メルセデス・ベンツE250 CGI ブルーエフィシェンシー ステーションワゴン(FR/5AT)【ブリーフテスト】
メルセデス・ベンツE250 CGI ブルーエフィシェンシー ステーションワゴン(FR/5AT) 2010.06.01 試乗記 ……739万9000円総合評価……★★★★
高級ワゴンの代表格「Eクラス ステーションワゴン」。新エンジンを搭載した、エントリーグレードの走りはいかに?
上質車と呼びたい
「Eクラス」のエントリーグレードとして登場した「E250 CGI ブルーエフィシェンシー」は、同時にメルセデスのエコフレンドリーなブランドイメージを強く訴求するための大事なモデルでもある。E250といえば、従来はV型6気筒2.5リッターエンジンを積んでいたが、新型では1.8リッター直列4気筒直噴ターボエンジンを採用した。
ちまたで話題になっているのは、Eクラスに4気筒で、果たしてユーザーの期待に応えられるのかという点だが、Eクラスはつい2世代前までエントリーグレードに4気筒モデルを設定していたことを忘れてはいけない。さらに言えば、排気消音効果が得られるターボを装着し、各種フリクション低減を行っているこのエンジンは、音や振動、滑らかさという面でも、Eクラスのエンジンにふさわしい上質感を得ているのも、これまた確か。その上で、従来の2.5リッターをはるかにしのぐ、低回転域からの豊かなトルクまで得ているのだ。心配は100%杞憂(きゆう)だと言っていい。
一方、この先を読み進めていただけば分かるとおり、率直に言って、このパワートレインに関する部分のほかの各項目ごとの得点は、目覚ましく良いというほどのものではない。せっかくの新エンジンには、それに見合ったギアボックスが欲しいと思わせるし、使い勝手や快適性にも、もう少し……と思わせる部分は散見される。しかしトータルでクルマの印象を振り返った時に、やはりそこには他では決して得られない世界があると感じさせるのも事実だ。
あくまで優れた道具として存在し、日常使用においてヘンに気を遣う必要が無く、しかし色々な瞬間に、上質な機械を操っているのだという満足感をもたらす。高級車というより上質車と呼びたいメルセデスらしい味わいを、このステーションワゴンは濃密に味わわせてくれる。そんなクルマのキャラクターを考えればなおのこと、質の高いエンジニアリングのたまものであるこのエンジンは、まさにおあつらえ向きの組み合わせと言えるのではないだろうか。
新型Eクラスにはもうひとつ、「ブルーテック」(ディーゼル)という魅力的なパワートレインも用意されている。しかし絶対的な価格やそれに見合った対価という意味で考えたならば、この「E250 CGI ブルーエフィシェンシー」こそEクラスステーションワゴンの本命とするにふさわしい1台だと言えるだろう。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
メルセデスの中核モデル「Eクラス」の現行型は、2009年にまずフルモデルチェンジを果たした「セダン」が日本上陸。「ステーションワゴン」は、「クーペ」に続いて2010年2月に追加された。セダンよりリアオーバーハングを120mm延長することで、大きなラゲッジルームを確保。また、リアにセルフレベリング機構付きのエアサスペンションを採用し、荷物を満載したときなどにも、車高を維持する。
搭載エンジンは、1.8リッター直4ターボ、3リッターV6、3.5リッターV6、5.5リッターV8、6.2リッターV8のガソリンエンジンに加えて、ポスト新長期規制をクリアする3リッターディーゼルターボと、豊富なラインナップ。
(グレード概要)
Eクラスのエントリーグレード「E250 CGI ブルーエフィシェンシー」が採用する新開発の1.8リッター直列4気筒直噴ターボエンジン(204ps、31.6kgm)は、Eクラスファミリーのなかで最も小さな排気量でありながら、上位にあたる3リッターV6モデル「E300」(231ps、30.6kgm)に迫るパワーと、それを上まわるトルクを発生する。10・15モード燃費値は11.0km/リッター。
シートはファブリックになり、パドルシフトが付かないなど、他のグレードに比べれば簡素な装備となるが、合計11個のエアバッグをはじめとする安全装備は上級グレードと同等の充実ぶり。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
思いきり直線基調のインストゥルメントパネルのデザインは、最初なかなかなじめなかったが、よく見れば往年のW124型のそれにCOMANDシステムのモニター部分を増築したようにも感じ、それはそれでメルセデスらしくも思えてきた。息を飲むほどとは言わないがクオリティはまずまず。ナッパレザーのステアリングホイールも、手のひらに吸い付くようになじんで心地よい。
COMANDシステムはもともとが左ハンドル用のロジックであり、特にナビゲーションシステムの拡大/縮小が人間の感覚と逆なのが残念。また、せっかく操作を手元のダイヤルにまとめているのに、なおも大量のボタンが並ぶのは、せっかくのコンセプトを生かし切れていないように思う。
