」。プラットフォーム、エンジン、トランスミッションと、従来モデルからすべてが刷新された新しいトールワゴンは、軽の新時代を感じさせる見事な仕上がりとなっていた。“未来”と“世界”を見据えたダイハツの挑戦
「アイタタタ……」
朝、目覚めると同時に襲ってくる肩や背中の痛み。鏡に映るのは、ライザップCM“使用前”の姿。
「わたしはこのプヨプヨボディーで一生を送らなくてはいけないのかしら? もう菜々緒みたいな体形にはなれないのかしら?(それは絶対ムリ!)」
ビバ、肉体改造!
そんな筆者の悲願であるパーフェクトボディーを手に入れたのが、4代目となるダイハツ・タントである。タントといえば、2003年に初代が登場、2代目からは大開口のミラクルオープンドアを持つ“マタニティーカー”として、累計で200万台を売り上げている大ヒットモデルだ。ただ、近年は「ホンダN-BOX」といったライバル車に水をあけられていた。
そこで、ついにフルモデルチェンジである。
今回の開発のキモとなるのが、ダイハツ独自の設計思想である「DNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」だ。一番小さい軽のプラットフォームを磨き、同じやり方をAセグメント、Bセグメントへと展開していくことで、グローバルでも戦える安くて良いクルマづくりを目指すというもの。これにより、タントは実に17年ぶりにプラットフォームを一新。加えてエンジンやトランスミッションまで刷新された。プラットフォームとユニットを同時にすべて新しくするのは、ダイハツにとって初めての試みであり、CASE(コネクティッド、自動運転、シェアリング、電動化)やMaaS(Mobility as a Service)といった将来像を見据えての、社運を賭けた大刷新ともいえる。
具体的には、部品の共有化率を大幅に高めることで、プラットフォームの数を減らしつつ、1プラットフォーム当たりの車種数を増やす。これにより、軽からBセグメントまでで15ボディータイプ、21車種のラインナップとし、世界90カ国・地域での展開を視野に入れていくという。
では、クルマそのものはどう変わったのか?
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
DNGAとは何ぞや?
「安心・安全・ここちよい」、これがダイハツの目指す走りだ。安心して走るためには、土台がしっかりしていないとダメ。だからプラットフォームづくりをしっかりやる。これがすべての基本にある。
そのため、まずはボディーとサスペンションをそれぞれのモジュール単位で最適化し、しかる後に合体させるという、これまでのつくり方をやめた。DNGAではサスペンションアレンジを優先しながら、ボディー骨格のレイアウトを最適化し、軽量化と高剛性化を図っているのだ。これにより、タントではボディー剛性を30%向上させながら、-80kgの軽量化にも成功している。人間でいえば、まずは骨格矯正から始めて、筋肉を鍛え、細マッチョボディーを手に入れた、ということだろう。
パワートレインも刷新されている。とりわけ14年ぶりの新型となったエンジンは、型式変更には至らなかったものの部品という部品をすべて取り換えており、1回の点火で連続して2回火花を飛ばしたり、燃料をより細かな霧状にして噴射するといった技術の採用によって、実用燃費を約9%向上させた。
トランスミッションにも、「ベルト式CVT+遊星ギア」で変速させる、世界初のパワースプリット技術を採用した「デュアルモードCVT(D-CV)」を搭載し、燃費・加速感・静粛性の向上を図った。(詳しくは写真キャプションをどうぞ)
マッスルボディーへと変身を遂げたタント、その走りに期待が高まる。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
走りに感じる確かな効果
試乗会場となったのは袖ケ浦フォレストレースウェイ。プロトタイプ試乗なのでクローズドコースというのは理解できるが、コーナーの連続に加えてスラロームまで組み込まれたコースは、軽トールワゴンを走らせるにはなかなかにハード。そのうえ、比較用に現行モデルまでスタンバイしているのだから、開発陣の本気度たるやハンパじゃない。
そんな心意気に敬意を表して、現行モデルと新型のプロトタイプを乗り比べてみると、ライザップならぬDNGAの効果は絶大で、“使用前”“使用後”の走りはまったくの別物に感じられた。新型は軽い踏力でもブレーキがよく利くし、しっかりとアシが粘ってくれるので、運転していてまったく怖さを感じない。重心高が15mm下がっていることも奏功してか、その挙動には安定感があり、ボディーのよれを感じることなく、体幹に力の入った感覚とともに走っていける。加速においてもストレスなしといった印象だ。
