ランボルギーニ・ウラカンSTO(MR/7AT)
究極の官能マシン 2021.10.15 試乗記 超戦闘的な見た目の通り、並々ならぬ動力性能を誇る「ランボルギーニ・ウラカンSTO」。とびきり速いのは当然のことながら、サーキットでむちを当てた筆者は、その官能的な走りに大いに感銘を受けたのだった。モータースポーツ由来の威容
「STO=スーパートロフェオ・オモロガータ」。
欧米、そしてアジアを転戦するランボルギーニのワンメイクレースシリーズ、スーパートロフェオ。STOはその参戦用車両の公道走行が認可されたバージョンという意になるだろうか。
ランボルギーニのカスタマーレーシング部門であるスクアドラ・コルセはこのスーパートロフェオの技術監修や参戦サポートのほか、GT3カテゴリー向け車両の開発も手がけるなど、当然ながらウラカンを知り尽くしている。その知見を注ぎ込んだロードゴーイングレーサーとして企画されたのがウラカンSTOだ。ベースモデルともいえる「ウラカンEVO」シリーズと併売されるカタログモデルという位置づけだが、現時点で2021年分は既に完売。2022年分の予約枠が若干数という状況だという。
ウラカンSTOの最大の特徴となるのは、レースフィールドからのフィードバックとなる卓越したエアロダイナミクスだ。スクアドラ・コルセとダラーラの共同開発からなるスーパートロフェオ車両の空力パッケージが正確に反映されたそれは、ベースモデルと形状的に共通するアウターがルーフとドアのパネルくらいなもので、隅々まで専用のディテールが貫かれる。
ボディーパネルの75%以上はカーボン材を使用。フロントセクションはボンネットからフェンダーまでが一体成型されており、前ヒンジでガバッと開くその姿は往年のミウラを思い起こさせる。特徴的なボンネット上のアウトレットはラジエーターの排熱と風抜きに大きな効果を発揮するが、トランクルームをダクトが這(は)うかたちとなり、コンセプトに沿うように言うならメットインスペース程度に限られる。
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ダイエットも極限レベル
特徴的という点からみれば、リアセクションも負けてはいない。側面の風さばきを意識した形状に変更されたフェンダーはサンドイッチ構造のカーボンパネルで成形され、バンパーらしきパーツは、リアタイヤのトレッドが拝めるほどの大開口に加え、ディフューザー面積を最大化するようにデザインされている。
そして羽根物の迫力も相当なものだ。スワンネックタイプのステーに支えられるリアウイングはセンター部が3段階で可変し、最も仰角の強い状態では280km/h時に420kgのダウンフォースを発生する。そして中央に渡されたシャークフィンは旋回時のスタビリティーを高めるのに有効だという。ちなみにリアフードは脱着式なので、出先で開閉するというならば場所に配慮する必要がありそうだ。
そのほかにウインドスクリーンを薄板化、ホイールをマグネシウム化するなどの軽量化が施されており、乾燥重量は前期型の最軽量モデルだった「ペルフォルマンテ」に対してさらに43kg軽い1339kgとなっている。
エンジンスペックはベースモデルたるウラカンEVOシリーズの4WDモデルとRWDモデルの間というイメージだ。5.2リッターの自然吸気V10は640PSを8000rpmで、最大トルクは565N・mを6500rpmで発生する。レッドゾーンは8500rpmと、こちらもベースモデルに同じ。エンジン本体のハードウエアに変更はなく、この辺は吸排気環境の変更による微差とみていいだろう。トランスミッションは7段DCTを継承し、0-100km/hが3秒フラット、最高速は310km/hをマークする。
あのペルフォルマンテを超えている
ドライブモードセレクター「ANIMA」はその制御が全面的に見直され、パフォーマンスをオールマイティーなかたちで引き出す「STO」、完全にサーキットドライブにフォーカスした「TROFEO」、ウエットコンディションを意識した「PIOGGIA」の3つをステアリングスイッチから選択できる。そのモード設定に連動して、フィードフォワードで駆動を統合制御する「LDVI(ランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ・インテグラータ)」は最適化され、さらに任意でESCをオフにすればエキスパートのコースアタックなどに適した最速モードへと移行する。ちなみにこの制御パラメータには、タイヤ温度だけでなく新たにブレーキ温度も加えられている。
そのブレーキシステムはブレンボのCCM-Rを採用。従来のCCBに対して、ストレス耐性で60%、最大制動力が25%、減速性能は7%の向上をみているという。また、タイヤはブリヂストンの「ポテンザ スポーツ」を採用。筆者の記憶が確かなら、ランボルギーニがブリヂストンを認証採用するのは「ディアブロ」の世代に「エクスペディア」が採用されて以来のことではないだろうか。
