第749回:知らないままではもったいない! 最新のコンチネンタルタイヤの実力を試す
2023.06.19 エディターから一言 拡大 |
自動車大国ドイツに本拠を構え、多くの自動車メーカーに新車装着タイヤを納入しているコンチネンタルタイヤ。「コンフォートコンタクトCC7」「ウルトラコンタクトUC7」「スポーツコンタクト7」という、3つの最新タイヤの試乗を通し、今日における彼らの実力を確かめた。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
日本での知名度はいまひとつだけど……
当時は多くのブランド輸入権を保有していたことにより、単なる販売会社ではなく、日本屈指の欧米車インポーターとしてその名を知られていたヤナセ。この企業が総輸入販売元として事業をスタートさせたことで、1974年に日本におけるビジネスが始まったのがコンチネンタルタイヤである。
そうした複雑な導入の経緯に加え、やや限定的な販売網や決して派手とはいえない広告宣伝活動の展開ぶりなどから、日本におけるブランド知名度はトップランクとは言い難い。しかし、ドイツ発祥ですでに150年以上(!)にわたりさまざまな種類のタイヤをつくり続けてきたこのブランドのアイテムが、特に欧州の名だたる自動車メーカーから絶対的な信頼を得ていることは、新車への高い装着率からも明らかな事柄である。
そんなコンチネンタルタイヤの日本法人が、「日本における初めてのサマータイヤ試乗会」と銘打ったイベントを開催した。ドイツの大手電機メーカーから自動車電子部品部門を買収したことで、最近では世界屈指のメガサプライヤーとしても認知度が高まっているコンチネンタル。その祖業であるタイヤのなかから、「最新の世代」とうたわれる3つのアイテムを、短時間の限られた走行条件ではあるものの、軽く味見する機会を得た。
ベーシックな製品でも性能に妥協なし
まずは2023年3月に発売された最新アイテムであるコンフォートコンタクトCC7を試す。このタイヤは、下は13インチの70%偏平から、上は最大でも17インチの60%偏平……という設定サイズからも明らかなように、軽自動車への装着も想定した、このブランドのタイヤのなかでもベーシックなモデルという位置づけだ。価格面でのリーズナブルさも重視されている。
その名称からも想像できるように、開発に際して特に大きく力が注がれたのは、高い静粛性と滑らかな乗り心地の実現。それは、近い将来に確実視される電気自動車の増加までも見据えたものであるという。
「Continental」というブランド名が大きく2カ所に刻印され、雲をイメージした渦巻き模様も加えられるなど、凝ったサイドウォールのデザインはベーシックタイヤとしては意外に大胆に思える。加えて、緻密で繊細なトレッドパターン内には、前述の狙いどころに対するテクノロジーが満載だ。連続したリブ構造とサイピングが特徴の“ゼロショックパターン”が余計な振動を抑制し、静かでスムーズな乗り心地に寄与。新たに採用されたという、特別な柔軟剤が配合された“エバー・フレックス・コンパウンド”が、サイドウォールがたわみ始める前に振動を吸収することで、スムーズな乗り心地とともに優れたロングライフ性能も実現させるという。
さらに“ノイズ・ミューター”と呼ばれるヘルムホルツ式レゾネーターが、ミゾ内に採用されている点も見逃せないポイント。これは、多くの他社製品では主により高価なプレミアムモデルに対して用いられる技術であるからだ。
試乗では「トヨタ・カローラ セダン」に195/65R15サイズを装着して走らせたが、路面の凹凸に対する当たりの印象は必ずしもソフトとはいえない一方で、振動の減衰特性はなかなか素早いと実感。ロードノイズなども過大な印象はない。「ベーシックタイヤはノイズなどを犠牲にしている」と、そんな先入観を抱いている人にぜひ試してもらいたい一品だ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
欧州の自動車メーカーから信頼される理由を実感
「セーフティ・コンフォートタイヤ」というコンセプトのもとに開発が行われたと紹介されるのが、ウルトラコンタクトUC7というタイヤだ。2023年1月に、まずは16~18インチの全24サイズで発売された。「マーケットごとに求められる性能が違う」という点に着目したエリア別戦略製品の第1弾として日本に投入されたこのアイテムでは、優れた静粛性や快適性、ロングライフ性能に重きを置きながらも、安全性を最優先とし、特にウエット性能とハンドリング性能の大幅な向上に力が注がれたという。