とりわけ違いがわかるのは、コーナーでの身のこなしだ。新型ではしっかりインを突いて、コーナーに張り付いて走っていけるのに対し、現行モデルではブレーキの甘さやボディーのゆるさなどが感じられて思うようにいかず、より強くブレーキを踏まないと大回りしてしまう。現行モデルがまったくダメというわけではないが、新型が走りの精度をさらに高めているのは確かだ。DNGA効果は、確実にその走りに表れている。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
軽自動車こそ“いいクルマ”であるべき
「これは“オンナ・コドモのクルマ”からの脱却だ」と、女性ドライバーのワタシはサーキットを走ってみてそう感じた。
メーカー側にまったくその意識はないだろうし、あくまでも筆者自身の私見によるものだが、これまでは「女性や子供が乗る街乗りメインの軽だから、そこまでの性能はいらない」。そんな世間のイメージや潜在意識のようなものの影響が、あったように思う。
だが、新型はそれを感じさせない、骨太なつくりになっていた。「運転初心者も多い軽だからこそ、クルマの基本性能をもっと高めていこう」という意識で取り組んだところに、ダイハツという会社の心意気を感じる。
タントには、子どもの出産を機に初めてクルマの運転を始めるというユーザーも多い。生まれたばかりの子どもを乗せての運転は、親にとっての“はじめてのおつかい”のようなもの。事実、運転には親しんでいた筆者でも、出産後は幼い命を運ぶことに不安を抱き、運転を控えていた時期もあるくらいだ。自信を持って運転できるということは、一歩前に踏み出す勇気につながる。
DNGAによるクルマづくりをベースとして、新型タントには、進化した「スマートアシストIII」が搭載されるほか、スマートパーキングアシストやアダプティブクルーズコントロールも装備されている。シートアレンジも、先代からさらに進化させたと聞く。
そこで思う。タントはついにパーフェクトボディーを手に入れたのだなぁと。そして、もう一度鏡の前に立ってみる。菜々緒ボディーは一体いつ手に入るのか(だから、それは絶対ムリ)? まずは目の前のおいしそうなプリンが問題だ。ビバ、肉体改造!
(文=スーザン史子/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
ダイハツ・タントカスタムRS プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×--mm
ホイールベース:--mm
車重:--kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:--ps(--kW)/--rpm
最大トルク:--Nm(--kgm)/--rpm
タイヤ:(前)165/55R15 75V/(後)165/55R15 75V(ブリヂストン・エコピアEP150)
燃費:--km/リッター
価格:--万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:1670km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
ダイハツ・タントXターボ プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×--mm
ホイールベース:--mm
車重:--kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:--ps(--kW)/--rpm
最大トルク:--Nm(--kgm)/--rpm
タイヤ:(前)155/65R14 75S/(後)155/65R14 75S(ブリヂストン・エコピアEP150)
燃費:--km/リッター
価格:--万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:1931km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
ダイハツ・タントX プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×--mm
ホイールベース:--mm
車重:--kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:--ps(--kW)/--rpm
最大トルク:--Nm(--kgm)/--rpm
タイヤ:(前)155/65R14 75S/(後)155/65R14 75S(ブリヂストン・エコピアEP150)
燃費:--km/リッター
