BMW XM(4WD/8AT)
独創のハイパフォーマンスカー 2023.03.18 試乗記 BMW Mにとって久々のブランド専用モデルであり、初のPHEVでもある「XM」にアメリカで試乗。4.4リッターV8ターボエンジンと高出力モーターを搭載した次世代のハイパフォーマンスカーは、どんなライバルにも似ていない、無二のドライブフィールの持ち主だった。このデザインもむべなるかな!
アメリカを走っているとカーデザインもまた二極化していることを知る。西海岸ではマスクをした小動物のようなテスラをそこかしこで見かけるけれど、内陸に行けば行くほど、“でかい顔をしたワイルドなヤツら”が、いかつさを一層増して今なお幅を利かせているのだ。後者の代表格はフォードやシボレー、ダッジ、トヨタの大型ピックアップトラックである。
なるほど、世界有数のカーマーケットの好みがこうであるなら、昨今のプレミアムブランドにおいて大仰になるいっぽうのマスクデザインもむべなるかな。アメリカ市場と中国市場は似通っているということだから、なおさらというものだろう。
事実、日本のクルマ好きやBMWファンの間で物議を醸した新型モデル、BMW XMのターゲット市場はアメリカと中国で、この2つのマーケットだけで目標台数の半分を占める。さらに中東や韓国が続く。なるほどである。日本でも国産モデルの顔つきがかなり険しくなってきたから、「これくらい攻めたデザインでないと、高いお金を払う理由がない」と考える人も増えるかもしれない。事実、発表後のXMへの注目度は日本でも高いらしい。
どうして久しぶりのM専用モデルがSUVになったかといえば、SUVが普通の乗用車という時代であるからだ(参照)。セダンが一般的でスポーツカーが常に望まれた「M1」の時代とは、明らかに状況が違っている。
アグレッシブな外装とコンサバな内装
もっとも、このクルマに関して言えばハナからM専用として開発されたわけではない。「X7」ベースの大型高級クーペSUV(いうなれば“X8”)として企画されたが、将来的な販売台数を考えるとM専用モデルにして特別感を持たせたほうがいいという判断だったのだろう。サーキットでのパフォーマンスも含めた高性能と、極上のラグジュアリーの表現が「Mハイパフォーマンスモデル」の使命であり、このXMで究極的にそれを具現したと言っていい。
ちなみにパワートレインは1種類のみ。モノグレード展開で日本でもワンプライス設定という思い切った販売戦略が採られた。
というわけで、M1以来となるMブランド専用モデル、XMを試す日がいよいよやってきた。ところはアリゾナ州スコッツデール。ちょうど3年前の2020年3月、コロナ禍の始まった頃に「X5 M」と「X6 M」のローンチ試乗会(参照)が開催された同じホテルを起点に行われたのだ。まるで3年間の空白を埋めるかのような舞台演出が、なんだか妙にうれしかった。
会場にはさまざまなカラーコーデのXMが並んでいた。なかでも目を引いたのが、鮮やかなブルーやレッドにゴールドの差し色を入れたド派手な仕様だ。なるほど、中国や中東で大ウケ間違いなしだろう。筆者にあてがわれたのはすべてをブラックとした仕様で、XM独特のくどさが薄まっている。これなら悪くないと思って乗り込んだ。あ、赤に金の組み合わせも実は好みです。青に金はなんだかウォルターウルフ仕様みたいだ(笑)。
乗り込めば、斬新なディテール処理が目立った外観とは裏腹に、内装は「最近のBMWらしくまとめられた」という印象が先に立つ。シフトレバーまで生えている(Mだから!)ので、むしろ他の最新モデルよりコンサバな見栄えだ。
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あまりに硬派な22インチ仕様の乗り心地
ドライブモードはさまざまに設定できるが、まずはハンドル、アシ、パワートレインを「Comfort」に、そして電動パワートレインの制御を選ぶ「Mハイブリッドモード」で「HYBRID」を選択して走りだす。ちなみにMハイブリッドモードには、ほかに「ELECTRIC」「eCONTROL」があり、後者は常に充電を行って蓄電量を確保するモードで、HYBRIDに比べるとそのドライブフィールにはやや雑味を感じた。前者は読んで字のごとくの電動モードで、フル充電の状態からならおよそ80~90kmの距離をモーターのみで走らせられる。
赤いボタンを押してエンジンをかけると、今どきハッとするほどの爆音と共にV8エンジンが目覚めた。音も落ち着いたところでゆっくり走りだせば、しばらくはエンジンがかかったりかからなかったりで、なんだかこちらの技量を測られているかのように思う。