一見すると、この種のタイヤとしては大きな特徴は持たないようにも思えるトレッドパターンは、実は左右で非対称のデザイン。独自のシリカとレジンを配合した“ダイヤモンド・コンパウンド”が、最適なレベルで運動エネルギーを熱に変換し、ウエット路面での制動距離を短縮するという。さらに、そのコンパウンド内のポリマーネットワークがノイズの発生を抑制。同時に“ノイズ・ブレーカー3.0”と名づけられたストレートグルーブ内の突出部が周波数を分散して、キャビンに伝わるノイズを抑制する。加えて、この突出部はコンチネンタルいわく“Xフローアクセラレーター”構造となっており、ベンチュリー効果を発揮してミゾ内の水の流れを加速。排水性を向上させ、より高いウエット性能を実現するという。
これらの技術に加え、トレッド面から縦ミゾへの排水を素早く行うべく、パターン中央には“アドバンスド・アクア・チャネル”も採用。高いウエット性能に絶対の自信を持つであろうこのタイヤは、215/55R17サイズを「トヨタ・カムリ」に装着し、散水路でチェックを行った。
散水された路面での80km/hからのフルブレーキングでは、最大1.1Gの減速度をマーク。制動距離も20mを割り込むなど、いずれも同条件で比較した同クラスのライバル品を確実に凌駕(りょうが)した。また同路面と、摩擦係数が0.3と圧雪路相当に管理された散水特殊路面でのダブルレーンチェンジ・テストでも、明確により高いグリップ力およびコントロール性を体感できたことが印象的だった。
ウエット性能を重視する傾向の強い欧州の自動車メーカーが、このブランドのアイテムを新車装着品に選ぶひとつの理由を垣間見たように思える結果だった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
スポーツタイヤでも耐候性・耐久性を犠牲にしない
最後に試したスポーツコンタクト7は、コンチネンタルのスポーツタイヤの新たなフラッグシップとして、2022年6月にまずは19インチから23インチの全30サイズで発売された。「あらゆる車両クラスにおいてコンチネンタル史上最高のドライビングプレジャーと高い走行安定性、優れた耐摩耗性、環境性能を提供」とうたわれるこのタイヤは、アジアパシフィック市場向けに開発されたコンフォートコンタクトCC7やウルトラコンタクトUC7とは異なり、グローバル市場向けの商品となる。
大型車と小型車など、クルマが変われば求められるソリューションは当然変わるもの。スポーツコンタクト7の、車両/重量クラスごとに素材やデザイン技術を使い分ける“テーラーメイド・コンストラクション”は、「実は新車装着用タイヤからのフィードバック」と紹介されるテクノロジーだ。
またドライ路面でのコーナリング時に重要となる、アウターショルダー部の接地面積を最大限に確保するため、そこに位置するグルーブ内に“インターロック・エレメント”を設置することでパターンの変形を抑制。加えて、トレッド内で最も効率よく排水が行われるポイントで接地面が終わる“アダプティブ・パターン”の採用により、このブランドが譲ることのできない高いウエット性能も確保するなど、スポーツコンタクト7にはフラッグシップ・スポーツタイヤにふさわしくコンチネンタルの先進テクノロジーが満載されている。
245/40R19サイズを装着した「日産スカイラインGT」(ハイブリッド)を用いての、比較的低速でのパイロンスラロームと高速周回路の走行に限定された今回のチェックは、正直言って、このようなスポーツタイヤのテストとしては物足りなさの残るものではあった。それでも、ステアリング操作に対する敏感にすぎない応答性や、コーナリングフォースのピークの高さについては、同様のチェックを行ったライバルタイヤに引けを取らないことを実感できた。
ちなみに、たとえスポーツタイヤといえども、ドライグリップ力の高さだけを求める自動車メーカーからの要求には相いれない部分もあるというのが、このブランドのタイヤ開発の姿勢だ。それは、従来品に対して「耐摩耗性」という項目を10%も伸ばしている性能チャート図の形状にも表れていた。
(文=河村康彦/写真=webCG/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
第875回:キモは氷上性能! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」を試す 2026.7.1 違いは氷の上で表れる! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX ICE-Pro(ウインターマックス アイスプロ)」に、冬の北海道で試乗。氷上性能を徹底的に追求したという新製品の、パフォーマンスの一端に触れた。
