第653回:氷上性能に自信あり ブリヂストンの新型スタッドレスタイヤ「ブリザックVRX3」を試す
2021.07.15 エディターから一言 拡大 |
ブリヂストンは2021年7月15日、新型スタッドレスタイヤ「ブリザックVRX3」を同年9月に発売すると発表した。「歴代最高・断トツの氷上性能」をうたうVRX3の第一印象を、横浜の屋内スケートリンクで行われたプリプロダクションモデルの試走会からリポートする。
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3つの性能にフォーカス
ブリヂストンの独自技術“発泡ゴム”を採用するスタッドレスタイヤ、ブリザック。発泡ゴムは、ゴム内部に細かな気泡を封じ込め、あたかもスポンジのような優れた吸水性で滑りの原因となるタイヤと氷上間の“ミクロの水膜”を吸収。さらに、通常は特殊なオイルの混入で行う柔軟性の確保もその細かな気泡が担うため、オイル抜けに伴う硬化が発生せず、結果として経年劣化が遅い──という特性がメリットとうたわれている。
1988年に初代モデルが誕生したその歴史に、今回また新たな1ページが加えられることになった。2021年9月に発売される最新タイヤ、VRX3の登場である。
商品コンセプトとして掲げられるキャッチフレーズは、“新次元のプレミアムブリザック”というもの。思い起こせば今から4年前、2017年に「VRX2」が登場した際にうたわれていたのが「氷雪路では断トツの性能を発揮し、舗装路上ではしっかり走れる“プレミアムブリザック”」という一節。ネーミングからしても前出のキャッチフレーズからしても、このVRX2の後任であることは明らかだ。
これまでも、特に氷上性能に関しては数あるスタッドレスタイヤのなかにあって、「トップランナー」と称されることの多かったVRX2。それをベースに、「これまで蓄積してきた技術と発泡ゴムの進化により、高い総合性能はそのままに、アイス性能・長持ち・耐摩耗性の3点にフォーカスして性能向上を目指した」のがVRX3というわけである。
ゴムそのものの経年硬化を抑制
冒頭に紹介した、これまで円形だった発泡ゴムの気泡の断面形状を、新たに楕円(だえん)形とすることに成功。毛細管現象を用いることで円形断面の気泡よりも吸水量を増やし、同時に「ミクロの接地面積を拡大させた」と説明されるのが、VRX3に採用された“新発泡ゴム”である。つまり、気泡の断面をこれまでの円形から縦長としたことで吸水容量がアップし、これがそのまま氷上グリップの向上につながったということだ。
VRX2に対してトレッドパターンも変更されたが、これは氷上性能アップのため接地面内に水膜が入ることを抑制するためと、パターン剛性を向上させてタイヤと路面の間の無駄な滑りをコントロールし摩耗ライフを向上させるという2つが目的。
“突起付きブロック”や“端止めサイプ”の新採用で除水能力を進化させたのが前者で、ブロック形状や向きに応じたサイプ角度の変更、ブロックの形状やサイズの均等化による接地圧の均一化を図ったのが後者。ちなみに、実際の接地幅はやや広がり、シーランド比もランド(接地)部分の比率がやや増すデザインになっている。
先に説明したように、オイルではなく気泡によって柔軟さが確保されるブリザックだが、それでも従来製品では、ゴムそのものが徐々に硬化することは避けられなかった。そこを「オイルより分子量の高い新素材“ロングステイブルポリマー”を配合することで経年硬化を抑制、柔らかさを維持した」(設計担当)というのが、VRX3の“新発泡ゴム”に採用された新技術である。
そうした新機軸を盛り込んで開発されたVRX3を試す機会は、疫病禍の影響もあり大きな制約を受けることになった。プリプロダクションモデルを用いた初試走は、横浜市内の屋内スケートリンクにおいて、ごく簡単な氷上フィーリングチェックに限られたからである。
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違いが感じられた新旧比較試乗
今回、試走会場となったスケートリンクで実際に体験できた“最高速”は、わずかに20km/hそこそこ。しかし、氷上性能の向上はVRX3が特に自慢とするところでもあり、VRX2との比較体験でその差は思いのほか明確に感じられた。
まずは発進時にトラクションコントロールが介入するまでと、ブレーキング時にABSが介入するまでの前後方向のグリップ感が、確かに異なっていた。極端に大きな差ではない一方、それは誤差などではなく明らかなグリップ力の差が発生している印象である。
パイロンで仕切られた直径9mのサークルに沿って定常円を描くシーンでも同様。こちらも外へとはらみ始める限界と、アクセルを抜いてフロントタイヤがグリップを取り戻そうとするタイミングは、ともに「VRX3のほうが上」と実感させられることになったのだ。
一方、“究極の平滑路面”であるリンク上では、VRX3が発するパターンノイズのボリュームが、VRX2よりもわずかながらも大きく思えたことも付け加えたい。とはいえ、それも舗装路上でどうなのかは「何とも言えない」という状況。何しろ体験できたのは氷上の、それもごく限られたシーンのみであったからだ。
ところで、今回試走を行った場所では「室温11℃/氷温-2.4℃」と表示されていたが、実はこうしたリンクの設定温度は施設によりさまざまで、さらに氷自体にも解氷防止の“混ぜ物”が入っている場合もあるという。
かくしてブリヂストンでは、そんな種々雑多な氷の特性を知るという意味もあり、日本全国のスケートリンクを開発の舞台に加えていると教えられて驚いた。
前述の状況もあり、正直なところその実力はまだまだ未知数の部分も少なくない。が、従来型となるVRX2の高い仕上がりぶりから考えれば、当然“断トツ”のパフォーマンスが期待できるVRX3である。
(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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