マツダCX-80 XDエクスクルーシブモード 6人乗り(4WD/8AT)/CX-80 XDハイブリッド プレミアムモダン(4WD/8AT)
不動の4番 2024.10.10 試乗記 マツダの新たなフラッグシップSUV「CX-80」が、いよいよ公道を走りだす。成熟が進んだ「ラージプラットフォーム」がかなえる走りと、3列シートのプレミアムSUVとしての資質の高さを、徳島~神戸で行われた試乗会よりリポートする。期待と不安がせめぎ合う
ついにマツダCX-80に試乗する日がやってきた。「ついに」とリキが入るのは、撮影会で見たこのクルマは、内外装ともに気合十分でつくり込まれており、「こりゃあ乗ってもイイんじゃないか」と、期待がふくらんだからだ。
ただし試乗にあたっては、一抹の不安があったことを告白しなければならない。今からおよそ2年前、2022年6月に登場した弟分の「マツダCX-60」が、物議を醸したからだ。いや、CX-80より全長が250mm短いからCX-60を弟分としたけれど、早く生まれたわけだから兄貴分なのか?
そんなことはどうでもいいとして、このマツダCX-60は、コーナーでツボにはまった時には快感が脳天を直撃するような気持ちのいいコーナリングを披露するいっぽうで、ちょっとした路面の凹凸でも脳天を直撃するようなハーシュネスを伝えた。
言ってみれば広島からやってきたゴーカートフィーリングで、その得手と不得手の落差の大きさは、漫画『ドカベン』に登場する“花は桜木、男は岩鬼”の岩鬼正美を思わせた。とんでもない悪球をホームランにするクセに、ド真ん中の絶好球を空振りする。漫画だったらキャラが立っていておもしろいけれど、400万円、500万円の買い物なんだからもうちょっと洗練されていてしかるべきではないか、というのが物議を醸した理由だ。
というわけで、期待と不安を胸に、試乗を開始する。マツダCX-80には3.3リッター直列6気筒ディーゼルターボ、この直6ディーゼルを軸としたマイルドハイブリッド、そして2.5リッター直列4気筒ガソリンエンジンを軸としたプラグインハイブリッドの、3つのパワートレインが用意される。このうち、今回試乗できたのは直6ディーゼルターボとマイルドハイブリッドの2種類。まず試したのは、素のディーゼルだ。
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快適でありながら、運転している実感が持てる
いかにもFRレイアウトらしいノーズの長さとヘビーデューティーなSUV風味が合体したエクステリアデザインは、あらためて見ても個性的。フォーマルなたたずまいでありながら、アクティブなライフスタイルも想像させる、秀逸なデザインだ。試乗車のまとう「メルティングカッパーメタリック」という新色も日差しを受けて輝いている。
でも、このクルマがカッコいいことはすでに知っている。問題は乗り心地だ。マツダの回し者ではないし、1円たりともマツダからもらっていないけれど、20代の頃に「ロードスター(NA)」にクルマの楽しさを教えてもらった者として、マツダに感謝はしている。祈るような気持ちでステアリングホイールを握り、海辺のワインディングロードにCX-80を連れ出した。
するとどうでしょう。ところどころに補修の跡が残り、洗濯板状のうねりも放置された、あまりコンディションがよいとはいえない海沿いの道を、マツダCX-80はスマートに駆け抜けた。
乗り心地がいいといっても、路面の不整をなかったことにするボヨヨン系やふわふわ系の乗り心地のよさではない。凹凸をしっかりとトレースして、「ここに路面コンディションの悪い箇所がありますよ」とドライバーに伝えつつ、そこを乗り越える瞬間に発生する衝撃の角を丸めてくれるタイプの乗り心地のよさだ。
だから、運転しているという実感はありながら、快適な乗り心地に身を委ねることができる。ファン・トゥ・ドライブと快適性が、いいあんばいでバランスしている。
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上級モデルならではの静粛性へのこだわり
高速道路に入っても、乗り心地に対する好印象は変わらない。むしろ速度を上げるにつれてフラットさが増すから、さらに好ましく思えてくる。
ここで運転を交代して、後席の乗り心地を試す。率直に言って、前席に比べるとやや路面からの突き上げがキツくなるから、前席が特等席ではあるのだけれど、その差は小さい。2列目シートにはリクライニングやスライド機構が備わることもあって、快適に過ごすことができる。
感心したのは静粛性の高さで、後輪のホイールハウスに近いはずの2列目シートに腰掛けても、声を高めることなく前席の人と会話ができる。確認したところ、インストゥルメントパネルの奥に位置するインシュレーターやリアホイールハウスの遮音材を増し、やはり遮音材の役割を果たすフロアカーペットを厚くし、トランスミッションもノイズを抑えるべく制御を変えるなど、静粛性の確保には万全を期したとのことだった。ちなみに、これだとエンジンの音が聞こえなくて物足りなくなるので、気持ちのいい周波数では音を盛っているとのこと。
3列目シートに座ったホッタ編集部員からは、スペース的には身長170cmくらいの人なら問題ナシとの報告を受けた。話は飛ぶけれど、CX-80の先代にあたる「CX-8」は隠れた名車で、街でこのクルマを見かけると、「いいのに乗られていますね」と声をかける……とアヤシイ人になってしまうので、心の中でひそかにつぶやいていた。CX-80とCX-8の違いはいくつもあるけれど、3列目のスペースは圧倒的に違う。3列目の頭上空間は、CX-80のほうが30mmも余裕があることを記しておきたい。
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エンジニアの努力のたまもの