加えて、街なかではあまりに金属的な乗り心地にのけぞりそうにもなった。テストカーにはかの地で標準となる21インチではなく、また最大の23インチでもない22インチのタイヤ&ホイールが装着されていたが、実はタイヤも含めると、これが最もスポーティーな仕様らしい。そのせいか乗り心地は相当に硬派だったのだが、SUVには不相応なくらいスポーツタイプなシートの具合が、実はとてもよかったので助かった。なにしろハードな突き上げがしょっちゅうだったというのに、助手席も含めて4時間のドライブを耐えさせてくれたのだから、シートの出来に負うところも大きかったように思う。サポート、クッションとも上々で、これなら長距離ドライブも問題なく使えそう。
人目の少ない山間部の道に入ってきた。空きを狙って各種モードを「Sport」に。パワートレインだけは「Sport Plus」だ。489PS&650N・mを発生する4.4リッターV8ツインターボエンジンに、197PS&280N・mのモーターを加え、システム全体では653PS&800N・mを誇る“Mのロードカー史上最強”のパワートレインを、いよいよ解放してみよう。
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ハイテクがかなえる無二のドライブフィール
アクセルペダルを思い切り踏み込んだ。エンジンがギュンとうなりを上げてすべてを巻き込むように力を出す。サウンドは豪快のひとこと。爆発の生み出す回転フィールには精緻で細かなざらつきがあって心地よい。クルマ好きの心に刺さる類いのエンジンフィールであることは間違いない。「ああ、クルマはやっぱりこうでなきゃ」とあらためて思い知る。
速度が70km/hを超えたあたりからようやく硬質な乗り心地が気にならなくなる。そこからはさすがMのハイパフォーマンスモデルだけあって、ワインディングロードも難なくこなし、まるでスポーツカーのように速い。それでいて、実を言うと大きなクルマを駆っているという印象がずっと続く。一体感があるというのにクルマのサイズを小さく感じることがない。これは極めて面白い乗り味で、ほかでは経験できないものだ。
つまり、ドライバーはSUVらしく大仰に威張ったままの気持ちで、一体感のあるスポーツカー級の走りを楽しむことができる。これぞまさにラグジュアリーとスポーティネスの両立ではないか。Mとして初めて扱う「インテグラルアクティブステアリング」をはじめ、「アダプティブMサスペンションプロフェッショナル」や「アクティブロールスタビライザー」といったシャシーテクノロジーを統合する制御能力の高さゆえの所産であろう。
運転好きが乗れば、見てくれの好き嫌いは別にして、やはりちょっと欲しくなる。BMW XMにはライバルたちとはまるで違うドライブフィールがあった。
(文=西川 淳/写真=BMW/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
BMW XM
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5110×2005×1755mm
ホイールベース:3105mm
車重:2710kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:4.4リッターV8 DOHC 32バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:489PS(360kW)/5400-7200rpm
エンジン最大トルク:650N・m(66.3kgf・m)/1600-5000pm
モーター最高出力:197PS(145kW)/7000rpm
モーター最大トルク:280N・m(28.6kgf・m)/100-5500rpm
システム最高出力:653PS(480N・m)
システム最大トルク:800N・m(81.6kgf・m)
タイヤ:(前)275/40R22 107Y/(後)315/35R22 111Y(ピレリPゼロ)
ハイブリッド燃料消費率:--km/リッター
充電電力使用時走行距離:82-88km(WLTPモード)
交流電力量消費率:30.1-28.9kWh/100km(WLTPモード)
価格:2130万円/テスト車=2130万円
オプション装備:--
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
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