気づけば中古バイクが高騰中! その原因はどこにある?
2024.05.27 デイリーコラム不人気車までもが高い時代
「ヤマハ・セロー250」、80万円――
「ホンダCB400スーパーフォア」、120万円――
……たっけー!
中古バイク好きには息苦しい不遇の時代が今だと、前もって言い切ろう。なんの話かって? バイクの中古車相場の話である。
10年前なら「このバイクがこんな値段で買えちゃうの!?」というホットな興奮のタネがそこかしこに落ちていたものの、2024年の現在にあっては、中古車サイトはおろかオークションサイトやその亜種を見渡しても「そうなっちゃうのね……」という平熱プライスばかりが並んでいて……全然ビンビンになれないのだ。
もっと具体的に言おう。昔から人気の安定している「カワサキZ1」や「ホンダCB750Four」、「スズキGSX1100Sカタナ」といった名車/旧車の価格が引き続き高止まりなのは当然として、対極にあるような「そんなのもあったな~」的マイナー車までもが、それらに引っ張られるようにそこそこの高値をつけているのである。つまり、おいしくない。不人気車が高いなんて、どういうこと?
コロナ禍のタイミングで生産が追いつかず、そんな市場原理のままプレミア価格になってしまったホンダの「レブル250」や「GB350」あたりはすっかり落ち着いたものの、廃番になってそれほど時間のたっていない「ヤマハSR400」やセロー250は「え? 80万円? 90万円? もうムリかも!」という高値の、高嶺(たかね)の花になってしまっている。うまいこと言ったね。
ここにも円安の影響が!
ちなみに、2023年の自工会のリポート「二輪車市場動向調査」では、中古車マーケットについての記述はほとんど見当たらない。しかし、こと保有台数の推移に関しては「緩やかな減少傾向が続いていたが2022年度は微増となっている」と記されていた。新車・中古車を問わず、国内のユーザーが一気にバイク購入に走り、そのことが高値を呼んでいるという事実は取りあえずなさそうだ。では価格高騰の原因はどこにあるのか?
全国にユーズドバイクの販売網を展開する「バイク館」店舗運営部の新井雄介さんに内情をうかがった。
「中古二輪については、現場にいる私の目から見てもビックリするくらいのハイプライスが近年常態化しています。新車に限っていえば、販売価格が上昇したことや完全に解消し切れていない供給不足も要因としてあるでしょう。でもそれ以上に顕著なのは、海外からの買い付け需要の増加です。業販オークションを中心にかなりの台数が海外に流れている現状こそが、中古車の平均価格を押し上げている最大の理由だと私は思います」
「もちろんその背景として、長期にわたる円安が動向を後押ししていると考えて間違いありません。われわれにとってはオークション相場こそが店頭プライスを決定するための最も重要な基準。お客さまからの買取価格もその相場に倣っています」
なるほど。大きな流れとしては、かつて「日産スカイラインGT-R」や「トヨタMR2」の中古車が、海外からの引き合いによって国内市場から一気にいなくなったことと、それほど変わらないのかもしれない。とはいえ、あの時は中古車相場の全体を上昇させるほどのムーブメントではなかった。
「その希少車こそが欲しい!」という好事家の熱い思いがモチベーションになっているのではなく、近年の爆買いに「円安でどれもこれも安いからおいしいぞ」というビジネスライクな側面があることを知ってしまうと、いささか鼻白む。く、悔しいぞ。俺のカワイコちゃんたちを!
ちなみにどのあたりの車種が海外で人気なのかを新井さんに尋ねたところ、「満遍なくですが」と前置きしつつも、初期型の「ヤマハMT-07」やBMWの歴代「GS」シリーズ、ちょっと変わったところでは「ホンダADV150」の人気が特に高いですね、とのことだった。
こうなりゃ「借りる」という手もある
新車セールスの現場の声も聞きたくてコメントをいただいたのは、「ホンダドリーム戸田美女木」の滝本正吾店長だ。
「コロナ禍のさなかに起きた新車のタマ不足については、ライダーの間で話題になることも多かったですね。供給がまったく追いついていなかったあのような事態も収束し、現在はだいぶ落ち着きました。でも諸事情あって、(バックオーダーが)完全に解消した訳ではありません」
一方で他のドリーム店と同様に、私の店舗でも行っているレンタルバイク事業「HondaGO BIKE RENTAL」はここ数年来ずっと好調を維持しています。ユーザーは免許取り立てのビギナーさんからバイク歴30年、40年以上のベテランライダーまで、年齢層や男女を問わず実に幅広い。どの新車を買うべきかを事前にしっかりと見極めたい堅実な方から、ライディングスキルをさびつかせたくないホビーライダー、さらに週末利用のツーリングライダーまでさまざまな方に利用いただいています。アップデートされたばかりの最新機能を体感してみたいというメカニズム派(?)の方も意外に多いですね(笑)」
免許は取ったぜ、次はバイクだ! という勢いだけで愛車を手に入れてしまう昭和の習慣は過去の話。駐輪スペースを確保する難しさや可処分所得の減少など、いまどきバイクを購入・維持するのは簡単ではないだろう。「それでもバイクに乗りたい!」というライダーが次手として選ぶレンタルバイク。これはこれで大アリだ。
当分は高止まり
大きな要因ではないかもしれないが、価格高騰の理由はほかにもある。
まず、バイクを購入しようと思っているユーザーの意識の変化。以前は、良くも悪くもさまざまなコンディションの中古車がショップには並んでいたが、いまの雰囲気としては「価格安め、程度それなり」という廉価物件の存在が許されにくくなっている(ショップに対する評価がSNSによって可視化されやすいのも一因)。
それらの“そこそこ”なバイクのコンディションを一定の水準まで引き上げるためには整備コストがかかるし、必要となる補修パーツの価格も年を追って上昇の一途をたどっている。加えて昨今の働き方改革によって人件費は上昇傾向にあり、そのことが結果的にプライスにも反映されてしまう。これらの理由で、薄利多売という旧来のビジネスモデルは成立しにくい、というのが実情だろう。
結論。いろいろあって、バイクの中古車は当分高そうである。でもライダーのみなさん。暗くなる必要なんて全然ない。バイクそのものも、バイク用品も堅調に売れているし、なにより街なかで見かけるライダーの姿は少しずつ増えている。“バイ活”の機運もいよいよ高まるなど、バイクを取り巻く環境は総じて、上向いているのだ。
たしかに中古車は以前に比べて高値だけれど、市井のライダーが闘うのに、円安はあまりにも大きすぎる相手。いかんともしがたい。そのことに一喜一憂するくらいなら、まずはあらゆる工夫をこらして自分だけのバイクライフを組み立てようぜ! ……と強く自分に言い聞かせる筆者なのであった。
(文=宮崎正行/写真=ヤマハ発動機、カワサキモータースジャパン、バイク館イエローハット、ホンダドリーム戸田美女木、向後一宏/編集=関 顕也)
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宮崎 正行
1971年生まれのライター/エディター。『MOTO NAVI』『NAVI CARS』『BICYCLE NAVI』編集部を経てフリーランスに。いろんな国のいろんな娘とお付き合いしたくて2〜3年に1回のペースでクルマを乗り換えるも、バイクはなぜかずーっと同じ空冷4発ナナハンと単気筒250に乗り続ける。本音を言えば雑誌は原稿を書くよりも編集する方が好き。あとシングルスピードの自転車とスティールパンと大盛りが好き。
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