ステアリングコラム周辺も、どうにも雑然とした印象。たとえば他のクルマから乗り換えると、必ず最初、ウインカーレバーを空振りしてしまう。慣れの問題と言うこともできるが、増築を繰り返してきた操作系は、いったん白紙の状態から再構築してもいいかもしれない。
(前席)……★★★
ファブリック地のシートは張りが硬めだが、それでもレザー張りに比べればスッと沈み込んでクッション全体で体を支えてくれる感は強く、個人的にはこちらの方が好みと感じた。ただしバックレスト下側の湾曲が強く、腰のあたりを圧迫してくる形状ゆえに疲れやすい。もう少し調整代があればと思う。
右ハンドルは左ハンドルよりペダル類が手前にあるのだろうか。左で感じる傾斜したフロントウィンドウ、並びにルームミラーの圧迫感は薄いが、代わりにシートポジションはステアリングを思い切り手前に出さなければしっくりと来ない。センタートンネルに圧迫されて左足周辺のスペースに余裕が無いのも、特に長距離を行く時には気になる部分だ。
(後席)……★★★
ライバルと比べると、特に足元、座面の前後長は大きいとは言えないのだが、頭上の余裕、高めの着座位置と起き気味の姿勢、良好な視界などによって居心地は悪くない。日本のユーザーで、狭苦しいと感じる人はそうは居ないだろうと思う。強いて言えば、アームレストを出して、さらにフタを開けないとカップホルダーが出てこないのは不親切かも?
(荷室)……★★★★
歴代モデルと同様、ラゲッジスペースの広さは文句無し。これだけの空間を使い切るのはそう簡単にできることではないだろう。後席はバックレストを前倒しするだけのシングルフォールディング式で、キャビン側、もしくはリアゲート側のどちらからでもスイッチひとつで倒すことができる。
目新しいポイントは、トノカバーとパーティションネットが後席バックレストと一体ではなくなったこと。後席を倒した状態でもトノカバーが使えたりと、さまざまにアレンジして活用することが可能だ。
フロアボードは荷室前方にヒンジがあって開閉でき、またボード自体が中折れ式になっているが、どう使うと便利なのかは今ひとつ分かりにくい。床下に従来あったトレイや組み立て式のボックスも用意されないなど、収納らしい収納が無いのも残念なところである。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
1.8トンのボディに、過給器付きとはいえ1.8リッターのエンジンと聞くと、どれだけ走るのか不安に思われるかもしれないが、実際のところ、実用域の動力性能は従来のV型6気筒2.5リッターを上回ると言っていい。アクセルを踏み込むと、軽い“ヒューン”という音とともに低回転域からすぐに過給が立ち上がり、物足りないどころかむしろ軽快にクルマが前に出てくれるのだ。このトルク感、そしてターボチャージャーによる消音効果もあるのだろう、4気筒だからといって上質感がそがれた感はまったく無い。
むしろ気になるのはATが5段だということの方だ。せっかくトルクがあるのに、普通に加速しても各ギアでどうしても引っ張り気味となるのは何とももったいない。これは燃費にも影響しているように思う。ちなみにジュネーブモーターショーでのアナウンスによれば、本国では近々に7段ATが登場するようである。とはいえ、現状でも特に普段、街なかでの使用が多いという人には動力性能の面でもフィーリングの面でも十分以上の満足感を与えてくれるだろう。そして実用域のトルク感が心もとなかった従来のV型6気筒2.5リッターよりは燃費だって優れているはず。総じて満足度は期待以上のパワートレインと言えるのではないだろうか。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
最新のCGIユニットの採用は重量減にも貢献しており、車重は「E300」と比べて50kgも軽い。このステーションワゴンの場合、前後重量バランスは何とリアの方が重いほどである。
それだけにフットワークは、とにかくノーズが軽いという印象。Eクラスらしからぬ、メルセデスらしからぬキビキビとした反応を楽しめる。とは言っても、それはクルマが勝手に切れ込んでいくような演出めいた挙動ではなく、操舵(そうだ)感自体は穏やかだしメルセデスらしい直進性も十分確保されている。あくまで素性の良さが、その軽快感につながっている。
一方、快適性は今一歩というのが正直なところ。路面からのちょっとした当たりに、硬さ、あるいはカドが感じられるのだ。タイヤサイズは225/55R16で、空気圧は通常時前後260kPaという設定。高めの空気圧のせいかとも思ったが、245/45R17サイズでも指定空気圧は変わらない。となるとタイヤ銘柄のせいなのか。いずれにせよ、少なくともこの個体に関して言えば、もうちょっとメルセデスらしい鷹揚さやしなやかさが欲しいと感じたのは事実である。
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者:島下泰久
テスト日:2010年4月19日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2010年型
テスト車の走行距離:4099km
