第812回:オールシーズンタイヤ「グッドイヤー・ベクター4シーズンズGEN-3」で雪国を目指す
2024.11.29 エディターから一言 拡大 |
ドライやウエット路面はもちろんのこと、冬の雪道までを一本でカバーするオールシーズンタイヤ。いまや多くのブランドがオールシーズンタイヤをラインナップするなかで、そのパイオニアともいえる存在がグッドイヤーの「ベクター4シーズンズ」である。本格的なウインターシーズンの到来を前に、進化した最新モデル「GEN-3」の特徴と実際に雪道を走った印象をあらためて紹介する。
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オールシーズンタイヤブームの火付け役
いつまでも暑い日が続き、ひょっとして夏がこのまま終わらないのではと思っていると、紅葉を楽しむ間もなく一気に冬の足音が大きくなってきた。温暖化が進み、季節の境目がわかりづらくなってきたといわれる現代だからこそ、安心で快適なカーライフを送るためにもタイヤ選びは慎重に行いたい。
そうした気候や環境の変化もあって、近年注目されているのがオールシーズンタイヤである。サマータイヤと同等のドライ/ウエット性能を有しながら、冬の雪道も走行可能なタイヤとして知られ、年々そのシェアは拡大。多くのブランドから次々と新製品が登場するなかで、オールシーズンタイヤブームの火付け役として注目されているのがグッドイヤーの「ベクター4シーズンズ」だ。
最新モデルはGEN-3のネーミングが示すとおり、同シリーズの第3世代にあたる。今回はそのベクター4シーズンズGEN-3を「スバル・レヴォーグ」に履かせ、冬の越後路に向かいながらドライ路面と雪道での走りをリポートする。
前述のとおり、オールシーズンタイヤにおける最大のメリットは、季節や天候を問わず、その一本だけで多くの道を走れるということにある。すなわち、季節に合わせたタイヤ交換が必要ないので、結果、クルマの維持費が抑えられ、もちろん交換したタイヤの保管場所に頭を悩ませることもない。面倒なタイヤ交換作業から解放され、金銭的に助かるだけでなく、突然の雪でも慌てず走行できるので精神衛生的にもありがたい。
オールシーズンタイヤとは気づかれない
北米では早くから新車装着用タイヤのほとんどがオールシーズンタイヤという市場であり、その傾向は近年になって欧州にも波及。ウインターシーズンに冬用タイヤの使用が義務づけられているドイツをはじめとする欧州におけるそのシェアは、2023年に20%を超えたという。
いっぽうわが日本はというと、年々10%程度の成長を続け、今後もこの傾向は続くとみられている。新車装着用タイヤでは、クロスオーバーモデルやSUVの人気が、オールシーズンタイヤのシェア拡大に無縁ではないだろう。いずれにせよオールシーズンタイヤが一部のマニア向けの特別なものから、タイヤ交換の際に検討される選択肢のひとつになるのには、さほど時間がかからないと想像できる。
そうしたいまに続くオールシーズンタイヤ人気を支えてきたパイオニアが、前述のグッドイヤー・ベクター4シーズンズである。初代モデルの初上陸は2009年で、2016年には第2世代の「ベクター4シーズンズ ハイブリッド」に進化。最新モデルのGEN-3は2022年に登場した。
今回、越後路を目指したスバル・レヴォーグに装着したのは、純正タイヤと同サイズとなる225/45R18のベクター4シーズンズGEN-3である。オールシーズンタイヤを装着していると意識させないほどの乗り心地と静粛性、つまりサマータイヤとの違いを感じさせないまま、レヴォーグは順調にノーズを北へと進めた。
かつて日本で発売されたばかりの初代ベクター4シーズンズを愛車に履かせ数シーズン過ごした経験を踏まえれば、その快適性の進化には感心するばかりである。初代モデルは高速走行時のロードノイズが顕著で、しかも距離を重ねるにつれそのボリュームが大きくなっていったことを思い出した。いっぽう今回のGEN-3では、何も聞かされていなかったら、オールシーズンタイヤという少し特殊な性格のタイヤを履いていると同乗者は気づかないかもしれない。
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しっかりとした足取りには高級感すら漂う
