メルセデス・ベンツC200ステーションワゴン スポーツ(FR/9AT)
無償の愛 2025.07.18 試乗記 「メルセデス・ベンツCクラス ステーションワゴン」に新グレードの「スポーツ」が登場。スポーツサスを装着するなどした、その名のとおりのスポーティーなキャラクターだ。1.5リッターガソリンターボモデルの仕上がりをリポートする。誰がワゴンを買っているのか
2025年春よりラインナップに加わった、メルセデス・ベンツC200ステーションワゴン スポーツの試乗を開始するのと同時に、「一体どんな方がこのクルマを買うのだろう?」ということに思いをはせる。というのも少し前に試乗した、Cクラスと同じ基本骨格を用いる「メルセデス・ベンツGLC」がめっちゃよくできていたからだ。
ふた昔前なら、そりゃあSUVは荷物も載るし悪路にも強いけれど、走りのよさや快適性を重んじるならステーションワゴンよね、という意見が主流だったし、実際にそうだった。ところがどうでしょう。自動車メーカーががんばり、タイヤメーカーもがんばり、少なくともモノコック構造のSUVに関しては走行性能も快適性も、ステーションワゴンにひけをとらなくなった。SUVのほうが重いのと空気抵抗がデカいことによって燃費には差があるけれど、それでも天と地ほどは変わらない。
記憶の中のGLCと、いま実際にステアリングホイールを握っているCクラスのステーションワゴンを比べても、完成度という意味では同じ水準にある。むしろGLCのほうが背の高いぶん、頭上空間に余裕があるし、かさばる荷物も積むことができる。ダメ押しに、着座位置が高いことによる見晴らしのよさは、特に都市部の渋滞時のストレス軽減につながる。
そんなこんなで国内の乗用車販売におけるSUVの割合が30%を超えていて、冒頭の「一体どんな方がこのクルマを買うのだろうか」というギモンに行き着く。ちょこっとだけGLCのほうが値段は高いけれど、どうせ少なくない額の支払いが待っているのだったら、CクラスのステーションワゴンよりGLCを選ぶほうが理にかなっているのではないでしょうか。
一挙に4モデルを新規導入
誰がこのクルマを買うのかを考える前に、新たに追加されたこの「スポーツ」というグレードを理解しておきたい。
2025年春に、メルセデス・ベンツの「C200」と「C220d」にスポーツと「ラグジュアリー」というモデルが加わった。今回試乗したスポーツに関していうと、人気の「AMGラインパッケージ」が標準で備わり、したがって「AMGラインエクステリア」や「スターパターングリル」が装着される。さらには、外観にブラックのアクセントをあしらう「ナイトパッケージ」も加わり、精悍(せいかん)なルックスになっている。
外観だけでなくナッパレザーのスポーツステアリングやスポーツシートでインテリアもスポーティーな装いとなり、カッコだけでなくスポーツサスペンションによって足まわりも引き締められている。
ラグジュアリーに関しては、快適装備やこだわりのインテリアトリムを標準装備とすることで、より上質なモデルに仕上げている。
で、ここからがポイントで、スポーツとラグジュアリーに標準装備される品々をオプションで発注するよりも、お求めやすい価格設定になっているという。つまりスポーツ/ラグジュアリー仕様であると同時にお値打ち仕様でもあって、新車価格の高騰が止まらないなかでの販売促進施策であるのだ。
ちなみにスポーツ/ラグジュアリーともに、セダンにもステーションワゴンにも設定されるから、セダンとステーションワゴン、そしてガソリンエンジンとディーゼルエンジンの計4つのグレードが新たにラインナップに加わったことになる。
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段差乗り越えで見せるスポーツらしさ
最高出力204PSを発生する1.5リッターの直列4気筒ターボエンジンは、知らされなければ2リッターぐらいあるんじゃないかと錯覚するほど力強い。エンジンとトランスミッションの間に位置する「ISG」(スターターと発電機の役割も兼ねるモーター)が駆動に寄与していることを体感はできないけれど、滑らかな発進加速の何%かがISGの手柄であることは間違いない。
ISGの手柄ということだとはっきり体感できるのは、アイドリングストップ状態からの再始動の滑らかさで、エンジンは「シュン」と目覚める。
パワートレインに関しては文句のつけようがないけれど、気になったのは乗り心地だ。路面コンディションのよい場所で問題がないのは当然であるとして、少しでも荒れた路面になると、少なからぬハーシュネス(路面からの突き上げ)を感じるし、その収束にも時間がかかる。特に首都高速のつなぎ目のように、とがった段差が苦手だと感じる。
何度も引き合いに出して申し訳ないけれど、GLCのほうがはるかに快適で、路面からの衝撃をハエ取り紙のようにからめとって、気がつかないうちにうやむやにしてしまうようなすてきなライドフィールだった。
あるいは、スポーツに標準装備のスポーツサスペンションが肌に合わないのかもしれないけれど、標準サスと直接比較したわけではないから、なんともいえない。
ひとつ分かったのは、アーキテクチャーを共用するGLCとCクラス ステーションワゴンとの比較で、場合によっては快適性においてもSUVのGLCが上回るケースも存在するということだ。で、この瞬間にいまどんな人がステーションワゴンに乗るのかが見えてきた。
もはや理屈じゃない
いまステーションワゴンに乗る人は、パフォーマンスがいいとか快適だとか、そういった機能的な理由で選んでいるのではない。SUVのほうが頭上空間や荷室に余裕がある、ということも関係ない。ただひたすら、ステーションワゴンというスタイルが好きなのだ。恋に落ちるのと一緒で、合理的な説明がつく理由はない。
もう少し分かりやすく説明したいところ……。
例えばビートルズが好きな人に、なぜローリング・ストーンズよりビートルズなのですかと尋ねても、論理的な説明は返ってこないと思う。ステーションワゴンを愛する人に、なぜSUVよりステーションワゴンなんですか、と聞いても同じだろう。つまり、いまステーションワゴンを選ぶ人は、アーティストや作品や恋人に接するのと同じような感覚でステーションワゴンに乗っているわけで、そこに損得勘定や打算はない。タイパもコスパも関係ない。あるのは、ステーションワゴンに対する無償の愛だ。
メルセデス・ベンツC200ステーションワゴン スポーツのステアリングホイールを握りながらこんなことを考えていると、たま~にすれ違うステーションワゴンのドライバーに、尊敬の念を抱くようになってしまう。あなたはエンスー中のエンスー、真のクルマ好きであると。
というわけで、もし今後さらに需要が減っても、世界の自動車メーカーにはステーションワゴンをつくり続けてほしい。ステーションワゴンを選ぶ人は、ずっとみなさんの顧客であり続けるはずだ。
(文=サトータケシ/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝/車両協力=メルセデス・ベンツ日本)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツC200ステーションワゴン スポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4785×1820×1455mm
ホイールベース:2865mm
車重:1730kg
駆動方式:FR
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:204PS(150kW)/5800-6100rpm
エンジン最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/1800-4000rpm
モーター最高出力:23PS(17kW)/1500-3000rpm
モーター最大トルク:205N・m(20.9kgf・m)/0-750rpm
タイヤ:(前)225/45R18 95Y XL/(後)245/40R18 97Y XL(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック5)
燃費:14.8km/リッター(WLTCモード)
価格:761万円/テスト車=784万5000円
オプション装備:メタリックカラー<MANUFAKTURオパリスホワイト>(23万5000円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:594km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:344.8km
使用燃料:25.9リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:13.3km/リッター(満タン法)/13.5km/リッター(車載燃費計計測値)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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