海の向こうでコンニチハ! ニューヨークで発表された3台の新しいスバルを考察する
2025.05.09 デイリーコラムよりタフに、SUVらしく
メチャメチャ勢いあるなあ……スバル。そう思ったのは筆者だけではないに違いない。「アウトバック」の新型に、BEV(バッテリー式電気自動車)の新規車種「トレイルシーカー」、さらに日本でも売っているBEV「ソルテラ」の大幅改良モデルまで、3車種をニューヨークで開催されていたモーターショーで一挙に公開したのだから。
改良モデルのソルテラはともかく、フルモデルチェンジ(アウトバック)と新規車種(トレイルシーカー)の2台を一気に発表するなんて、スバルの規模を考えればスゴいこと。しかも、発表の場となった「ニューヨーク国際オートショー」は、名前に“国際”とは付くものの、実質的には地域の自動車ショーのひとつにすぎない。そこで2台も大物を発表するなんて、やるなあスバル。
というわけで今回のコラムは、そんなスバルの新型車やスバルが海の向こうでこれからどうなっていくのかを占おうという趣旨。トランプさんに振り回されていろいろ大変ですね~っていうのはとりあえず置いといて、だ。
個人的には、アウトバックはワゴンボディーを捨てて、見た目がよりSUV寄りになったことがいちばんのトピックだと思う。なんとなく、2代目「フォレスター」を大きくしたように見えるのはきっと気のせいに違いないけど、新型はアウトバックの登場以来、初めて方向性が変化したといっていいんじゃないだろうか。そういえばフォレスターも、もともとはワゴンとSUVのクロスオーバーとして生まれてきた。だから、それに近いプロポーションに転身したアウトバックは今後、“ひとまわり大きなフォレスター”化するってことなのだろう。
スバルは北米に「アセント」という全長約5mの3列シートSUVがあるけれど、新しいアウトバック(現時点では詳細スペック未公表)はその下のポジションに位置する。さらに小さいフォレスター(全長4655mm)との3兄弟で、SUVラインナップをより強固にしていく狙いがあると考えるのが自然だ。
たしかに、乗用車といえばSUVを指すに等しい昨今の米国では、これまでのようなワゴン派生タイプのアウトバックより、力強さを印象づける“いかにも”なSUVのほうが顧客を増やせるのかもしれない。筆者が思うに、この転身はかの地でしっかり受け入れられ、販売に貢献することだろう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
「都会派」と「野生派」の巧みな使い分け
いっぽうBEVのトレイルシーカーを見て思ったのは「スバルは大いに悩んだに違いない」ってことだ。クロスオーバーSUVスタイルとしたのは、北米でSUVの販売ボリュームが大きいことや、スバルにSUVのイメージが濃いことを考えればまったくもって自然なことだと思う。だけどデザインは、アウトバックほどワイルドには振っておらず、スマートで、どちらかといえば都会的。トヨタの「クラウン クロスオーバー」くらいの感覚だ。
昨今は米国でもBEVが増えつつあるけれど、需要の多くは大都市であり、スバルの持つアウトドアSUVのイメージとはちょっと違う。スバルはそれを踏まえたうえでトレイルシーカーを都会派のスタイリングとしたのだろう。その勝負が吉と出るか凶と出るかは、筆者が簡単に予想できないほど微妙なところにある……。いずれにせよ、隠れスバルファンのひとりとしては、トレイルシーカーもバリバリ売れてほしいなあと願うばかり。ちなみにトレイルシーカーもソルテラ同様、トヨタとスバルのエンジニアが“ワンチーム”となり開発を進めたそうだ。……ということはトヨタ版も存在する?