タイヤ:(前)225/55R16(後)同じ(いずれも、ミシュランPRIMACY HP)
オプション装備:メタリックペイント(8万4000円)/ナイトビューアシストプラス(25万円)/レーンキーピングアシスト(7万5000円)/キーレスゴー(15万円)/メモリー付きパワーシート(前席)(15万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(5):山岳路(3)
テスト距離:290.6km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
-
メルセデスAMG GTクーペ/メルセデスAMG GT 4ドアクーペ【試乗記】 2026.3.31 メルセデスAMGの「GT63 S Eパフォーマンス クーペ」と「GT53 4MATIC+(ISG)ファイナルエディション」は、同じAMG GTを名乗りながらも片や2ドア、こなた4ドアのクーペモデルだ。この両者には、どんな特徴や違いがあるのか。クローズドコースで確かめた。
-
レクサスGX550“オーバートレイル+”(4WD/10AT)【試乗記】 2026.3.30 スタッドレスタイヤ装着の「レクサスGX」でウインタードライブへ。クルマ好きにとってはいかにも胸がふくらむシチュエーションだが、刻一刻と変化する自然環境が相手ゆえに、なかなか一筋縄ではいかないものだ。山に分け入る際には引き返す覚悟もお忘れなく。
-
スズキeビターラZ(4WD)【試乗記】 2026.3.28 スズキが満を持して世に問うた、初の量販電気自動車(BEV)「eビターラ」。エントリーグレードは400万円以下! 500万円以下で4WDも用意されるというお値打ち価格のBEVは、走らせてみるとどうなのか? 東京-愛知を往復して、その実力を確かめた。
-
スズキGSX-8T(6MT)【レビュー】 2026.3.25 昨今のネオクラシックブームに乗り、いよいよスズキからも新型車「GSX-8T」が登場。しかし実車に触れてみると、既存のライバルとはちょっと趣の異なるマシンとなっていた。スタイリッシュないでたちとスズキらしい実直さが融合した、独創の一台を報告する。
-
日産セレナe-POWERハイウェイスターV(FF)【試乗記】 2026.3.24 販売台数ではトヨタ勢に差をつけられながらも、日産の屋台骨として奮闘する「セレナ」。現行型の登場から3年、マイナーチェンジで磨きがかかった最新の「e-POWERハイウェイスターV」に試乗すると、人の感性に寄り添う開発陣のこだわりと良心が見えてきた。
-
NEW
街から看板が消えたシェルがエンジンオイルで再出発 ブランドの強みを生かせるか
2026.4.2デイリーコラムサービスステーションの再編で、おなじみの看板が街から消えたシェルは、エンジンオイルで存在感を示そうとしている。F1パイロットも登場した新製品の発表イベントで感じたシェルの強みと、ブランド再構築の道筋をリポートする。 -
NEW
第955回:イタリアでは事情が違う? ニュースにおける高級外車の“実名報道”を考える
2026.4.2マッキナ あらモーダ!目立つから仕方ない? ベントレーやランボルギーニといった高級輸入車だけが、事故を起こすたびに“実名報道”されてしまう理由とは? この現象は日本固有のものなのか? イタリア在住の大矢アキオが、日本の事故報道におけるふとした疑問を掘り下げる。 -
NEW
MINIクーパー コンバーチブルS(FF/7AT)
2026.4.2JAIA輸入車試乗会2026JAIA輸入車試乗会で「ディフェンダー」の次に乗り込んだのは新型「MINIクーパー コンバーチブルS」。重厚でタフな世界から一転、屋根を全開にして走りだせば、飛ばさなくても笑みがこぼれる、幸せな時間が待っていた。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)/CR-V e:HEV RS(4WD)【試乗記】
2026.4.1試乗記ホンダの「CR-V」が日本市場に帰ってきた。先代モデルの発売時(2018年)も2年ぶりの復活で(少し)盛り上がっていたが、今回もまた3年半ぶりの復活である。モデルライフが途切れ途切れなところは気になるものの、新型のすっきりと上質な乗り味はまぎれもなくプレミアムな領域に達している。 -
今こそブランドの伝統と強みを前面に マツダと三菱のPHEVを乗り比べる
2026.4.1デイリーコラム日産自動車をはじめとした国産6ブランドがBEVとPHEVを集めた合同試乗会を開催。マツダと三菱のPHEVを乗り比べ、それぞれの特性や開発陣の考え方の違い、近い将来に向けたビジョンなどに思いをはせた。 -
第107回:さよならワグナー(後編) ―革新から正統へ 変節するメルセデスと欧州カーデザインの未来―
2026.4.1カーデザイン曼荼羅「EQ」シリーズの失敗を機に、保守的なイメージへ大転換! メルセデス・ベンツのカーデザインは、一体どこへ向かおうとしているのか? 名物デザイナー、ゴードン・ワグナー氏の退任を機に、スリーポインテッドスターと欧州カーデザインの未来を考えた。





























