トヨタ・クラウン3.5アスリートのライバル車はコレ【ライバル車はコレ】
 高級サルーン対決 2008.05.29 試乗記 トヨタ・クラウン3.5アスリートのライバル車はコレ13代目となった「トヨタ・クラウン」の最もスポーティなモデル「3.5アスリート」。セグメント違いのクルマも含めライバル車を検証する。
トヨタ・クラウン3.5アスリート
■世界一級のスポーツサルーン
「いつかはクラウン」――余りにも有名になったキャッチコピーを思い出し、「このブランドはやっぱりオジサン御用達だ……」とそんな紋切り型の印象を抱いていると、新型の仕上がりぶりには驚かされる。何しろそのダイナミック性能の高さたるや、名だたる欧州勢にひと泡吹かせることなど訳ない。中でも、シリーズ最高の走行性能を売り物とする「3.5アスリート」の出来栄えは、まさしく“世界一級のスポーツサルーン”と表現をするにたる高さだ。
恐らくゼロヨン(0→400m)タイムは15秒台だろう、と想像のできる力強い加速を、まさに“日本市場最適チューン”が実感できる巧みなプログラミングによる6段ATの助けもあり、飛び切りの滑らかさと共に享受できる。路面とのコンタクト感をタップリと伝えつつも、無用なキックバックは完全に遮断する電動式アシストを介したステアリングフィールは、もはや油圧式パワステ採用車を上まわる上質さだ。
パッケージングは従来型をベースとするので室内空間などに大きな変更はない。が、それでもドアミラー前方に“抜き”を設けて右左折時の視界を改善させるなど、ここでも日本市場を最優先にしたリファインが実践されている。ボディはパーソナルカーとして抵抗なく扱える最大級といえるサイズだが、そうした中にも、5.2mという最小回転半径が生み出す取りまわしのよさが大いに嬉しい。
【ライバル車 その1】BMW530i
■若々しさで一歩リード
今度のクラウンは、そんなに走りが凄いのか……と知ったアナタは、きっと“駆けぬける歓び”を標榜する例のブランドが気になるはず。ボディ全長やエンジンのキャラクターから最もライバル関係が色濃い「BMW530i」。クラウンに比べるとボディ全幅が50mm広いが、これは「日本の都市環境を鑑みたクラウンが、今回も使い勝手を考慮して全幅が1.8mを超えることを頑なに拒んだことによる結果」だ。
端的に言って、新型クラウン3.5アスリートには、運動性能全般でこのBMWに大きく見劣りする部分が見当らない。それどころか、最高出力にして40ps以上もの差を付けるだけあり、加速感では明確な差を付けるのもクラウンの実力だ。
一方で、BMW車全般のとても上手いところは、“操る快感”を極めて分かりやすく表現する部分にある。日本仕様には標準装備となるアクティブステアリングがもたらすシャープなハンドリング感覚はもちろん、BMWが好んで用いるランフラットタイヤのちょっとかためな足腰の感触など、乗る人に「これぞスポーティな走り味」と好意的に受け取って貰えるところに、BMWが培ってきたブランド力の強さがあるのだ。
クラウンが、その名を冠するがゆえにスタイリングの大きなイメージチェンジには躊躇せざるを得ない一方で、5シリーズのルックスは極めて若々しい。“Young at heart”を自認し、自慢するお父さんがたには、これもクラウンに背を向けさせる大きな理由のひとつとなるのだろう。
【ライバル車 その2】メルセデス・ベンツC250エレガンス
■バランスで勝負
「そうは言っても、530iはアスリートより200万円以上も高いじゃない!」という人は、価格重視でこんなモデルに目を向ける可能性もアリ。「メルセデス・ベンツC250エレガンス」のお値段は568万円。これだと、クラウンの「3.5アスリートGパッケージ」の567万円と殆ど同価格になる。
「でも、ボディはずっと小さいし、最高出力に至っては100ps以上ものマイナス」と、そんなことを考える人は、クラウンへと向かうべし。一方、「クラウンが買えるならメルセデスも余裕なんだ」と、そんな人にこそ知っておいてもらいたいのは、Cクラスの走りの圧倒的な質感の高さ。
“アジリティ=敏捷性”をテーマに開発された新型Cクラスの走りは、そのハンドリング性能と快適性の妥協点が世にあるセダンの中でも間違いなくトップクラス。その上、比較的コンパクトなボディサイズのため自らの手足のごとく扱えるイージーオペレート感覚に、遥かにサイズの大きな上級セダンを彷彿とさせる高級車然とした快適性を同居させることにも成功している。
そんな感覚にひとたび慣れ親しんでしまえば、クラウンサイズのクルマを1人や2人乗りで転がすことの我が理不尽さにきっと気が付くはず。「究極のクラウンキラー」とも言えるのが、Cクラスなのである。
(文=河村康彦)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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