最後に、ソルテラの改良モデルの驚きは、フロントバンパーがテスラや中国製BEVのように……要はBEVにおける世のトレンドにのっとって、ツル~ンとしちゃったこと。そしてフェンダーの無塗装樹脂部分がなくなっちゃったことだ(ボディーと同色化されている)。これも、先ほど述べた「野生派から都会派へ」というシフトを考えれば納得できる。アウトバックのようなエンジン搭載車とトレイルシーカー&ソルテラのようにエンジンを積まないBEVでは、クルマづくりの方向性が結構違う。同時に発表された3台のスバルを見て、そんなことを感じたわけです。
同じSUVでも、野生派のエンジン車と都会派のBEVを同時に発表することで、スバルの多様性をアピールする。3台同時発表にはそんな狙いがあるのではないか……なんていうのは、きっと考えすぎだろうけど。
(文=工藤貴宏/写真=スバル/編集=堀田剛資)

工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
-
新型「日産エルグランド」はこうして生まれた! 開発のキーマンがその背景を語る 2025.11.7 日産が「ジャパンモビリティショー2025」に新型「エルグランド」を出展! およそ16年ぶりにフルモデルチェンジする大型ミニバンは、どのようなクルマに仕上がっており、またそこにはどんな狙いや思いが込められているのか? 商品企画の担当者に聞いた。
-
次世代のスバルをここから 車両開発の最前線「イノベーションハブ」とは? 2025.11.6 スバルが2024年1月に開設した群馬・太田の「イノベーションハブ」。新技術や次世代スバル車の開発拠点となる同施設の内部と、そこで生み出されたジャパンモビリティショー2025で話題のコンセプトモデルを紹介する。
-
未来がすべてにあらず! ジャパンモビリティショー2025で楽しめるディープな“昔”の世界 2025.11.5 未来のクルマ、未来の技術が集結する「ジャパンモビリティショー2025」。ただし、「そういうのはもういいよ……」というオトーサンのために(?)昔の世界を再現し、当時のクルマを並べた「タイムスリップガレージ」も用意されている。内部の様子を紹介する。
-
現行型でも中古車価格は半額以下! いま本気で狙いたい特選ユーズドカーはこれだ! 2025.11.3 「クルマが高い。ましてや輸入車なんて……」と諦めるのはまだ早い。中古車に目を向ければ、“現行型”でも半値以下のモデルは存在する。今回は、なかでも狙い目といえる、お買い得な車種をピックアップしてみよう。
-
米国に130億ドルの巨額投資! 苦境に立つステランティスはこれで再起するのか? 2025.10.31 ジープやクライスラーなどのブランドを擁するステランティスが、米国に130億ドルの投資をすると発表。彼らはなぜ、世界有数の巨大市場でこれほどのテコ入れを迫られることになったのか? 北米市場の現状から、巨大自動車グループの再起の可能性を探る。
-
NEW
アウディSQ5スポーツバック(4WD/7AT)【試乗記】
2025.11.8試乗記新型「アウディSQ5スポーツバック」に試乗。最高出力367PSのアウディの「S」と聞くと思わず身構えてしまうものだが、この新たなSUVクーペにその心配は無用だ。時に速く、時に優しく。ドライバーの意思に忠実に反応するその様子は、まるで長年連れ添ってきた相棒かのように感じられた。 -
MINIジョンクーパーワークスE(FWD)【試乗記】
2025.11.7試乗記現行MINIの電気自動車モデルのなかでも、最強の動力性能を誇る「MINIジョンクーパーワークス(JCW)E」に試乗。ジャジャ馬なパワートレインとガッチガチの乗り味を併せ持つ電動のJCWは、往年のクラシックMiniを思い起こさせる一台となっていた。 -
新型「日産エルグランド」はこうして生まれた! 開発のキーマンがその背景を語る
2025.11.7デイリーコラム日産が「ジャパンモビリティショー2025」に新型「エルグランド」を出展! およそ16年ぶりにフルモデルチェンジする大型ミニバンは、どのようなクルマに仕上がっており、またそこにはどんな狙いや思いが込められているのか? 商品企画の担当者に聞いた。 -
ジャパンモビリティショー2025(ホンダ)
2025.11.6画像・写真「ジャパンモビリティショー2025」に、電気自動車のプロトタイプモデル「Honda 0 α(ホンダ0アルファ)」や「Super-ONE Prototype(スーパーONE プロトタイプ)」など、多くのモデルを出展したホンダ。ブースの様子を写真で詳しく紹介する。 -
ジャパンモビリティショー2025(マツダ・ビジョンXコンパクト)
2025.11.6画像・写真マツダが「ジャパンモビリティショー2025」で世界初披露したコンセプトモデル「MAZDA VISION X-COMPACT(ビジョン クロスコンパクト)」。次期「マツダ2」のプレビューともうわさされる注目の車両を、写真で詳しく紹介する。 -
ジャパンモビリティショー2025(マツダ)
2025.11.6画像・写真「ジャパンモビリティショー2025」で、コンセプトモデル「MAZDA VISION X-COUPE(ビジョン クロスクーペ)」と「MAZDA VISION X-COMPACT(ビジョン クロスコンパクト)」、新型「CX-5」を初披露したマツダ。車両とブースの様子を写真で紹介する。








