価格:--万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

スーザン史子
-
ホンダ・ヴェゼル【開発者インタビュー】 2025.11.24 「ホンダ・ヴェゼル」に「URBAN SPORT VEZEL(アーバン スポーツ ヴェゼル)」をグランドコンセプトとするスポーティーな新グレード「RS」が追加設定された。これまでのモデルとの違いはどこにあるのか。開発担当者に、RSならではのこだわりや改良のポイントを聞いた。
-
三菱デリカミニTプレミアム DELIMARUパッケージ(4WD/CVT)【試乗記】 2025.11.22 初代モデルの登場からわずか2年半でフルモデルチェンジした「三菱デリカミニ」。見た目はキープコンセプトながら、内外装の質感と快適性の向上、最新の安全装備やさまざまな路面に対応するドライブモードの採用がトピックだ。果たしてその仕上がりやいかに。
-
ポルシェ911カレラGTSカブリオレ(RR/8AT)【試乗記】 2025.11.19 最新の「ポルシェ911」=992.2型から「カレラGTSカブリオレ」をチョイス。話題のハイブリッドパワートレインにオープントップボディーを組み合わせたぜいたくな仕様だ。富士山麓のワインディングロードで乗った印象をリポートする。
-
アウディRS 3スポーツバック(4WD/7AT)【試乗記】 2025.11.18 ニュルブルクリンク北コースで従来モデルのラップタイムを7秒以上縮めた最新の「アウディRS 3スポーツバック」が上陸した。当時、クラス最速をうたったその記録は7分33秒123。郊外のワインディングロードで、高性能ジャーマンホットハッチの実力を確かめた。
-
スズキ・クロスビー ハイブリッドMZ(FF/CVT)【試乗記】 2025.11.17 スズキがコンパクトクロスオーバー「クロスビー」をマイナーチェンジ。内外装がガラリと変わり、エンジンもトランスミッションも刷新されているのだから、その内容はフルモデルチェンジに近い。最上級グレード「ハイブリッドMZ」の仕上がりをリポートする。
-
NEW
第855回:タフ&ラグジュアリーを体現 「ディフェンダー」が集う“非日常”の週末
2025.11.26エディターから一言「ディフェンダー」のオーナーとファンが集う祭典「DESTINATION DEFENDER」。非日常的なオフロード走行体験や、オーナー同士の絆を深めるアクティビティーなど、ブランドの哲学「タフ&ラグジュアリー」を体現したイベントを報告する。 -
NEW
「スバルBRZ STI SportタイプRA」登場 500万円~の価格妥当性を探る
2025.11.26デイリーコラム300台限定で販売される「スバルBRZ STI SportタイプRA」はベースモデルよりも120万円ほど高く、お値段は約500万円にも達する。もちろん数多くのチューニングの対価なわけだが、絶対的にはかなりの高額車へと進化している。果たしてその価格は妥当なのだろうか。 -
NEW
「AOG湘南里帰りミーティング2025」の会場より
2025.11.26画像・写真「AOG湘南里帰りミーティング2025」の様子を写真でリポート。「AUTECH」仕様の新型「日産エルグランド」のデザイン公開など、サプライズも用意されていたイベントの様子を、会場を飾ったNISMOやAUTECHのクルマとともに紹介する。 -
NEW
第93回:ジャパンモビリティショー大総括!(その2) ―激論! 2025年の最優秀コンセプトカーはどれだ?―
2025.11.26カーデザイン曼荼羅盛況に終わった「ジャパンモビリティショー2025」を、デザイン視点で大総括! 会場を彩った百花繚乱のショーカーのなかで、「カーデザイン曼荼羅」の面々が思うイチオシの一台はどれか? 各メンバーの“推しグルマ”が、机上で激突する! -
NEW
ポルシェ911タルガ4 GTS(4WD/8AT)【試乗記】
2025.11.26試乗記「ポルシェ911」に求められるのは速さだけではない。リアエンジンと水平対向6気筒エンジンが織りなす独特の運転感覚が、人々を引きつけてやまないのだ。ハイブリッド化された「GTS」は、この味わいの面も満たせているのだろうか。「タルガ4」で検証した。 -
ロイヤルエンフィールド・ハンター350(5MT)【レビュー】
2025.11.25試乗記インドの巨人、ロイヤルエンフィールドの中型ロードスポーツ「ハンター350」に試乗。足まわりにドライブトレイン、インターフェイス類……と、各所に改良が加えられた王道のネイキッドは、ベーシックでありながら上質さも感じさせる一台に進化を遂げていた。


















