試乗が行われたのは富士スピードウェイのレーシングコース。その規格外的なパフォーマンスをみるにはふさわしい場所だ。インラップでコースを確認しながら最終コーナーを抜けて、まず全開にしてみると姿勢がペタッと張り付くように安定していて、スタビリティーもきっちりと確保されていることに感心させられる。とりもなおさず全面的に改められたエアロダイナミクスの効果はあらたかで、4WDのペルフォルマンテでサーキットを走った印象を引き合いに出しても、200km/h超からの安心感は一枚上手ではないかと思わせるほどだ。
試乗車はグリップを最大限に引き出すべく、リアウイングの仰角は最も立てられた状態でセットされていた。が、それでも230km/hより向こうの速度の乗り方に鈍りはない。大きなボンネットダクトによって前方からの風抜けが良くなったことも奏功しているのか、抵抗感もなくスルスルと数字は伸びてゆき、ホームストレートのパナソニックゲートを抜けるあたりで289km/hをマークした。1コーナーへのブレーキングの目安となる250m看板よりも手前から、マージンをとって減速を開始してそのくらいだから、プロドライバーが最終コーナーから速度を乗せていけば、ブレーキングポイントでは車両側の最高速にほぼ並ぶ300km/hの大台に達していてもまったく不思議はない。
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マニアにとっての逸品
単に速いだけでなく、伸びやかにあでやかに速い。そんな印象に華を添えるのは、むせび泣くような高音とは言わずとも、独特のトーンで官能的な雄たけびを聞かせる自然吸気のV10サウンドだ。パワーフィールも典型的な自然吸気の高回転ユニットのそれで、5000rpmから向こうで二次曲線的にパワーを高めていき、8500rpmのレッドゾーンに至るまでまったくよどみがない。低回転トルクの薄さや中域加速の厚みといったノンターボの不利を補って余りある気持ちよさが、クルマ好きの心をわしづかみにする。
100Rや300Rでの走りの安定感からすれば、ダンロップコーナーからパナソニックコーナーの後半セクションでは、目が覚めるほどシャープに立ち上がる操舵ゲインやヒラヒラと切り返す身のこなしに面食らいそうになるが、それでもリアは執拗(しつよう)にグリップを続け、そのグリップを簡単に失うことはない。この粘り強さは優れた空力特性に加えて、LDVIの働きも大きいのだろう。
ただしそこは640PSのパワーだから、アクセルペダルの扱いひとつでタイヤは路面から簡単に引き剝がされる。その際(きわ)を見誤ってしまっても、任意でESCをカットしない限りは、TROFEOモードでもすんでのところでボディーコントロールが働いてはくれる。ただし相応のアングルは許容していることは頭に入れておくべきだろう。装着タイヤはインターバルを置きながらの少なくとも20周程度の走行では熱ダレやブロック劣化などによるドライバビリティーの変化はなく、安心感の高い特性が垣間見えた。
一般道での乗り心地等は推し量ることもできなかったが、その見た目からしても、ウラカンSTOはやはり目的意識をもって買うべきクルマだ。後方視界は無に等しいし、万一のリペアビリティーはコスト的にかなり厳しいことになるだろう。街なかでの柔軟性を重視するならウラカンEVOシリーズがある。それでもサーキットへの往復を淡々とこなせる、そしてサーキットでは思う存分にそのパフォーマンスを解き放ち、内燃機の究極的な官能性も味わい尽くす、そこに対価が見いだせる人にとっては、今どきなかなかお目にかかれない逸品であることは間違いない。
(文=渡辺敏史/写真=アウトモビリ・ランボルギーニ、webCG/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
ランボルギーニ・ウラカンSTO
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4547×1945×1220mm
ホイールベース:2620mm
車重:1339kg(乾燥重量)
駆動方式:MR
エンジン:5.2リッターV10 DOHC 40バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:640PS(470kW)/8000rpm
最大トルク:565N・m(57.6kgf・m)/6500rpm
タイヤ:(前)245/30R20/(後)305/30R20(ブリヂストン・ポテンザ スポーツ)
燃費:13.9リッター/100km(約7.2km/リッター 欧州複合モード)
価格:4125万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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