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第25回:大事なのは長く運転を続けられること マツダの「CO-PILOT」が目指す人とクルマの未来

2021.11.23 カーテク未来招来
多くの企業が開発に取り組んでいる自動運転技術に対し、「MAZDA CO-PILOT」はあくまでドライバーの運転を支援し、“万が一”に備える趣旨のシステムとなっている。
多くの企業が開発に取り組んでいる自動運転技術に対し、「MAZDA CO-PILOT」はあくまでドライバーの運転を支援し、“万が一”に備える趣旨のシステムとなっている。拡大

マツダが2022年に導入を始める安全技術「MAZDA CO-PILOT」の概要を発表した。運転中のドライバーに異常が起きた場合、車両を自動で、安全に停止させるというものだ。運転支援技術の高度化を進めるメーカーが多いなかで、あえて“控えめ”な施策を選んだマツダの意図を探る。

今日では“事故ゼロ”という目標へ向けてさまざまな手段が模索されているが、その多くは「人間を運転から遠ざけること」を意図したもので、その究極のかたちが自動運転車だ。写真はグーグルの自動運転車(2016年)。
今日では“事故ゼロ”という目標へ向けてさまざまな手段が模索されているが、その多くは「人間を運転から遠ざけること」を意図したもので、その究極のかたちが自動運転車だ。写真はグーグルの自動運転車(2016年)。拡大
「CO-PILOT」ではドライバーの姿勢や視線、運転操作から、システムが絶えずその状態をモニタリング。万が一ドライバーの異常を検知した場合には、自動でクルマを安全な場所まで移動させ、緊急停止させる。
「CO-PILOT」ではドライバーの姿勢や視線、運転操作から、システムが絶えずその状態をモニタリング。万が一ドライバーの異常を検知した場合には、自動でクルマを安全な場所まで移動させ、緊急停止させる。拡大
類似のシステムは高級車を中心に実用化が進んでおり、例えば世界で初めて自動運転レベル3を実現した「ホンダ・レジェンド」にも、ドライバーの異常を検知すると自動で車両を停車させる「緊急時停止支援機能」が搭載されていた。
類似のシステムは高級車を中心に実用化が進んでおり、例えば世界で初めて自動運転レベル3を実現した「ホンダ・レジェンド」にも、ドライバーの異常を検知すると自動で車両を停車させる「緊急時停止支援機能」が搭載されていた。拡大

心や体が活性化するクルマを目指す

マツダは以前から完全自動運転技術を目指すのではなく、機械はあくまで人をサポートすることに徹し、ドライバーが心から安心して運転できることを重視して運転支援技術を開発してきた。その考え方の延長線上にあるのが、今回概要を発表したCO-PILOTだ。

先日、ある技術セミナーでマツダの技術者の講演を聴く機会があったのだが、そこで印象的だったのは、「楽しく操ることで心や体が活性化するようなクルマを実現したい」という言葉だった。

事故のないクルマを目指すという方向はすべての完成車メーカーが目指していることだろう。しかし人間が運転する以上、認知・判断・操作の遅れやミスをゼロにすることはできない。そうした前提のもと、クルマが起こす事故をゼロにするには2つの方向がある。ひとつは完全自動運転である。つまり、人間を運転に介在させないことで事故を限りなくゼロに近づけていこうというものだ。米グーグルや中国の百度(バイドゥ)など、世界の巨大IT企業が目指す方向はこちらだろう。クルマをドライバーの不要な「ロボットカー」にすることで事故をなくすのだ。

しかし、マツダは事故ゼロにはもうひとつの方向があり、そのために開発を進めているのがCO-PILOTだと説明する。これは、完全自動運転が可能な「レベル4」の要素を満たしたうえで、運転を自動化するのではなく、人とクルマがシームレスに協調する状態を目指したものである。具体的には、人間がミスを犯したり、運転できない状態に陥ったときには、すかさずクルマが運転を代わったり、安全な場所に停止したりする。

この2つの方向の根底にあるのは、「楽をしたい」「成長したい」という人間の2つの基本的な欲求である。楽をしたいという方向を追求するのが完全自動運転であり、マツダもこれを否定するわけではない。しかしマツダが目指すのは、「成長したい」という欲求を満たすクルマである。高齢化が進むなかで、「アンチエイジング」ではなく「ウェルエイジング」なクルマを目指していきたい、年をとっても運転できるようなクルマづくりがしたい、上述の技術者はそう語っていた。

