デビューがいよいよ秒読みに! 軽クロスオーバーの新型「スズキ・ハスラー」を妄想する
2019.12.16 デイリーコラム“軽クロスオーバー”のパイオニア
東京モーターショー2019でコンセプトモデルがお披露目された、新型「スズキ・ハスラー」。市販モデルのデビューももう間もなくのようで、この12月10日には、スズキのオフィシャルサイトにいよいよ事前告知のページが開設された。
思い起こせば、現行型のハスラーがデビューしたのは2013年12月24日。あのときも、やはり東京モーターショーで実車が先行公開された。発売は年が明けた2014年1月8日で、この年は“大台”を超える10万4233台を販売。軽クロスオーバーという、ニッチだけど楽しそうなジャンルを開拓してみせたのだ。あれから6年、モデル末期となった今年(2019年)も、現行ハスラーは毎月4000~5000台がコンスタントに売れている。このクルマが、「スペーシア」「ワゴンR」に次ぐスズキの基幹車種となったことは間違いないだろう。
そのハスラーが、ついにモデルチェンジ。カラフルなティザーサイトで、アイドルによる東京モーターショーの展示車紹介動画を眺めていたら、会場で見たコンセプトモデルのことが思い出されてきた。
丸目2灯のヘッドランプに、大きなアプローチ&デパーチャーアングルをかせぐ前後のバンパー形状、そしてボディー下部をぐるりと一周するクラッディングパネル。商品コンセプトは基本的に現行型と同じだが、実車を見ての印象は、それとは全然違うものだった。
特に横から見たスタイリングは、現行型がガラスエリアを薄く見せるチョップドルーフ的デザインと、ブラックアウトされたA、Bピラーでスポーティー感を演出していたのに対し、今回のコンセプトモデル……ややっこしいので、ここからはもう「新型ハスラー」って言っちゃいますが……は、すべてのピラーをしっかり見せるとともに、現行型にはなかったリアクオーターウィンドウを配し、クロカンっぽい力強さとスクエアなキャビンの広さを強調したデザインとなっていた。
急速に進化するライバルと戦えるのか?
そもそも、クルマのカタチ自体が新型と現行型では結構違う。配布された資料によると、新型ハスラーのボディーサイズは全長×全幅×全高=3395×1475×1680mm。現行型より全高が15mm高くなっているし、見た感じだとAピラーも立ち気味だ。見た目だけでなく、実際にキャビンの広さも増しているのだろう。それは2460mmという現行比+35mmのホイールベースからも明らかだ。
ちなみにこのホイールベースは、現行世代のFFプラットフォーム「ハーテクト」を採用するワゴンRやスペーシアなどと共通の値だ。新型ハスラーの車内寸法については一切明らかにされていないが、ワゴンRは現行型へのモデルチェンジで、前後席間距離が35mm拡大している。新型ハスラーも、おそらく同程度には居住性の改善が図られているのだろう。
というわけで、新型ハスラーの車両骨格については、勝手に「ハーテクト採用!」と決めつけている記者だが、いや、それは間違いないでしょう。だって新しいプラットフォームの導入にはまだ早いし、このクルマのためだけに旧来のシャシーを、あるいはまったく違うシャシーを用意するなんてムダの極みだ。間違っていたら髪型を坊主にしてもいいくらいである。
問題はむしろ、既存のハーテクト採用車からの進化の度合いだ。このプラットフォームは2014年12月発売の現行型「アルト」から導入が始まったもので(実際にハーテクトという名前で呼ばれるようになったのは、2016年末に現行「スイフト」が発表されてからだが)、その圧倒的な“軽さ”やパッケージ効率の高さで、高評価を得てきた。
ただ、この分野についてはライバルの進化も著しい。ホンダは現行「N-BOX」を皮切りに「第2世代Nシリーズ」ともいうべきモデルを投入し始めたし、日産・三菱勢も現行「デイズ/eK」シリーズで車体設計を刷新。ダイハツも現行「タント」で、いよいよDNGA世代の新しいプラットフォームを実用化した。こうした中にあって、最新のスズキ車はどれほどの出来栄えとなっているのか。新型ハスラーの動的質感や快適性は、そうした観点からも非常に気になるところなのだ。
スズキもいよいよ軽にACCを採用
