BMW 320iエクスクルーシブ(FR/8AT)
これなら長く付き合える 2023.02.03 試乗記 BMWの基幹モデル「3シリーズ」がマイナーチェンジ。新しい操作インターフェイスの機能性は? スタンダードな2リッター直4ガソリンエンジンのフィーリングは? ラインナップの基軸を担う「320i」に試乗し、最新版3シリーズの実力を確かめた。マーケットの縮小もなんのその
「トヨタ・クラウン」の変化を見てもわかるとおり、セダン市場は縮小の一途をたどっているが、依然として気を吐くモデルも少なくない。例えばBMW 3シリーズは(「ツーリング」を含めての成績とはいえ)、輸入車販売台数のトップ10から外れることがなく、BMWブランドで最も売れているモデルでもある。1990年代からスポーツセダンの代名詞というイメージが定着し、間違いのない選択肢であると認識されているのが人気の理由だろう。
現行モデルである7代目は2019年にデビュー。2022年9月には恒例となっているモデルサイクル半ばのマイナーチェンジを受けた。エクステリアの印象は大きくは変わらないものの、よりシャープになったヘッドライトやワイド化されたキドニーグリルとフロントエプロン、より細く水平基調を強めたリアコンビネーションランプなどでモダンになった。インテリアは電気自動車「iX」から始まったカーブドディスプレイの採用や、シフトレバーを廃して小さなシフトセレクターとするなど変化の幅が大きい。合わせて「iDrive」がアップデートされ、第8世代のオペレーションシステム「OS8」となっている。
今回の試乗車は「320iエクスクルーシブ」で、ガソリンの2リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載。同型のエンジンを搭載する「318i」は最高出力156PS、最大トルク250N・mだが、320iはそれぞれ184PS、300N・mとなる。このほかにも、現行3シリーズには同エンジンをベースとしたプラグインハイブリッドや、3リッター直列6気筒ターボ、2リッター直列4気筒のディーゼルターボなどがラインナップされるが、そのなかでも320iは、多くの人にとってスタンダードな選択肢となるだろう。試乗車はスポーティーな装備の「Mスポーツ」ではなく、エクスクルーシブということもあって素に近いモデルでもある。
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デザイン性より操作性を
運転環境がガラリと変わった3シリーズだが、見た目はスタイリッシュではなかったものの使い勝手は抜群だったシフトレバーがなくなったことに、一抹の寂しさを覚えてしまう。シフトレバーがよかったのは、Dレンジでの走行中、とっさにエンジンブレーキをかけたくなったときや、シフトダウンして加速したくなったときに、ポンッと左側に倒せばSレンジに入って適切なギアになってくれたこと。ブラインドでも操作可能で意のままだった。
それができなくなったかわりに、シフトパドルが全車標準装備となり、320iエクスクルーシブにも付いているのはうれしい。それでもギアは8段と多段なので、上述のような際には2~3段ぐらいギアを落としたいことがほとんど。パドルを複数回操作しなければならないのがちょっと煩わしい。小さなシフトセレクターでSレンジに切り替えるテもあるが、ブラインド操作とはいかず視線を手元に移す必要がある。
もっとも、今回の改良における不満はそれぐらいで、シフトセレクターの操作感は良好。OS8も慣れてくると多彩な機能を使いこなせるようになってくる。12.3インチ+14.9インチの長大なディスプレイも視認性が抜群だ。
エンジンとシャシーにみる妙味
先代モデルから採用されたディーゼルエンジンは、ずぶといトルクにディーゼルらしからぬ爽快な吹け上がり、そして低燃費と魅力が多く、セダンで約4割、ツーリングで約7割という人気を誇ったが、さすがはBMWで、320iの「普通のガソリンエンジン」もまったく悪くない。「320d」の最大トルクは400N・m/1750-2500rpmであるのに対して、320iは300N・m/1350-4000rpm。ピーク値こそ100N・mの差があるが、後者はより低い回転数から幅広い領域で最大トルクを発生するので、扱いやすいのだ。平たんな高速道路を100km/hで流しているときのエンジン回転数は8速・1500rpmで、320dと変わらない。それでいてアクセルを踏み増したときのレスポンスはガソリンのほうが優れていて、速度コントロールの自在感は高い。
アクセルを強く踏み込めば、4000rpmあたりから回転上昇の勢いが増して6500rpmまで力強く緻密な雰囲気で回っていく。この軽快感は、いくらBMWのディーゼルが優秀でもまねできず、ガソリン車を買う意味があるところだ。もちろん直列6気筒ほどの迫力や官能性はないが、デイリーユースのスポーツセダンとして不満はないだろう。ZF製の8段ATは名機と呼びたくなるほどの出来栄えで、ドライバーの意思を常にくみ取ろうとしているのが伝わってくる。ドライバビリティーで右に出る者はいないと断言できるほどだ。
