日産デイズ ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)
期待以上の力作 2019.06.17 試乗記 日産が初めて開発を手がけた軽乗用車、新型「デイズ」。スポーティーなルックスの“売れ線”FFトップモデル「ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション」をロングドライブに連れ出し、刷新されたプラットフォームやパワートレインの出来栄えを確かめた。沈滞ムードを解消する起爆剤
「事実は小説よりも奇なり」を地で行くこととなった前会長のスキャンダルが何とか一段落を迎えたかと思ったら、今度はルノーとFCAが経営統合を画策中という、これもまた何とも“青天のへきれき”の報。これは結局のところ話が白紙に戻ったものの、そんなこんなで昨今なにかと話題には事欠かない存在なのが、ご存じ日産自動車だ。
もっとも、かくもメディアをにぎわせてくれる一方で、特に“母国”においてはここしばらく肝心の新作の話題がさっぱり聞こえてこなかったのが何とも残念。
そうした沈滞ムードを払拭(ふっしょく)する起爆剤になってくれたら……と、期待したくなるのが、日産自らが「自身で開発を行った初の軽自動車」と紹介する新型デイズシリーズである。
三菱自動車とのジョイントベンチャーで誕生したNMKV(Nissan Mitsubishi Kei Vehicle)がマネジメントを行い、三菱ブランドで販売される「eK」シリーズとともに岡山県にある三菱の水島製作所で生産が行われるというのは、2013年に発売された初代モデルの場合と同様。
一方で、従来型では開発の主体が三菱サイドにあったのに対し、新型ではそれが日産側に移ったことが大きな相違点。端的に言ってしまえば、日産の血がこれまでになく色濃く流れているのが、今度のデイズシリーズというわけだ。
三菱デザインとの差異化は見事
かくして、同一のラインで生産されるeKシリーズと基本的なパッケージングやランニングコンポーネンツを共有しながらも、見事な手腕を感じさせられるのがデザイン面でのすみ分けだ。
とはいえ、さすがにインテリア部分は“うり二つ”。両ブランドの違いが実感できるのは、いずれも中心部分に大きなブランドマークが配された、ステアリングホイールのセンターパッドくらいなものだ。
一方で、全く異なった表情を見せているのが、そのフロントマスクである。標準仕様に加えて、いわゆる“カスタム仕様”と呼ばれる、より個性に富んだ若者向けモデルを設定するのは、昨今の軽自動車では常とう手段。そこで、既存の自社SUVラインナップとの関連性を狙ってか、ことさらの押し出し感の強さが演じられた三菱版カスタム仕様である「eKクロス」に比べると、グンと控えめでかつ上品に映るのが、日産版カスタム仕様のデイズ ハイウェイスターの顔つきなのだ。
もちろんそうした見た目に関しては、目にする人それぞれの好みの感覚が大きいのは承知しているが、「賛否両論真っ二つ」が明確なeKクロスに比べると、デイズ ハイウェイスターのほうがカスタマーにとっての“間口”が広いことは、容易に想像できる。実際、正直なところeKクロスには大きな抵抗感を抱いた自身にとっても、デイズ ハイウェイスターのルックスであれば問題ナシ!
ということで、今回のお題はそんなデイズ ハイウェイスターのFFトップモデルに日産自慢の運転アシスト機能を加えた、Gターボ プロパイロットエディションである。
リッターカーをしのぐ質感
ダークブラウンのボディーに、パールホワイトのルーフやドアミラーを組み合わせる“特別塗装色”をまとった今回のテスト車は、「SOSコール」やヒーター付きのフロントシート(寒冷地仕様車に含まれる装備)といったメーカーオプション、ナビゲーションシステムや白色LEDフォグライトなどのディーラーオプションなど、総額48万円を超えるアイテムをプラスした豪華バージョン。
あまりに強く自己主張を行う派手なイエローのナンバープレートが何ともそぐわないものの、そのたたずまいはビックリするほどに上質で、「これでは『マーチ』なんかは、とても太刀打ちできないな……」と、余計な心配もしたくなるほどだ。
もっとも、その分お値段もそれなりで、前出オプション類を加えた今回のテスト車の総額は軽く200万円をオーバー! ひと昔前の相場ではとても“商品”足りえなかったそんな高額なモデルが、抵抗なく買われていくという現状は、軽自動車の商品力が向上したと同時に、5ナンバーサイズのモデルがほとんど消滅してしまうなど、「昨今の小型車が大きくなり過ぎた」というユーザーの陰の声を反映したひとつの結果でもあるように思う。
ちなみに、パッと見で抱いた好印象はキャビンへと乗り込んでからも続き、ダッシュボードやドアトリムの仕上がり具合などは、「こうしたレベルには遠く及ばない“リッターカー”など、日本製・海外製を問わずにいくらでも見つかる」というほどの上質感。タップリした厚みで成型されたサンバイザーなども、これまでの多くの軽自動車の常識を離れ、触れても全く“ペナペナ”感がないほどだ。
いやいや、これはもう“余計な心配”などではなく、完全なる“リッターカーキラー”そのものである。日産は、もはや放置状態にあるマーチや「キューブ」などを、今後どうしていくつもりなのだろう。
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期待と想像以上の走り
さらに、走り始めた後もそんな“軽自動車離れ”した優れた印象は、まだまだ続いていく。
最初に感心させられるのは静粛性の高さだ。そこはさすがに「軽自動車としては」という前置きが必要であるものの、ロードノイズの小ささも含めて「期待と想像以上」と受け取れた。
