イタリアンスーパーカーの魅力は電動化しても不滅……なのか?
2022.07.22 デイリーコラム電動化はまず避けられない
いまや、イタリアンスーパーカーも電動化を余儀なくされている。「フェラーリ296GTB/GTS」や新生「ランボルギーニ・カウンタック」は、すでにプラグインハイブリッド化されて登場した。今後数年以内に、すべてのモデルがプラグインハイブリッド化されるのだろう。
電動化のスペックは、「EVとしての航続距離=25km」が基本。これでCO2排出量を2分の1に換算にすることができる。これは、「一般的なクルマは1日あたりの平均走行距離が50km程度」というデータに基づく、EU内のルールだ。スーパーカーは一般的なクルマとはまったく異なる使われ方をするし、そもそも年間走行距離が極端に短いのだが……。
それはさておき、年間生産台数30万台未満の小メーカーは、大メーカーとはCO2規制の方法が異なる。
フェラーリは年間1万台以上30万台未満なので、2007年の数値に対して45%減。ランボルギーニは年間1万台未満なので、個別にEUと交渉することになるが、それほど扱いが異なることはないだろう。つまり、どちらも全モデルをプラグインハイブリッド化すれば、それでだいたい規制をクリアできるはずだ。
では、電動化されたイタリアンスーパーカーに、われわれクルマ好きがかつて抱いたようなロマンや趣味性を見いだすことはできるだろうか?
これは、人それぞれと言うしかない。私のような大衆フェラーリファンは、フェラーリの新型車など、高すぎてもはや買えるはずがないし、無理して買う必要もない。296GTB/GTSは、古典的なルックスが魅力的で、V6エンジンのサウンドも官能的だと聞いているが、買えないものは仕方ないし、いま持っている内燃エンジンフェラーリ(私の場合は「328GTS」)で大満足以上。これに一生乗り続ければ、それ以上望むものなどない。
“EVオンリー”への懸念
しかし、富裕層はそうはいかない。お金がどんどん増えていけば、新しいモデルへの欲望が、底なしに湧いてくるのが自然だ。
彼らは、プラグインハイブリッドのフェラーリやランボルギーニを争って買うに違いない。性能は間違いなく向上しているし、EVモードで静かに走るのも意外と面白かったりする。私は「SF90ストラダーレ」に関しては、EVモードでの走行が一番お気に入りだった。もはや公道でのアクセル全開は、一瞬でも不可能なほどパワーアップしている。むしろEVモードで無音で走行できることが、ツンデレ的に楽しく感じられたりする。
ただ、EUは近い将来、プラグインハイブリッドも禁止する。プラグインハイブリッドは、実際にはCO2規制の抜け穴として利用されていて、製造段階でのCO2排出量が多いぶん、純内燃エンジン車よりもむしろ環境に悪いという実態も暴かれつつある。
プラグインまで禁止されたら、イタリアンスーパーカーのメーカーはどうするのか?
おそらくEVも出すのだろうが、主力は、カーボンニュートラルな燃料を使用した内燃エンジンになる……と期待したい。WRCは今年から100%バイオ燃料を使用しているし、ポルシェは「911」ユーザーのために、チリで風力発電による合成燃料生産に着手している。
ただポルシェは、「あくまで911のためのもの」という姿勢だ。EUがカーボンニュートラルな燃料で走るクルマの扱いをどうするか、まだよくわからない。今のところ「あくまで航空機や船舶用の燃料」と位置づけているようだ。内燃エンジンは、CO2を出さなくても、NOxなどの有害物質はゼロにはできないというのが理由である。
となるとやっぱり、イタリアンスーパーカーもEVオンリーになるのだろうか? いかに繊細に味つけしても、私にはEVはどれもこれも同じように感じる。内燃エンジンが存在すれば、EVも面白く感じるが、すべてがEVになったら多様性が失われ、何も感じなくなってしまいそうだ。フェラーリやランボルギーニの特別な味わいは消え、単なる加速力に置き換わってしまわないか?
個人的には古いフェラーリで十分なので、ひとごとではあるのだが、できればカーボンニュートラルな燃料を使用して、内燃エンジン搭載を死守してもらいたい。生物も機械も多様性が大事ですから!
(文=清水草一/写真=アウトモビリ・ランボルギーニ、フェラーリ、webCG/編集=関 顕也)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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