マツダが考える3つのステップ

もちろんマツダはCO-PILOTだけで安全を確保しようとしているわけではない。彼らは安全技術を3つのステップで考えており、その最初のステップは「正しく運転できる仕組み」だ。すなわち、「クルマの良好な視界を確保する」「正しいドライビングポジションがとれるようにする」などの施策によって、ドライバーが疲れにくく、運転に集中できる環境を整えることだ。それと同時に、万一の衝突事故に備えて車体構造の強化などにも取り組む。 

2つ目のステップが、事故を起こさないための「認知・判断のサポート」である。これはすでに「i-ACTIVSENSE」として実用化されており、レーダーやカメラを活用することで、先行車両との接近や後側方から近づいてくるクルマがあるといった、事故につながるリスクが生じた場合にドライバーに注意を促すシステムである。最近では、ドライバーの状態をモニタリングするカメラによって眠気を検知し、休憩を促す機能なども加わっている。

そして、3つ目のステップが今回発表されたCO-PILOTである。この技術はクルマがドライバーの状態をカメラなどでモニタリングし、体調の急変や居眠りなどを検知した場合には、まずアラームで警告。ドライバーが運転できない状態だと判断すると、クルマを停止させて安全を確保するというものだ。 

このシステムは3つのコア技術から構成されている。1つ目はドライバーの状態を検知する技術。2つ目が、何かあったときにすぐ対応できるよう裏で“仮想運転”を行う「CO-PILOT HMI仮想運転技術」。そして3つ目が、ドライバーに異常が発生した場合にクルマを安全に停止させる技術だ。

このうちドライバーの状態を検知する技術では、着座姿勢の崩れや視線・頭部の挙動を監視するとともに、ステアリングやペダルの操作もモニタリングすることで、状態の異常を総合的に判断する。そしてもし異常が検知された場合には、ドライバーに代わって安全な場所まで自動でクルマを移動させる。その間は、ハザードやブレーキランプ、ホーンによって周囲にCO-PILOTが作動中であることを知らせる。そしてクルマを停止させても安全な場所に近づいたら、徐々に減速し、クルマを停止させる。

マツダが考える安全技術の3つのステップ。第1段階の「正しく運転できる仕組み」とは、広い視野の確保や適切な姿勢がとれる運転環境の実現など、昔から追求されてきた「運転しやすいクルマづくり」の施策だ。
マツダが考える安全技術の3つのステップ。第1段階の「正しく運転できる仕組み」とは、広い視野の確保や適切な姿勢がとれる運転環境の実現など、昔から追求されてきた「運転しやすいクルマづくり」の施策だ。拡大
今日普及が進んでいる、衝突警報や自動緊急ブレーキなどの予防安全システムは、第2段階の「認知・判断のサポート」に含まれる。マツダでは2012年登場の3代目「アテンザ」で導入が開始された。
今日普及が進んでいる、衝突警報や自動緊急ブレーキなどの予防安全システムは、第2段階の「認知・判断のサポート」に含まれる。マツダでは2012年登場の3代目「アテンザ」で導入が開始された。拡大
「CO-PILOT 2.0」の作動の様子。ドライバーの状態やハンドル/ペダルへの入力などをモニタリングし、異常を検知すると画面表示や警報などで警告を発する。
「CO-PILOT 2.0」の作動の様子。ドライバーの状態やハンドル/ペダルへの入力などをモニタリングし、異常を検知すると画面表示や警報などで警告を発する。拡大
ドライバーのモニタリングについては、姿勢の崩れや視線・頭部の挙動をカメラで監視。「CO-PILOT 1.0」では、こうした機器にすでに実用化されているものを活用し、手ごろな価格での実用化を目指している。
ドライバーのモニタリングについては、姿勢の崩れや視線・頭部の挙動をカメラで監視。「CO-PILOT 1.0」では、こうした機器にすでに実用化されているものを活用し、手ごろな価格での実用化を目指している。拡大