「ライバルに対する進化の度合い」という意味では、運転支援システムや予防安全装備のそれも気になるところだろう。これまた配布資料によると、衝突被害軽減ブレーキ「デュアルカメラブレーキサポート」が夜間の歩行者も検知するようになったほか、前進時だけでなく後進時のブレーキサポートも採用。そしてターボ車には、全車速対応型のアダプティブクルーズコントロール(ACC)やレーンキープアシストも搭載されるという。このあたりについては、おおむね他社の最新モデルをキャッチアップする内容となりそうだ。
特にトピックといえるのが、スズキの軽としては初となるACCの設定だろう。ACCについては、ホンダがN-BOXで広範なラインナップに標準で採用。2019年8月発売の「N-WGN」にもACCを搭載している。他のライバルもこれに追従し、日産・三菱は現行デイズ/eKシリーズで、ダイハツは現行タントでACCを採用したが、スズキだけはこれを見送ってきた。
今回、スズキがハスラーへのACC採用を明らかにしたことで、軽乗用車を手がけるすべてのメーカーが、現行モデルへのACCの導入に踏み切ったことになる。もちろん、こうした装備の採用はコストアップに直結するので、各メーカーの態度には濃淡がある。ホンダは“全車標準装備”(ただしエントリーグレードではレスオプションが可能)と前のめりなのに対し、ダイハツ、日産・三菱は上級グレードのみの設定という具合だ。「ターボ車には」というただし書きからもわかる通り、スズキもまずは「上級グレードのみに設定」というスタンスなのだろう。
もうひとつ気になるのがACCそのものの機能性。ひとことでACCといってもその中身はまちまちで、大まかに分けると、車速が一定速度以下になると機能が切れてしまうものと、完全停車まで機能が持続する全車速対応型がある。さらに後者は、停車時にブレーキを保持してくれるものと、数秒でブレーキが切れてしまう(停車中にドライバーがブレーキを踏む必要がある)ものに分かれ、また、これらとは別に操舵支援型レーンキープアシストの有無といった違いもある。おのおのの機能の出来栄えまで含めると、その中身は千差万別なのだ。
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スズキに元気がないと面白くない!
あんまり風呂敷を広げてしまうと収拾がつかなくなるので、機能の充実度に話を絞ると、現状だと全車速対応・停車時ホールド機能付き・レーンキープアシスト付きのホンダN-WGNと日産デイズ/三菱eKシリーズが最も充実しており、次いでダイハツ・タント(全車速対応・レーンキープアシスト付き)、ホンダN-BOX(レーンキープアシスト付き)といった感じだ。事前資料の文言を見るに、新型ハスラーのそれは「タントと同等か、それ以上」といったポジションに来そうな気配だが、詳細は市販車が正式発表されてみないとわからないだろう。あぁ待ち遠しい。
このほかにも、東京モーターショーで取材した新型ハスラーには、気になるポイントが満載だった。ダッシュボードのインフォテインメントシステムはこれまでに見たことのないデザインだったし、現行型の自慢のひとつだった、充実した悪路走行支援機能がどうなっているのかもぜひ知りたい。
商品ラインナップも同様で、特に“ゲタ車オタク”の記者としては、MT仕様がどうなるのかが非常に気になった。現行型だと、下位2グレードには用意されているのだが……。
そして何より価格、お値段! 軽メーカーの中でも、ダイハツと並んで“庶民の味方”を自負するスズキである。自動車の高価格化が軽まで波及して久しい今日だが、ここはぜひ頑張ってほしいところだ。
思い起こせば、スズキが軽の完全ニューモデルを上市するのは、2018年7月の「ジムニー」のモデルチェンジ以来のこと。FFシャシーの量販車種でくくると、現行スペーシアの登場以来、実に2年ぶりのことなのだ。そうした話題の少なさもあって、最近は守勢にまわっているイメージが強かったスズキだけに、今回の新型ハスラー投入をぜひ反撃ののろしにしてほしい。スズキが頑張ってくれないと、やっぱり軽は面白くないんだよ。
(webCGほった)
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堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。