メルセデス・ベンツC200アバンギャルド(FR/9AT)
高いものには理由がある 2021.10.22 試乗記 5代目「メルセデス・ベンツCクラス」がいよいよ日本の道を走り始めた。強力な電動パワートレインや先進のインフォテインメントシステムを採用した新型は、“C”の枠を大きく飛び越えるほどの進化を果たしている。1.5リッターマイルドハイブリッドモデルに試乗した。またもサイズアップ
従来型Cクラス(W205)が6500カ所も変更したという大がかりなマイナーチェンジを受けたのはちょうど3年前のこと。ヒット作だっただけにもう新型か、という気がしないでもないが、コンパクトセダンのベンチマークとして常に注目されるだけでなく、ますます厳格化されるCO2排出量ルールに対応するためには一時も立ち止まっているわけにはいかないのだろう。自動車界が激変期にあるということをあらためて実感する。
「Eクラス」を飛び越してプチ「Sクラス」と呼ばれるだろう新型Cクラスは、滑らかで簡潔な面で構成されている。遠目に見ると、特に後方からのスタイルはEやSクラスと簡単に見間違えるほど。もちろん意図的なものだろう。実際にまたもわずかに大きくなった新型Cクラスのボディーの全長はほぼ4.8m、ホイールベースは2865mm、ということはちょうど3代目Eクラス(W211)に相当する堂々としたサイズで、Cクラスの前身にあたる「190E」が全長4.5m以下の5ナンバーサイズだったことを考えると、もはや立派なアッパーミディアムクラスである。新型「C200アバンギャルド」のボディーサイズは全長×全幅×全高が4785×1820×1435mm、ホイールベース2865mmというもので、従来型最後期の「C200ローレウスエディション」と比べるとそれぞれ+80/+10/+5/+25mmの増加となる。シンプルで奇をてらわないデザインゆえにちょっとおとなしく、保守的に映るかもしれないが、中身は2021年春に発売された新型Sクラスに遜色ない先進機能満載である。
1993年デビューの最初のCクラスから数えて5世代目にあたる新型はセダンとエステート(ステーションワゴン)が同時に発表された。近年はFWDのコンパクトなSUVモデルなどを積極的に投入してラインナップを拡充しているメルセデス・ベンツだが、主力モデルはやはりセダンである。なかでも最もコンパクトな後輪駆動モデルであるCクラスは、2014年発売の先代W205だけでこれまでに250万台以上が販売され(国内でもおよそ10万台)、1982年発売の「190シリーズ」(W201)から数えると総計では1000万台を超えるという。文字通りメルセデスブランドを支える中核モデルである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
全車が電動モデルに
本来はセダンの「C200」および「C220d」が最初に国内導入される予定だったが、当初の見込みよりも日本上陸が遅れて、まずガソリン1.5リッターターボ+ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)のC200アバンギャルドのみが導入された。試乗車はそれに「ベーシックパッケージ(ヘッドアップディスプレイ&MBUX ARナビ)」と「AMGライン」、さらに「リアアクスルステアリング」といったオプションが加えられた仕様である。
注目はガソリン、ディーゼルともにエンジンがすべて4気筒に統一され、かつトランスミッションケースにモーターを内蔵するISGを搭載したこと。いわば全車電動化されたことになる。さらにEV航続距離およそ100kmのプラグインハイブリッドの「C350e」も2022年半ばには追加されるという。
C200用ガソリンエンジンは、新開発の「M254」型1.5リッター4気筒ターボで、最高出力204PS(150kW)/5800-6100rpmと最大トルク300N・m/1800-4000rpmというスペックを持つ。従来型C200に搭載されていた1.5リッター直4ターボ(M264)は184PS/5800-6100rpmと280N・m/3000-4000rpmだったから、パワーアップだけでなく、低回転域のトルク増強が図られていることが分かる。さらに従来型C200は同じ48V駆動ながらBSG(ベルトドリブン・スターター・ジェネレーター)を採用していたが、新型はトランスミッションケースに内蔵されたISGとなって補機類ベルトも省かれ(エアコンコンプレッサー用だけは残されている)、変速機も全車ISGを前提とした「9Gトロニック」(9段AT)を搭載する。ベルト駆動式は大トルクには対応できない弱点があるが、新型は20PS(15kW)と200N・mをいわゆる「EQブースト」として得られる。従来型C200のBSGは最大で14PS&160N・mだったからその違いは明白だ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
大きくなっても小回りが利く
先代C200とまったく同じ1.5リッターターボ+BSGが搭載されている全長5m級の「E200」でも不足はないのだから当たり前だが、新型C200はさらにパワフルでスタートダッシュはかなり強烈だ(0-100km/h加速は7.1秒という)。エンジンそのものも従来型よりトップエンドまでスムーズに回るようだが、やはり強力になったモーターアシストが効果的で低中速域での即応するレスポンスとたくましさが印象的だ。言うまでもなく燃費も向上しており、WLTCモード燃費は14.5km/リッターとされている。
新型C200はスポーツサスペンション(AMGラインに含まれる)を備える割には、うねりがある山道などでは姿勢変化がやや大きく感じたが、ラフなハーシュネスなどは感じられず、むしろ実用域では予想以上にあたりが柔らかく、十分にしなやかな足まわりを備えているようだ。ただし、ピレリを装着した別の車両(われわれの試乗車はグッドイヤー)ではハーシュネスがちょっと気になるという意見もあった。
それでもC200が明確にスポーティーな性格を主張しているのは、まずロックトゥロックわずか2回転の、まるでアルファ・ロメオのようなクイックなステアリング(従来型より約10%クイックになったという)を装備しているためだ。そのうえ試乗車にはこのクラスとしては初めてというリアアクスルステアリング(14.5万円のオプション)も備わっていたからなおさらだ。60km/h以下では前輪と逆位相に最大2.5度、それ以上の速度域では同位相に同じく2.5度後輪も操舵するこのシステムのおかげで、ボディーが大型化したにもかかわらず、リアステアリング付きは最小回転半径5m、スタンダードモデルでも5.2mを誇る。
