第242回:カーマニアは目が命
2022.10.03 カーマニア人間国宝への道左目に最高級レンズをブチ込む
最近しみじみ思うのは、「おっさんは目が命」ということだ。正確には、カーマニアは目が命。通常の視力や動体視力その他もろもろの「見る力」が衰えると、カーマニア活動もてきめんに衰える。なにしろよく見えないので。
私は2022年1月、左目の白内障手術を行い、見る力の回復を図ったが、調子はまだいまひとつだ。実は左目は、軽度の白内障と同時に、ドライアイを患っていたことが術後に判明した。おそらく数年前、草野球の練習でフライを取り損ねて左目に当てたのをきっかけに、ドライアイになったのだろう。ドライアイは白内障手術では治らないので、点眼等で気長に治療を続けている。
ドライアイというのは、文字どおり目が乾く症状だが、正確には、目が長期間乾いたことによって、角膜の表面に小さなデコボコができ、それによって見えづらくなったり、違和感が出たりする状態だそうです。
白内障手術によって、左目には最新・最高級の多焦点レンズがブチ込まれ、視力を測ると1.2あるんだけど、なんだか全部ぼやけてよく見えないのは、それが原因だった。運転してても距離感がつかめず、「カーマニアの命もこれまでか」と思いました。
幸い、ドライアイであることがわかり、点眼治療で徐々によくなっているけれど、まだ日によって、よく見えたりイマイチだったりする。でもまぁ、それなりに見えることは見えるので、こうしてまだカーマニア活動を続けられているのですが。
速いクルマを卒業したきっかけ
思えば私の「見る力」との戦いは、若い頃から始まっていた。中学生でド近眼になりメガネをかけ始め、高校生でコンタクトレンズに。若い頃はテキトーだったので、コンタクトレンズをよく洗いもせずになめて唾液消毒(?)で目にブチ込んだり、目に悪いことをずいぶんしたものです。コンタクト時代は、しじゅう目が痛かった。
30代で「もうコンタクトはやめよう!」とメガネに戻し、その後カイテキに生きていたのですが、ちょうど10年前、サッカーの本田圭佑選手がレーシック手術をしたという記事を読んで雷に打たれ、本田選手の執刀医のもとに駆け込みレーシックを敢行。運転最優先で遠くに焦点を合わせてもらったので、北京原人なみにビンビンに見えるようになった。直後に「フェラーリ458イタリア」を購入。思えばあの時期が、私のフェラーリ人生の頂点だった。おっさんのカーマニア力は、視力と連動しているのだ!
レーシックで遠くに焦点を合わせてもらったので、同時に老眼となり、近くを見る時は老眼鏡が必要になったが、老眼というのは水晶体をつかさどる筋肉の衰えだから、鍛えればある程度治るはず。寄り目や眼球グルグル運動などを目に課したところ、パソコンに関しては老眼鏡いらずにまで回復した。もちろん遠くはよく見えるので無敵。私はわがカーマニア人生の春を謳歌(おうか)したのである。
しかし好事魔多し。そのわずか6年後、草野球で目を負傷して瞳孔の閉じが悪化し、徐々にドライアイも進行したらしく、左目がぼやけて見えるようになった。思えばほぼその時期に、「もう速すぎるクルマは卒業!」と決意して458イタリアから「328GTS」(赤い玉号)に乗り換えている。
おっさんカーマニアの皆さま、目を大切にしましょうね! 「もう年だから」と諦めないで、眼科検診に行きましょう! 目の不調の原因がわかるかもしれません。特にドライアイは、加齢による視力の低下と混同しやすい気がします。
カーマニアの寿命が延びた
そして今。徐々に目の調子は上向いているが、スピードへの情熱は大いに落ち着き、飛ばすよりも、ゆったり気持ちよく流すのがたまらなく楽しくなってきた。カーマニア力に老人力がついてきたようだ。
そんな時期に購入した「ちょいワル特急」こと「プジョー508 GT BlueHDi」(ディーゼル)は、ゆったり流すのが大変気持ちいいクルマ。プジョーの2リッター直4ディーゼルターボは、やや旧世代のエンジンなれど、そのぶんエンジンブロックが適度に厚い感覚があり、1500rpmから2000rpmあたりの「トルルルル~」という回転フィールにとろけてしまう。アクセル操作をACCに任せていても、そのトロ~リとしたフィーリングを味わってウットリできる。さすがおフランス車。運転席にマッサージ機能も付いているし、トム・クルーズ世代のカーマニアには、天の配剤と呼びたくなるほど相性がよかった!
先日はロングドライブで長野県から岐阜県、富山県を巡って800kmほど走行。目の負傷以来、1時間くらいの連続運転で目の疲れを感じていたのが、2時間くらいまでオッケーに回復したのを実感して、涙が出る思いだった。ああ、カーマニアの寿命が延びた……。
それで燃費は20km/リッター超えなので、お財布の寿命も延びている。ありがとう、ちょいワル特急! ともに長生きしようネ!
(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第326回:三つ子の魂中高年まで 2026.1.5 清水草一の話題の連載。ホンダの新型「プレリュード」で、いつもの中古フェラーリ販売店「コーナーストーンズ」に顔を出した。24年ぶりに復活した最新のプレリュードを見た常連フェラーリオーナーの反応やいかに。
-
第325回:カーマニアの闇鍋 2025.12.15 清水草一の話題の連載。ベースとなった「トヨタ・ランドクルーザー“250”」の倍の価格となる「レクサスGX550“オーバートレイル+”」に試乗。なぜそんなにも高いのか。どうしてそれがバカ売れするのか。夜の首都高をドライブしながら考えてみた。
-
第324回:カーマニアの愛されキャラ 2025.12.1 清水草一の話題の連載。マイナーチェンジした「スズキ・クロスビー」が気になる。ちっちゃくて視点が高めで、ひねりもハズシ感もある個性的なキャラは、われわれ中高年カーマニアにぴったりではないか。夜の首都高に連れ出し、その走りを確かめた。
-
第323回:タダほど安いものはない 2025.11.17 清水草一の話題の連載。夜の首都高に新型「シトロエンC3ハイブリッド」で出撃した。同じ1.2リッター直3ターボを積むかつての愛車「シトロエンDS3」は気持ちのいい走りを楽しめたが、マイルドハイブリッド化された最新モデルの走りやいかに。
-
第322回:機関車みたいで最高! 2025.11.3 清水草一の話題の連載。2年に一度開催される自動車の祭典が「ジャパンモビリティショー」。BYDの軽BEVからレクサスの6輪車、そしてホンダのロケットまで、2025年開催の会場で、見て感じたことをカーマニア目線で報告する。
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。








































