第234回:よみがえれ「ガゼール」よ
2022.06.13 カーマニア人間国宝への道次期エリート特急はコイツだ!
3月末で「ランボルギーニ・カウンタック」をエノテン(中古フェラーリ専門店『コーナーストーンズ』代表)に完全売却し、「フェラーリ328GTS」と「ダイハツ・タントスローパー」「ハイゼット トラック ジャンボ」、そしてエリート特急こと先代「BMW 320d」という、完璧すぎるラインナップとなったわが自家用車軍団。あまりにも完璧すぎて、欲しいクルマがなくなってしまった。
俺はこのまま、一生クルマを買わないのだろうか。欲望の衰退とともに生命の炎も消えていくのだろうか。
そんな軽い憂鬱(ゆううつ)を感じていた時、BMWの新型「220iクーペMスポーツ」に試乗して、久しぶりに震えがきた。
ソイツは比較的コンパクトな、昔ながらのカッコいいノッチバッククーペだった。パワーはちょうどいいし、四駆じゃなく後輪駆動だし、足まわりは適度に引き締まってスポーティーだし、とにかく首都高でのコーナリングが最高に気持ちイイ! これぞBMWの原点! これこそ初代「M3」の再来だ! うおおおおおおお欲しい! よし、エリート特急をコイツに買い替えよう! 新エリート号はオマエだぜ!
お値段は550万円。うむう、高い。なにしろフェラーリやランボルギーニ以外のクルマには、300万円以上出したことがない俺さまだ。550万円はとってもお高く感じる。
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忘れえぬ初恋の「ガゼール」
じゃ先代2シリーズ クーペの中古狙いかというと、それじゃ萌(も)えないんだよぉ! 先代もコンセプトはまったく同じだし、新型よりも軽くてコンパクトで、資質としては新型より上だけど、体形がちょっとズングリしてるし、顔(特に目元)があんまり好きじゃなかったんです……。そこは妥協できないんです!
一方、新型のシュッとスマートなノッチバッククーペスタイルは、中高年カーマニアにとって永遠の青い鳥。そのルックスに、若かりし頃のデートカーの残像が重なってしまいました! 具体的には、19歳で親に買ってもらった初代「日産ガゼール」です! 私には新型220iが、S110系ガゼールの超進化版に見えたんです!
ふ抜けた青年期、あり余る情熱を注ぎまくり、ひたすらアクセル全開で走りまくり、スキー場に向かってチェーン装着で雪の関越道を100km/hで突っ走り(絶対にマネしないでください)、ヒール&トウを練習しまくった忘れえぬ初恋の人! まさかこの年になって、もう一度ガゼールに巡り合えるとは思わなかった。
ちなみにですね、直6ターボを積んだ「M240i xDriveクーペ」にも試乗しましたが、アレはパワフルすぎて新ガゼールじゃなかったです。あえて言えば新「ソアラ」でしょうか。ソアラに萌えてもいいんですが、個人的には断然ガゼール!
バリアフリーなクルマが欲しい
高くて新車じゃ買えないので、3年後に中古を狙おう。よし決めた! 次の獲物はオマエだぜ! と思いながら、新ガゼールのドアを開けてクルマから降りようと思った瞬間、「いや、違う!」という思いがもたげた。
コンパクトとはいえ、2シリーズ クーペは2ドアクーペ。ドアはかなり長い。狭い駐車場で、この長いドアを開けて乗り降りするのは、結構難儀だ。
こういう乗り降りが難儀なクーペは、328だけでいいんじゃないか。こういう車高の低いスポーツカーも、328だけでいいんじゃないか?
仮に私がフェラーリ328を持っていなければ、もろ手を挙げて新型220iに突撃していたでしょう。中古を待つとかめんどくさいこと言わず、ディーラーにすっ飛んでって残価設定ローンで新車を購入していたことでしょう。なにしろ永遠の青い鳥、新ガゼールなんですから!
でも、還暦を過ぎて、ふだんの足にドアが長くて車高が低くて乗り降りがちょっとだけ難儀なクルマを買うのは、間違ってる気がする。もっとラクチンで、毎日が楽しくなるような、バリアフリーなクルマを買うべきじゃないか!?
思えば、エリート特急ですら着座位置が低めで、乗り降りが若干難儀に感じ始めている今日この頃なのである。年をとると、本当に足腰が弱るのです。毎朝4分間老人体操をしていますが、老化を防ぐことはできません。膝が痛いんです!
その瞬間ふと、「生まれて初めてSUVを買ってみたいかも~」という欲望が芽生えたのでした……。(以下次号)
(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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