定評あるマツダの「SKYACTIV-D 3.3」は上出来で、素のディーゼルでもタウンスピードから高速道路まで滑らかに、力強く走ってくれる。けれども、マイルドハイブリッドに乗り換えると違いは瞭然で、モーターがアシストしてくれる発進加速から明らかにスムーズで静か、つまり高級だ。高速道路の合流などではモーターとエンジンのコラボで、胸のすくような加速を見せてくれる。
今回はメーカー主催の試乗会だったので、厳密に燃費を計測することはできなかったのだが、燃費を気にせずドライブする限り、マイルドハイブリッドは環境技術というより、上質で楽しいドライブフィールを提供する技術という印象を受けた。
山あいのワインディングロードでは、どちらのパワートレインも気持ちよく曲がってくれる。ノーズが素直にインを向き、シームレスにロールを深めながら、きれいなフォームでコーナーをクリアする。ゴーカートフィーリングはなく、フィギュアスケートフィーリングだ。
この身のこなしと乗り心地のよさを両立したことについてエンジニアに話を聞くと、やはり開発陣もマツダCX-60での評価を気にしていたようで、通常なら日本とヨーロッパで同じ足まわりのセッティングにするところを、CX-80は日欧それぞれでチューニングをつくり分けたのだという。具体的には、日本仕様はリアのスプリングレートを下げて乗り心地の改善を図りつつ、ダンパーの減衰力を上げてハンドリングを担保したそうだ。
ほかにも、CX-80ではリアのスタビライザーを廃止したり、ややアンダーステア方向の味つけにしたりするなど、快適性を確保するための変更がなされている。おおらかな乗り心地と軽快なドライブフィールを両立するという難題は、こうしたエンジニアの努力によって解決したのだ。
参考までに、先代のマツダCX-8のサスペンション形式は、フロントがストラットでリアがマルチリンク。CX-60/CX-80といった新しいラージ商品群は、フロントがダブルウィッシュボーンでリアがマルチリンク。こうした変化にCX-60はややついていけなかったけれど、時間的に余裕があったCX-80はしっかり対応したということだろう。CX-80に施された改善策は、やがて兄弟車のCX-60にも水平展開されるはずだ。
CX-60を岩鬼正美のようだと書いたけれど、CX-80はまるで違った。気はやさしくて力持ちの山田太郎だ。山田太郎にしては、メルティングカッパーメタリックのボディーカラーや「プレミアムモダン」の内装はカッコよすぎるかもしれない。けれど、ヨーロッパで列強と戦うわけだから、これくらいのおしゃれは必要だろう。
(文=サトータケシ/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
マツダCX-80 XDエクスクルーシブモード 6人乗り
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4990×1890×1710mm
ホイールベース:3120mm
車重:2070kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.3リッター直6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:231PS(170kW)/4000-4200rpm
最大トルク:500N・m(51.0kgf・m)/1500-3000rpm
タイヤ:(前)235/50R20 104W/(後)235/50R20 104W(トーヨー・プロクセス スポーツ)
燃費:16.7km/リッター(WLTCモード)
価格:545万0500円/テスト車=557万1500円
オプション装備:電動パノラマサンルーフ<チルトアップ機構付き>(12万1000円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:5519km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
マツダCX-80 XDハイブリッド プレミアムモダン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4990×1890×1710mm
ホイールベース:3120mm
車重:2120kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.3リッター直6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:254PS(187kW)/3750rpm
エンジン最大トルク:550N・m(56.1kgf・m)/1500-2400rpm
モーター最高出力:16.3PS(12kW)/900rpm
モーター最大トルク:153N・m(15.6kgf・m)/200rpm
タイヤ:(前)235/50R20 104W XL/(後)235/50R20 104W XL(グッドイヤー・エフィシェントグリップ パフォーマンスSUV)
燃費:19.0km/リッター(WLTCモード)
価格:632万5000円/テスト車=640万2000円
オプション装備:ボディーカラー<アーティザンレッドプレミアムメタリック>(7万7000円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:2825km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
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サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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