第790回:【ボルボEX30買いました】何回充電したら東京~仙台を往復できる?
2024.06.18 エディターから一言東北道に新たなオアシス
先日、東京からは350kmほどの場所にある宮城県の「スポーツランドSUGO」に行く機会がありました。新幹線とレンタカーを使うのが早くて楽なのはわかっていますが、長距離ドライブが好きな私は、いつもクルマでの移動を選んでしまいます。ちなみに、国内にあるサーキットなら、三重県の「鈴鹿サーキット」はほぼクルマ、「岡山国際サーキット」や大分の「オートポリス」も時間が許せば自走し、そのたびにあきれられています。
それはさておき、スポーツランドSUGOへのお供はもちろん「EX30」です。カタログを見ると一充電走行距離(WLTCモード)は560kmですが、この日、出発時のSOC(バッテリー残量)は82%、走行可能距離は275kmを示していました。ナビゲーションシステムでスポーツランドSUGOを目的地に選ぶと、到着時の予想SOCは-8%と計算され、那須塩原付近で急速充電することを勧めてきました。
これまで東北道の下りは出力50kW以下の急速充電器ばかりで、どこに立ち寄って充電するかが悩みどころでした。それが2024年の2月、福島県の安達太良サービスエリアに、1基で2台同時に充電可能な90kW充電器が2基設置され、これを利用すれば仙台までワンストップで行けそうです。そこで、経由地をナビが薦める那須塩原から安達太良サービスエリアに変更すると、SOC16%でたどり着くという予想。早速このプランでドライブを始めてみることにしました。
最寄りのランプから首都高に乗り、しばらく走ると東北道に入りました。私の場合、高速道路はアダプティブクルーズコントロール(ACC)任せで、設定速度は制限速度か100km/hの低いほうにしています。最近は110~120km/h制限の区間もありますが、電気自動車(EV)は速度を上げると目に見えて電費が悪化し、そのぶん航続距離が短くなるので、100km/hを上限にしているのです。
EX30では、走行中にステアリングコラム右にあるシフトレバーを一番下まで下げると「パイロットアシスト」がオンになります。この状態ではACCとステアリングアシストが有効です。EX30にはいわゆる“ハンズオフ”機能はなく、ステアリングホイールを握っているとステアリングアシストの細かい介入が気になることがあるため、私はステアリングアシストを無効にしています。ステアリングホイールの左スポークにあるスイッチで簡単にオン/オフできるので助かります。
ACCの動きにも気になる点があります。緩いカーブなどで隣のレーンを少し離れて先行するクルマに反応し、不必要な場面で減速することがよくあります。ステアリングアシストのマナーとともに、今後、車両のソフトウエアアップデートで改善されることを期待しています。
普通充電器があるホテルを予約
そうこうしているうちに、安達太良サービスエリアに到着。ここまで約245kmを走行し、電費は19.0kWh/100km(=5.3km/kWh)。SOCは10%と予想を下回りましたが、“電欠”までにはまだまだ余裕がありました。安達太良サービスエリアの充電スタンドは屋根があり、雨や雪の日でも快適に使えるのがうれしいところ。スペースも広く、高速道路でこれまで利用した充電スタンドのなかではベストといえるつくりです。
早速充電を始めると、単独で使用できたこともあってしばらくは80kW強の出力でバッテリーが満たされていきます。しかし、“ブースト”と呼ばれる高出力が続くのは最初の15分だけで、その後は50kW付近まで出力が低下します。それでも30分の充電で30kWh強、バッテリー容量の約45%を追加することができるのが助かります。ちなみにこのときは、他に充電待ちをしている人がいなかったので、追加で充電し、計43分で51.3kWh、SOCは85%まで復活しました。
充電直後の走行可能距離は354kmで、約100km先のスポーツランドSUGOには余裕の距離。その後、名取市のホテルに移動した時点でSOCは51%で、まずは往路のワンストップ作戦が成功しました。同じ道をたどれば帰路もワンストップで済みそうですが、途中で想定外の事態が発生しないともかぎりませんので、帰路につく前に念のため充電をしておくことに。こうなることを見越して、普通充電器があるビジネスホテルを予約しておきました。しかもここは一般的な3kWではなく6kWの普通充電器が備わるのが頼もしく、実際、約5時間で28.9kWhの電力を追加し、SOCは89%まで回復しました。
そして翌日、スポーツランドSUGOでの取材を終えて帰路につきますが、あいにく東北道の上りで渋滞が発生していたため、急きょ常磐道を通るルートに変更。常磐道では、茨城県内の友部サービスエリアに6台同時に充電可能な“マルチコネクター充電器”が設置されているので、まずはここを経由地に出発します。友部までは約265kmの道のりですが、前の晩にホテルで充電したおかげで、到着時の予想SOCは22%。備えあれば憂いなしです。
実際に到着したときのSOCは14%で、電費は18.2kWh/100km(=5.5km/kWh)でした。幸いこのときも他に充電しているEVはおらず、最初の15分は80kW超えの高出力で充電することができました。30分の充電終了後、さらに6分追加の36分の充電で44.7kWhを獲得してSOCは80%に。ここから都内の自宅までは90kmほどで、帰路もワンストップ成功! 結局、途中3回の充電で約700kmを走りました。今回は大事を取って1回増えましたが、その気になれば2回の充電で乗り切れたかと思うと、EX30の電費と充電性能の高さには感心するばかりです。
(文と写真=生方 聡/編集=藤沢 勝)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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