第150回:1割減れば渋滞は半減!
2019.11.12 カーマニア人間国宝への道交通流図で読み解く“渋滞”
カーマニアの皆さまなら、渋滞の多くが、いわゆる“サグ“を先頭に発生していることをご存じでしょう。
サグとは、下り坂から上り坂にさしかかる凹部のこと。ここでは勾配の変化に気づかずに速度が低下してしまうクルマが必ずあり、おっとっととなった後続車がブレーキを踏んで減速波が発生、ついには渋滞に成長してしまうというメカニズムだ。世の中の多くの自然渋滞は、サグを先頭に発生しています。(NEXCO東日本管内の場合、交通集中渋滞の66%)。
同じようなサグ効果を発揮する場所としては、トンネルやカーブがある。どちらも無意識に速度が落ちてしまうポイントです。
ところで、首都高湾岸線の東京港トンネルなのですが、これは海底トンネルなので、トンネル内は当然、下り坂から上り坂になっている。ズバリ、サグです!
しかも人間は、暗くて狭いところに入る際、無意識のうちにアクセルを戻してしまう。つまりダブルのサグ効果を持っているので、長年、湾岸線最大の渋滞ポイントの座に君臨しております。
東京港トンネルの場合、実はこれだけではありません。トンネルの手前に合流があるのです!
東行きの場合、まず大井JCTからの合流がある。首都高の交通量を区間ごとに書き入れた「交通流図」を見ると、本線(5万3290台/日)に、8040台/日が合流している。
そのすぐ先には、大井入口からの合流(6930台/日)もある。
ただでさえサグ効果を発揮する東京港トンネルは、その手前で、減速波を発生させる合流がダブルで襲い掛かってくるのです!
反対側の西行きもほぼ同じ。まず有明JCTからの合流(9700台/日)があり、続いて臨海副都心入口からの合流(5220台/日)がある。これじゃ渋滞しないほうがおかしいだろ!!
ただ、西行きの渋滞は、現在かなり緩和されている。理由は、首都高湾岸線に並行して、国道357号線のトンネルが開通したからです。
西行きの国道海底トンネルが開通したのは、約3年前の2016年3月。以来、こっちを約1万台/日のクルマが走るようになりました。
それで首都高湾岸線の交通量が1万台/日減ったわけじゃなく、どちらかというと、同じ一般道の臨海トンネルや東京ゲートブリッジの交通量が減ったんだけど、とにもかくにも首都高にもいい影響が及んだ。
そして2019年6月3日、同じく国道357号東京港トンネルの、今度は東行きがめでたく開通となりました!
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画期的な渋滞緩和策
同じ国道で、片方向だけ3年も先行開通させるという事例は極めて珍しい。いったいナゼ?
理由は、両方同時に着工するだけの予算がつけられなかったことに加えて、「建設ヤードが狭いため」(国土交通省関東地方整備局)でした。
ちなみに、首都高の東京港トンネルは、あらかじめ造っておいた沈埋函(ちんまいかん)を海底に沈める沈埋トンネルだったけど、国道のほうは、海底のごく浅いところ(わずか7m!)を掘り抜いたシールドトンネルです。首都高のほうはトンネル断面が長方形だけど、国道のほうは丸いので、走ればその違いがわかるはずであります。
これで国道側の海底トンネルも両方向完成したんだから、もう首都高湾岸線東行きも渋滞しないだろ! と思ったら、そうはなっていない。やっぱりトンネル手前で合流が2発も連続するのは痛いし、東行きは手前が大きなカーブになっているし。
で、対策はあるのかというと、実は私、以前からある提案をしておるのです。
それは、大井インターと臨海副都心インターの出口と入口を、現在の反対向きにすること。つまり、出口は首都高東京港トンネルの手前側に置き、入口はトンネルの後側に置く形に付け替えるというものであります。さすれば、首都高東京港トンネルの渋滞は大幅に緩和されるはずなのです。
出口がトンネルの手前にあれば、トンネルに入る前に交通量が減るので、その分だけトンネルを先頭にした渋滞は緩和されるという、実に単純な理屈です。
いや、そんなことをしたら、今度は国道357号線の東京港トンネルが渋滞するんじゃないかと懸念する方もいるでしょうが、大丈夫です。なぜなら、国道トンネルの交通量にはぜんぜん余裕があるので。
交通流図を見ると、首都高湾岸線東京港トンネルの交通量は、東行き・西行きともに約7万台/日。対する国道トンネル(西行き)は約1万台/日と、圧倒的に少ない。車線数は首都高が片側3、国道が同2なので、国道は明らかに容量が余っている。
開通したばかりの東行きも、先日軽くカウントしてみたところ、首都高側が5分間で260台だったのに対して、国道側は同じく5分間で58台と、はるかに少なかったであります!
マニアックな交通流図の世界
しかし、残念ながらこの提案が実現する見込みはない。なぜなら、国道トンネルの開通に合わせて、インターもしっかりお金をかけて造り直してしまいまして、いまさら逆向きに付け替えるなんざ、到底ありえない状況になっているからです!
私、首都高研究家として、これまでいろいろと渋滞緩和に関する提案をしております。小菅-堀切間および板橋-熊野町間の拡幅のように、実現したものもいくつかございます(涙)。この東京港トンネルの渋滞緩和策は、かなり容易に実現可能かつ効果の見込める提案なので、なんとかならないものかなぁと思っておったのですが……。
なにせ、トンネル部の交通量が黙って1割近く減る計算なので。交通量が1割減れば渋滞は半減、2割減れば解消するというのが首都高の法則です。
こうなったら、東京港トンネルを先頭にした湾岸線の渋滞が激しい時は、大井入口や臨海副都心入口を早々に閉鎖するようにしていただきたい! ここを閉鎖しても、国道トンネルをくぐれば、次の入口から首都高に入れますから。
とまあこのように、交通流図を眺めながら、マニアックな妄想に浸っているカーマニアなのでした。皆さんも一度眺めてみませんか?
(文と写真=清水草一/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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