もともとメルセデスは“切れる”クルマだが、例えば「トヨタ・ヤリス」(グレードによって4.8~5.1m)や「日産ノート オーラ」(5.2m)の数値と比べれば、その取り回しのよさが際立っていることが分かる。さらに大型スクリーンには車両の全周をあらゆる角度から表示することもできるから、これで駐車が苦手だという人はいなくなるはずだ。しかもUターンや駐車時にはびっくりするほど切れるものの、走行中は車速や舵角に応じて適切に制御されているらしくほとんど意識することがなかった。もちろんシャープで機敏だが、安定感は文句なしといったハンドリングである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
容赦ない全力投球
メルセデスの本気というか、情け容赦ない全力勝負をまざまざと感じさせられるのが、新型Sクラスとみまごうばかりのさらに大胆にデジタル化されたインストゥルメントパネルである。ひと際目立つのはダッシュ中央にドライバー側に約6度傾けて装着されたSクラス同様のタッチスクリーン式縦型11.9インチメディアディスプレイ(Sクラスは12.8インチのOLEDディスプレイ)で、このおかげで大胆に物理スイッチを省略している。これで本当にCクラスか、とため息が出るほどだが、同じことは明らかに高くなった値段にも言える。
全車ISG搭載のうえに、さらに進化した安全運転支援システムや片側130万画素相当の高解像度を持つウルトラハイビーム(約600m先まで照射可能)付きデジタルライトなど、最先端装備を満載していることは理解していても、C200アバンギャルドで651万円からという価格には、それにしても、というのが正直な気持ちである。試乗車のようにベーシックパッケージ(15.4万円)、AMGライン(32.6万円)、リアアクスルステアリング(14.5万円)といったオプションを加えると700万円台前半にも達する。従来型に比べてざっと50万円アップといった感覚だろうか。
ライバルとみなされる「BMW 3シリーズ」や「アウディA4」には500万円を切るベーシックモデルもラインナップされているから、直接比較するには現時点では価格差が開きすぎである。ライバルを圧倒的に突き放す、まさしく性能も価格もアバンギャルドな新型をこれぞメルセデス、と納得するか、あるいはちょっと先に行きすぎと感じて距離を置く人が多いのだろうか? 私自身も今はそのすごさに圧倒されて戸惑っているところである。
(文=高平高輝/写真=荒川正幸/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツC200アバンギャルド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4785×1820×1435mm
ホイールベース:2865mm
車重:1700kg
駆動方式:FR
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:204PS(150kW)/5800-6100rpm
エンジン最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/1800-4000rpm
モーター最高出力:20PS(15kW)
モーター最大トルク:200N・m(20.4kgf・m)
タイヤ:(前)225/45R18 95Y XL/(後)245/40R18 97Y XL(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック5)
燃費:14.5km/リッター(WLTCモード)
価格:654万円/テスト車=726万4000円
オプション装備:メタリックペイント<モハーベシルバー>(9万9000円)/ベーシックパッケージ(15万4000円)/AMGライン(32万6000円)/リアアクスルステアリング(14万5000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1256km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

高平 高輝
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX(4WD/CVT)【試乗記】 2026.10.6 「スバル・レヴォーグ レイバック」にストロングハイブリッド搭載モデルが登場。高効率なパワーユニットが積まれたのはもちろんのこと、既存の純エンジン車とはデザインやボディーサイズも違っているというから興味深い。上位グレードの「プレミアムS:HEV EX」を試す。
-
NEW
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
NEW
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。 -
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する
2026.10.15デイリーコラム光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。 -
「BYDラッコ」「スズキeスカイ」登場で卍どもえに 軽乗用BEVの覇権はどこが握る?
2026.10.14デイリーコラムこれまで「日産サクラ/三菱eKクロスEV」と「ホンダN-ONE e:」のみだったところに「BYDラッコ」と「スズキeスカイ」が加わり、軽BEV市場がにわかに盛り上がりを見せている。どれもほぼ同じ床面積を持つBEVだが、比べてみるとその中身は結構違う。今後の覇権を握るのはどの陣営か。 -
第132回:軽EVのデザインを考える(前編) ―「スズキeスカイ」にみる“大衆車メーカー”スズキのスゴみ―
2026.10.14カーデザイン曼荼羅希代の凡作か? 実はすべてが計算のうちか? スズキ初の軽乗用電気自動車「eスカイ」の造形を、カーデザインの識者と考察。つかみどころのないイメージの背景にある、“大衆車メーカー”スズキの慧眼(けいがん)に思いをはせた。 -
先進のSUV「エクストレイル」という選択
2026.10.13SUVのフロントランナー 日産エクストレイルの魅力に迫る<AD>4代・四半世紀にわたって進化を重ね、SUVブームのなかでも開拓者であり続けてきた「日産エクストレイル」。その先進技術がもたらす“乗ればわかる喜び”とは? 最新世代の到達点について、詳しくリポートする。
























