関越道にアプローチすると雨が降り始めた。完全なウエット路面になるまでさほど時間はかからなかったが、車両の直進安定性は損なわれていない。ドライからウエットに変わっても、緊張することなくステアリングを握り続けられたのは、GEN-3の転がり抵抗性能が「A」、ウエットグリップ性能が「a」に該当する性能(グッドイヤーの社内試験値)を持ち合わせているからだろうか。
日本の物流を支える大型トラックが刻んだであろう深めのわだちをトレースしても、ハンドルをとられるようなことはなく、レヴォーグは関越トンネルを過ぎ順調に北へと進んだ。太く深く力強くV字形に伸びるグルーブが特徴の「Vシェイプドトレッド」と呼ばれるパターンが、排水性に大きく寄与しているのだろう。溝は底にいくほど幅が広くなる新しい設計だが、見慣れたベクター4シーズンズのトレッドパターンデザインが継承されている。
その溝は、よくよく見るとかなり深い。溝が深く刻まれたトレッドパターンでは、ついブロック剛性不足からくる腰くだけ感を伴った走りを想像してしまうが、「3Dワッフルブレード」とネーミングされたワッフル状の凸凹がブロック間を支え合い、より路面に密着。グリップ力と路面とのコンタクト感を高めている。そのしっかりとした足取りには、うまく言い表せないが、高級感すら漂う。「ちょっと高いタイヤを装着したあの感じ」とでも言えば、多少はわかりやすいだろうか。
気になるウエット路面での制動性能は、以前行われた報道関係者向けの試走イベントで確認済み。ウエット路面における70km/hからの制動距離比較では、従来型とGEN-3で1m程度の差がついた。もちろん1m短く止まれたのはGEN-3である。そうした性能向上による製品の進化が、ウエット路面での安心感につながるのだ。
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安心・安全でコスパが高い
夜半過ぎから雪が降り始め、翌朝の越後湯沢は、あたり一面が銀世界の雪国となった。街なかでは消雪パイプが吐き出す水が雪を溶かす。路面は溶けた雪によって水たまりになったところと、溶け残った雪がまだらになるいかにも走りづらそうなコンディションが続く。しかし少し街を外れると、こちらはタイヤの跡がわだちとなって残るような圧雪路となる。
そうした場面場面で表情が変わり一筋縄ではいかない雪国の路面を、GEN-3を装着したレヴォーグは、粛々と進んだ。もちろんそのペースは、地元のスタッドレスタイヤを装着しているであろう車両と変わらないものである。車両の流れに乗って道を行くレヴォーグがオールシーズンタイヤ装着車だとは、誰も思わなかったに違いない。停止状態からの発進ではじわりとアクセルを踏み、走りだしてからは、前を行く2台ほど先の車両の動きを見つつブレーキング。慌てず急のつく操作をしないなど、低μ路での運転セオリーを守れば、地元の車両に遅れることなく走行できる。
さすがにアイスバーンでのグリップ力を比べればスタッドレスタイヤと同等とはいかないだろうが、ハンドルを通じて「あ、このままのスピードでは外にはらむ」といったような状況判断が瞬時にできる。GEN-3はその動きが自然に顕現化し、同時に車両の挙動がつかみやすいので、十分コントロールできるという印象を得た。もちろん、シビアなコンディションには十分注意のうえである。
ゲリラ豪雨や真夏の暑さ、急な積雪にもオールマイティーに対応できるのがオールシーズンタイヤのアドバンテージ。降雪地帯と呼ばれる地域以外では、その名のとおりタイヤの履き替え要らずで通年使える。季節の移り変わりをさほど気にすることなくいつものクルマでいつものように多くの場所に行けるのなら、これほど安心・安全でコスパの高いタイヤはないと思う。ただし、過信だけはくれぐれも禁物である。
(文=櫻井健一/写真=佐藤靖彦/編集=櫻井健一)
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櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
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