キャディラックCTS 2.6(5AT)【ブリーフテスト】
キャディラックCTS 2.6(5AT) 2004.04.16 試乗記 ……519万7500円 総合評価……★★★★ 100周年を迎えたキャディラックの高級セダン「CTS」。2004年モデルはリファインに加え、「パニックブレーキアシスト」などを備えるなど、安全性の向上が図られた。自動車ジャーナリストの金子浩久が試乗する。キャディラックとは気づかない
新しい時代のミディアム・キャディラックとしてデビューした「CTS」は、開発者の狙い通り、“コンパクトでスポーティなキャディラック”に仕上がっている。そこそこ速い動力性能と引き締まった走りっぷりは、現実の交通状況に対応するもので、これまでのアメリカ車とは一線を画す。黙って乗せられたら、おそらくキャディラックだと気づかないのではないか。
CTSのヨーロッパのライバルに対するアドバンテージは、静粛性の高さと乗り心地のよさ。だが、価格を考慮すると、どれだけ支持を集められるかは未知数だ。アメリカ車としては異例にヨーロッパ車っぽいが、「メルセデスベンツCクラス」や「Eクラス」、「BMW3シリーズ」の上級グレード、もしくは「5シリーズ」と較べると、無国籍な印象は否めない。
その所在の不確かさが、日本デビューから1年しか経ていない、若年キャディラックの泣き所かもしれない。“新時代のミディアムサイズ・キャディラック”は、クルマ好きにとって心躍らされる存在である。今後も熟成を怠らず、さらにはバリエーションを追加するなどして、戦線拡大を期待したい。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
アメ車の古典的イメージ「デカイ」「ユルい」から、「カッコいい」「クール」「スポーティ」への転換を図るべく打ち立てられた、キャディラックの新テーマ“アート&サイエンス”。それを反映した1号車が、スポーティセダン「CTS」である。左右ハンドルの設定、1.8m以下の全幅など、北米のみならず、世界市場を視野に入れて開発。さらに、独ニュルブルクリンクサーキットを3年間走り込むなど、従来のキャディラックとは異なるクルマに仕立てた。日本への導入は、2003年3月から。
ここしばらくFF(前輪駆動)をつくり続けてきたキャディラックが、久しぶりにFR(後輪駆動)を採用。CTS用に、新プラットフォーム「シグマ・アーキテクチャー」が開発されたことからも、力の入れようがうかがえる。フロントに縦置きされるエンジンは、新開発の2.6リッターV6(182ps)、またはオペル由来の3.2リッターV6(223ps)。トランスミッションは、いずれも5段ATが組み合わされる。
(グレード概要)
CTS 2.6は、キャディラックのエントリーモデル。上級グレードCTS 3.2と較べて、装備品による差別化はほとんどない。電動調節機構付きレザーシートやエアコン、車両を安定させる「スタビリトラック」をはじめとする電子デバイス、フロント&サイド&カーテンエアバッグの主要装備は、いずれにも標準装備。3.2リッターのみ、DVDナビゲーションシステムが備わるほか、CDチェンジャーが3連奏から6連奏にグレードアップされる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
インパネ、ドア内張り、各種スイッチ類などの形状や配置などはオーソドックス。とても見やすく、使いやすくて好感が持てる。だが、いかんせん、すべてがプラスチック然とし過ぎていて、質感の点で価格に見合っているとはいえない。アメリカ流のプラグマティズムと、日本での販売価格の折り合いをどうつけるのか。今後に期待したい。
余談だが、エアコンの空気吹き出し口の風量調節レバーは、歴代のサーブ各車が用いていたものを流用している。孔が穿たれた数枚のプラスチック板を重ね、それをズラすことで穴の面積を増減する仕組みだ。目に見えない空気の量を巧みに視覚化したアイデアだけでなく、見た目もカラクリ細工のようで面白い。
(前席)……★★★
シートベルトが、シートそのものの肩口から出ているので、身体に密着して使いやすくていい。サイズや座り心地も、スポーティセダンにふさわしいものだ。
一方、アメリカ車にありがちだが、ステアリングホイールに備わるチルト調整のワンノッチの幅が大き過ぎ、筆者には最適なポジションを得ることができなかった。シートは8ウェイの電動調整式と凝っているだけに、惜しいところだ。
これまた余談だが、CTSや「ドゥビルSTS」などは、国産車のようにウインカーレバーが右側にあるのだが、最後まで慣れなかった。同日、キャディラックの他モデルにも試乗したが、「SRX」は右ハンドルで、「XLR」は左ハンドル。いずれも、ウインカーレバーは普通の輸入車と同じ左側にあったため、余計に混乱した。まぁ、オーナーになってしまえば、慣れてしまうだろうから関係ないことだが。
(後席)……★★
前席より座面がやや高く設定されるのは好ましいのだが、そのぶん、頭上と天井の空間が最小限になってしまい、上下方向に窮屈だ。強く傾斜したリアウィンドウからの直射日光も懸念されるところ。夏場は後頭部に直射日光を浴びて、暑い思いをするかもしれない。膝と前席背もたれの空間は、ミディアムクラスから想像されるより狭い。
(荷室)……★★★
バンパーからパックリと開くトランクは使いやすい。しかし、上下方向に薄く、奥行きも限られているので、絶対的な容量は362リッターと大きくない。ちなみに、「メルセデスベンツE240」が505リッター、5シリーズは520リッターだ。
実寸では、開口部95cm、最大幅120cm、高さ47cm、奥行きは110cm。後席はフォールディングでき、奥行きは190cmまで拡大できる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
新開発の2.6リッターV6エンジンは、スロットルペダルの踏み込みに呼応して、フォンフォンと威勢がいい。レスポンスが小気味よいうえ、トルクが太くて扱いやすい。これで、5段ATにマニュアルシフトモードが付いていたら満点だ。後発の「SRX」はマニュアルモード付きだったから、いずれCTSにも追加されるかもしれない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
「ニュルブルクリンクで3年間走行実験した」と謳う「シグマ・アーキテクチャー(プラットフォーム)」だけあって、ボディ剛性はとても高く感じられる。まるで、アメリカ車じゃないみたいだ。ハンドリングもスポーティで、ステアリングホイールの動きと挙動がズレることなく、こちらが操縦した通りにクルマが反応する。乗り心地も、締まっているけど快適。キャディラックの意図した“スポーティセダン”に仕上がっていると思う。
(写真=清水健太、日本ゼネラルモーターズ/2004年4月)
【テストデータ】
報告者:金子浩久
テスト日:2004年1月22日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:タイヤ:(前)225/50R17 93W(後)同じ(いずれもグッドイヤー EAGLE RS-A)
オプション装備:--
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(3):山岳路(6)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

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