“免許返納”以外の選択肢もあるべきだ

マツダはこのCO-PILOTについて、2段階で実用化するとしている。まず、2022年上市のラージ商品群から導入される「MAZDA CO-PILOT 1.0」では、ドライバーの異常を検知するとウインカーやホーンなどで周囲に異常を知らせながら、クルマを停止させて安全を確保する。高速道路では、同じ車線での停止、もしくは路肩への退避を行う。一般道では、異常を検知した場合に同じ車線内でクルマを停止させる。

次いで2025年以降は、より機能を進化させた「CO-PILOT 2.0」を実用化する。ドライバーの異常に対応するだけでなく、体調不良などの予兆を検知する技術を導入するとともに、高速道路では車線変更を経て路肩などに移動できるようにする。一般道でも、より安全な場所へ移動してクルマを停止するよう進化させるという。

このうちCO-PILOT 1.0は、カメラやミリ波レーダー、ドライバーモニタリング用のカメラなど、すでに現在のマツダ車に搭載されているセンサーをもとに実用化する方針だ。これにより、ユーザーが購入しやすい価格の実現を目指すという。一方のCO-PILOT 2.0では、技術試作車両にカメラを12台追加。安全な場所に停止するための高精度地図や自車位置を検知するための専用ECU(電子制御ユニット)も搭載されていた。ただ、こうしたシステム構成は実用化までに変更される可能性があり、「これが最終決定ということではない」とのことだった。

マツダによれば、運転中の発作・急病に起因する事故は2018年に269件発生しており、その件数は増加傾向にあるという。高齢ドライバーが増加し、運転中に急病や発作が起きる可能性は今後もますます高まるだろう。一方で、免許を返納すると外出しなくなり、介護のリスクが高まるという調査結果もある。多くのドライバーが少しでも長く、安全な運転を続けられるために、完成車メーカーには何ができるのか。今回の新技術はそのひとつの回答だといえるだろう。

(文=鶴原吉郎<オートインサイト>/写真=マツダ、Newspress/編集=堀田剛資)

ドライバーが運転できる状態にないと判断すると、ウインカーやホーンなどで周囲に注意を促しつつ、クルマを停止。安全を確保する。
ドライバーが運転できる状態にないと判断すると、ウインカーやホーンなどで周囲に注意を促しつつ、クルマを停止。安全を確保する。拡大
高速道路走行時にドライバーの異常を検知すると、路肩まで移動して車両を停車させる。「CO-PILOT 1.0」は車線変更ができないので、路肩まで移動できない場合は同一車線内で停止するかたちとなる。一方、車線変更が可能な「CO-PILOT 2.0」では、より確実に路肩まで移動できるようになる。
高速道路走行時にドライバーの異常を検知すると、路肩まで移動して車両を停車させる。「CO-PILOT 1.0」は車線変更ができないので、路肩まで移動できない場合は同一車線内で停止するかたちとなる。一方、車線変更が可能な「CO-PILOT 2.0」では、より確実に路肩まで移動できるようになる。拡大
周辺のクルマを避けながら、自動で車線変更し、路肩へと向かう技術試作車両。同車には「CO-PILOT 1.0」(すなわち既存の市販車両)の機器に加え、12基のカメラを搭載。また高精度地図データや自車位置測定用の専用ECUも追加されている。
周辺のクルマを避けながら、自動で車線変更し、路肩へと向かう技術試作車両。同車には「CO-PILOT 1.0」(すなわち既存の市販車両)の機器に加え、12基のカメラを搭載。また高精度地図データや自車位置測定用の専用ECUも追加されている。拡大
鶴原 吉郎

鶴原 吉郎

オートインサイト代表/技術ジャーナリスト・編集者。自動車メーカーへの就職を目指して某私立大学工学部機械学科に入学したものの、尊敬する担当教授の「自動車メーカーなんかやめとけ」の一言であっさり方向を転換し、技術系出版社に入社。30年近く技術専門誌の記者として経験を積んで独立。現在はフリーの技術ジャーナリストとして活動している。クルマのミライに思いをはせつつも、好きなのは「フィアット126」「フィアット・パンダ(初代)」「メッサーシュミットKR200」「BMWイセッタ」「スバル360」「マツダR360クーペ」など、もっぱら古い小さなクルマ。

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