実は、同じデイズであっても、自然吸気モデルではこうはいかない。こちらの場合、エンジン出力の余裕のなさから4000rpm付近までを常用することになり、それなりににぎやかな印象が強い。
一方、今回のターボ付きモデルの場合には、相当急ぎ気味にスタートしたときに、4000rpm程度までを瞬間的に使うという感覚。当然、常用域でのエンジン回転数はそれをかなり下回る範囲にとどまることになり、特に高速道路を走ったり3人以上で乗車したりというような場面では、エンジンの違いによる差は大きい。
ちなみに、新型デイズシリーズに搭載されるエンジンは、1リッターまでの排気量をカバーするというルノー・日産グループのユニットがベース。それゆえ、0.66リッターで用いるにあたっては基本設計にゆとりがあることも、振動・騒音面で有利と考えられる一因だ。
加えれば、日産が「スマートシンプルハイブリッド」と称するスタータージェネレーターを組み合わせていることで、アイドリングストップ時からの再始動が極めて静かに行われるのも特筆もの。このあたりをとっても、やはり「軽自動車離れをしたぜいたくな設計が取り入れられている」と言えそうなのが、今度のデイズである。
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UIは改良の余地アリ
さらに、フットワークの仕上がりに関しても、なかなか感心させられた。
さすがに、全幅よりも全高の方がはるかに大きいパッケージングゆえのロール感の大きさや、わだちを横切る際の揺すられ感の大きさなど、固有のディメンションから来る避けられない挙動も、皆無とはいえない。
一方で、こうしたディメンションを持つ同類モデルの中にあっては「なかなか走りがしっかりしているな」という印象を抱いたのも、また間違いのない事実である。
そもそも、高速道路上でちょくちょく追い越し車線へと出る気にはなりづらい軽自動車であるという点を踏まえると、同一車線上でのステアリング支援機能付きアダプティブクルーズコントロール、すなわち「プロパイロット」も、十分に実用装備といえる出来栄えだ。
ただし、このデバイスの仕上がりで最も気になったのは、いったん停止した後の再発進時における加速力があまりにも弱く、多くの場合、前車への追従ができずにアクセルの踏み増しが必要だという点。どうやら、運転に慣れないユーザーも少なくない軽自動車に搭載することから、そうしたシーンでの加速力はあえて“控えめ”に設定したもようだが、そんな配慮を施すならば、現在はスイッチが小さく手順も分かりにくい操作系を、まずはより簡潔で、直感的に扱えるデザインへと改めることの方が先決であろう。
いずれにしても、日産としては久々の新作となり、初めて手がけた軽自動車でもあるデイズシリーズが、「渾身(こんしん)の力を込めた作品」であることは十分に感じとれた。
願わくば、プロパイロットを筆頭とした先進のADASをこうした普及モデルにまで入れ込んだのと同様の開発に対する気概を、今度はぜひとも“国内専用”にとどまらないモデルでも示すことで、(ワイドショー的な話題ではなく)あらためて製品面から“NISSAN”の存在感を世界に発信してもらいたいものだ。
(文=河村康彦/写真=荒川正幸/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
日産デイズ ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1640mm
ホイールベース:2495mm
車重:880kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:64ps(47kW)/5600rpm
エンジン最大トルク:100Nm(10.2kgm)/2400-4000rpm
モーター最高出力:2.7ps(2.0kW)/1200rpm
モーター最大トルク:40Nm(4.1kgm)/100rpm
タイヤ:(前)165/55R15 75V/(後)165/55R15 75V(ダンロップ・エナセーブEC300+)
燃費:19.2km/リッター(WLTCモード)/25.2km/リッター(JC08モード)
価格:164万7000円/テスト車=213万1083円
オプション装備:特別塗装色<アッシュブラウン&フローズンバニラパール 2トーン>(6万4800円)/寒冷地仕様<前席ヒーター付きシート+ヒーター付きドアミラー+リアヒーターダクト+PTC素子ヒーター+高濃度不凍液>(2万4840円)/SOSコール(3万2400円) ※以下、販売店オプション LEDフォグ白色発光<インテリジェントアラウンドビューモニター付き車用>(4万7952円)/ナビレコパック+ETC 2.0+USBソケット(27万1593円)/ウィンドウはっ水12カ月<フロントウィンドウ1面+フロントドアガラス2面はっ水処理>(1万0098円)/シートアンダードロー(1万2528円)/フロアカーペット<エクセレント、ブラック、消臭機能付き>寒冷地仕様車用(1万9872円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:1756km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:353.2km
使用燃料:25.1リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:14.1km/リッター(満タン法)/17.0km/リッター(車載燃費計計測値)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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