-
第874回:自動運転からワイパーまで! 自動車を支えるメガサプライヤー ボッシュのあくなき挑戦 2026.6.27 世界屈指のメガサプライヤー、ボッシュが開発中の新技術を披露! 市街地での高度な運転支援技術に、日本の方言にも対応した対話型AI、サーキット走行のノウハウを教えてくれるコーチング機能等々……興味深いその中身をリポートする。
-
第873回:ウエット路面に強み ミシュランの新タイヤ「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」を試す 2026.6.19 2026年1月29日に導入が発表されたミシュランの新製品「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」。これまでの特徴に加え、低燃費性能や耐摩耗性、ウエットグリップ性能のアップをうたう両モデルの走りを、クローズドコースで確かめた。
-
第872回:「フォレスター」がJNCAPで最高評価を獲得! “安全”に対するスバルの不断の取り組みに迫る 2026.6.6 相対速度100km/hの衝突後でも、普通にドアが開く!? 人気のSUV「スバル・フォレスター」が、日本の自動車アセスメントで最高評価を獲得した。安全なクルマづくりを第一とするスバルの取り組みを、群馬製作所で行われた衝突試験デモの様子とともにリポートする。
-
第871回:今年もグリーンヘルは熱かった! ニュルブルクリンク24時間レース観戦記 2026.5.27 “世界一過酷な草レース”として知られ、今年も波乱が巻き起こったニュルブルクリンク24時間レース。F1王者のフェルスタッペンも参戦するとあって、大いに盛り上がったその様子を、世界を飛び回るモータースポーツカメラマンが臨場感満点でリポートする。
-
NEW
第293回: スイフトが主役の映画? いや、監督がスイフトなんです! 『藁にもすがる獣たち』
2026.9.24読んでますカー、観てますカー曽根圭介の小説を原作にした2度目の映画化。韓国版では「ヒョンデ・ソナタ」が殺人カーだったが、今回は「トヨタ86」に。もっと活躍するのはチャンピオンイエローがまぶしい“スイスポ”。スズキファン必見のアクションエンターテインメント! -
NEW
マツダCX-5 L(前編)
2026.9.24あの多田哲哉の自動車放談マツダの基幹モデル「CX-5」がフルモデルチェンジ。世の注目を集める新型は、期待に応えられる出来なのか? 元トヨタの車両開発者である多田哲哉さんが、ワインディングロードで試乗して確かめた。 -
NEW
トヨタもスバルもマツダも いまなぜ2.5リッターエンジンなのか?
2026.9.24デイリーコラムトヨタもスバル、マツダも最新のパワートレインに2.5リッター直4エンジンを採用している。ユーザー感覚では「2リッターを超えると自動車税が高くなるのに」と、疑問に思えるが、そこにはメーカーもユーザーも納得の理由がある? -
新型「パジェロ」はこれから生産するのに!? 国産自動車メーカーのタイ離れが進んでいる深刻な理由
2026.9.23デイリーコラム国内にも多くのモデルが導入されている国内ブランドのタイ生産車だが、近い将来は事情が大きく変わっている可能性がある。というのも、各社がタイに注力していたのは少し前の話で、実はその生産規模は少しずつ縮小傾向にあるのだ。その背景を解説する。 -
第129回:日本のカーデザインに足りないもの・欠けているもの(後編) ―プロポーションの進化と「駄作」の消失に見る、日本車の現在地―
2026.9.23カーデザイン曼荼羅今や欧州と立場が逆転? 世界的に見ても高い水準にあるという日本のカーデザインだが、そこには本当に足りないものはないのか? 今後、さらなる発展を望むうえで必要なものとはなにか? カーデザインの識者と、日本の自動車デザインの“今”を考えた。 -
日産ムラーノ プラチナム(4WD/9AT)【試乗記】
2026.9.23試乗記ドナルド・トランプ米大統領の圧力のおかげで(?)新しい「日産ムラーノ」の国内導入が決まった。日本を留守にしていた約11年の間にどう変わったのか、まさに「朋有り、遠方より来たる」の気分だ。本格導入よりもひと足早く北米仕様車の仕上がりを試した。


