シャシーから受ける快適性とスポーティー性のバランスも絶妙だ。そもそも現行3シリーズは、かなりスポーティーに振った仕上がりとなっている。それは、先代のモデルサイクル中に「アルファ・ロメオ・ジュリア」や「ジャガーXE」などのニューカマーが登場し、3シリーズのお株を奪うべくスポーティーに仕上げてきたことに対する回答でもあったのだが、グレードや仕様によっては乗り心地がちょっと硬すぎることもあった。だが320iエクスクルーシブは、引き締まったスポーティー感がありつつも快適性は犠牲にしていない、ちょうどいいバランスにあるのだ。
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素性のよさが感じられる
320iが装着するコンベンショナルなサスペンションは、ストロークが深くなっていくとダンパーの減衰力が高まる凝った機構となっている。初期はソフトで、17mmほどストロークしたところから段階的に減衰力が高まり、スムーズにバンプストップまで到達する「ハイドロリック・リバウンド・ストップ・ダンパー」だ。だから、普段の乗り心地は快適でありながら、高速道路ではフラットライド、いざコーナーを攻め始めればロールの少ない安定した姿勢となる。
コーナー進入時にステアリングを切り込むと、初期はスッと比較的速めのストロークスピードだが、徐々に粘りが増していく印象で、フロント・アウト側のタイヤに荷重がのって曲がる力が発生し、ノーズがインに向いていくという、一連のコーナリングのプロセスがわかりやすい。俊敏なだけでなく一体感が高く、まるで運転がうまくなったように感じるのはこのためだ。
また、現行モデルのシャシーのハイライトのひとつが、フロントサスペンションの取り付け部をアルミダイカスト製にしたことで、フロントまわりの剛性は約50%も向上している。それゆえハンドリングの正確性がひときわ高く、ほんのわずかにステアリングを切り込んだところからまったく遅れなく反応し、ドライバーの意思に忠実にコーナリング姿勢に入っていく。よくできたFRを操る喜びは、やはり格別だと思わせてくれる瞬間だ。
「M340i xDrive」や「M3」などのハイパフォーマンスモデルの興奮度が高いのはもちろんだが、スタンダードな320iエクスクルーシブに乗ると、現行3シリーズの素性のよさがしみじみと感じられる。快適な日常のなかにほどよい刺激があるちょうどよさが、長く付き合うには最適だと思えるほどだ。
(文=石井昌道/写真=郡大二郎/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
BMW 320iエクスクルーシブ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4720×1825×1440mm
ホイールベース:2850mm
車重:1550kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:184PS(135kW)/5000rpm
最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/1350-4000rpm
タイヤ:(前)225/50R17 98Y XL/(後)225/50R17 98Y XL(ピレリ・チントゥラートP7)※ランフラットタイヤ
燃費:13.0km/リッター(WLTCモード)
価格:646万円/テスト車=690万1000円
オプション装備:ボディーカラー<メルボルン・レッド>(10万円)/ヴァーネスカ・レザー オイスター<専用ステッチ付き>|ブラック(0円)/サウンド・パッケージ(18万9000円)/オートマチック・トランクリッド・オペレーション<オープン/クローズ>(6万9000円)/オーク・グレイン・ファインウッド・インテリアトリム オープンボアード(0円)/パーキングアシストプラス(8万3000円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1403km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:339.7km
使用燃料:27.7リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:12.3km/リッター(満タン法)/12.2km/リッター(車載燃費計計測値)
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石井 昌道
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