第578回:キーワードは“コンパティビリティー”
軽自動車の安全性を高めるホンダの取り組み

2019.07.19 エディターから一言
「ホンダN-BOX」(右)と「インサイト」(左)による衝突実験の様子。
「ホンダN-BOX」(右)と「インサイト」(左)による衝突実験の様子。拡大

軽くてコンパクトな軽自動車でも、登録車(軽自動車以外の車両)と変わらぬ安全性を確保したい。相手と自分の被害を同時に低減する“コンパティビリティー”という考え方のもと、ホンダが長年にわたり取り組んできた衝突安全技術の開発を、衝突実験の現場からリポートする。

衝突実験の取材会は、栃木県の本田技術研究所オートモービルセンターに設けられた、屋内型全方位衝突実験施設で行われた。この施設では今回のような正面衝突に加え、さまざまな角度での、斜め方向からの衝突実験も行える。
衝突実験の取材会は、栃木県の本田技術研究所オートモービルセンターに設けられた、屋内型全方位衝突実験施設で行われた。この施設では今回のような正面衝突に加え、さまざまな角度での、斜め方向からの衝突実験も行える。拡大
エアバッグが開いた車内の様子。「ホンダN-BOX」では、標準車の「G/L Honda SENSING」と一部の福祉車両を除き、前席用サイドエアバッグと前・後席用サイドカーテンエアバッグが標準装備される。
エアバッグが開いた車内の様子。「ホンダN-BOX」では、標準車の「G/L Honda SENSING」と一部の福祉車両を除き、前席用サイドエアバッグと前・後席用サイドカーテンエアバッグが標準装備される。拡大
衝突したフロント右側が大きく変形した「N-BOX」。こうしてフロントセクションで衝撃を吸収することで、乗員の生存スペースを確保するのだ。
衝突したフロント右側が大きく変形した「N-BOX」。こうしてフロントセクションで衝撃を吸収することで、乗員の生存スペースを確保するのだ。拡大
実験場のフロアには「Safety for Everyone」と書かれていた。
実験場のフロアには「Safety for Everyone」と書かれていた。拡大

物理の法則には逆らえない

「最近の軽自動車って広いし、乗り心地も良くなっているよ」と筆者が妻に説明すると決まって返ってくる返事はこうだ。「でも、軽自動車って危ないんでしょ。前に知り合いのおじいちゃんが、軽自動車で事故を起こして大けがしていたもの――」

現在でも、軽自動車は登録車に比べて危ないのではないかという疑問を持つ読者は多いかもしれない。そしてその懸念はある意味事実といえる。それは物理的な法則から明らかだ。

話を単純にするために、同じ1kgの金属製の球を左右から転がしてぶつけたとしよう。この場合、2つの球はぶつかった場所で停止する。しかし、片方の球がもう片方の球の半分の重さだったらどうなるか。右から1kgの球を、左から500gの球を、それぞれ同じ6km/hの速度で転がしてぶつけた場合、運動量保存の法則により、どちらの球も衝突後、同じ左の方向に同じ2km/hで転がり始める。

この衝突は、1kgの球から見ると6km/hから2km/hへと4km/h減速したことになり、衝突したときに受ける衝撃は4km/hで固い壁に衝突させたときと同じだ。一方、500gの球から見ると、右方向に6km/hで転がっていたのが反対の左方向に2km/hで転がり始めるのだから、変化した時速は8km/hであり、衝突で受ける衝撃は8km/hで固い壁に衝突したときと同じとなる。このように、重さが2倍違う物体が衝突したときに生じる衝撃は、軽い方が重い方の2倍に、重さが3倍違う物体が衝突したら、軽い方が受ける衝撃は3倍になる。

これは、車両重量が800kgの軽自動車と、1.6tの乗用車が衝突したら受ける衝撃は軽自動車のほうが乗用車の2倍になることを意味する。この物理的な事実が「軽自動車は危ない」ということの根拠になる。

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