アルファ・ロメオ・アルファ・ブレラ Sky Window 2.2 JTS(FF/6MT)/3.2 JTS Q4(4WD/6MT)【試乗速報】
洗練と引き替えに失ったもの 2006.04.21 試乗記 アルファ・ロメオ・アルファ・ブレラ Sky Window 2.2 JTS(FF/6MT)/3.2 JTS Q4(4WD/6MT) ……504万円/656万4540円 ジウジアーロの手になるグラマラスなデザインを纏った、アルファ・ロメオの新型2ドアクーペ「ブレラ」。日本に上陸したばかり、新時代のアルファを代表するフラッグシップの印象は?ジウジアーロ・デザインの強い引力
「アルファ・ブレラ」のデザインには強い引力がある。
フロントマスクは先にデビューした「アルファ159」と瓜ふたつ。アルファ通ならまだしも、よほどのクルマ好きでもその違いをいい当てることは難しいかもしれないが、むき出しの3連6眼ヘッドライトが備わるシャープな顔つきは強いインパクトを持つ。しかし、人がブレラに惹きつけられるのは、なんといってもグラマラスなヒップラインだろう。張りのある面とV字を描くリアウインドゥからなるリアセクションは、人を振り返らせ、視線を釘付けにしてしまうほど魅力的なのだ。ジウジアーロのデザインは「さすが……」というべきか。
一方、コクピットを覗くと、こちらも159とほぼ変わらない景色が目に入る。3本スポークのステアリングホイールに、丸く大きな速度計と回転計、そして、エアベントと小径メーターが3つずつ並ぶセンタークラスターなど、すでに見慣れたデザインである。
しかし、レッドとベージュ、ブラックとグレー、あるいはブルーとタバコ(薄い茶色)のツートーンのインテリアカラーが、セダンとは違う華やかな雰囲気をつくり上げているのが上手いというか、憎いというか……。
それだけに、とりわけクルマ好きにとっては気になる存在のようで、試乗会から戻った私に「ブレラどうだった?」と問いかける友人が何人もいた。そんなことからも、このクルマに対する期待の高さが伝わってくる。
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3モデルが日本上陸
そんなアルファ・ブレラの販売が、2006年4月8日から日本でも始まったのはご存じのことだろう。ラインナップは2.2リッター直列4気筒エンジンを搭載する「アルファ・ブレラ 2.2 JTS」と、“Sky Window”と呼ばれるガラス張りパノラマルーフが装着される「アルファ・ブレラ Sky Window 2.2 JTS」、そして、3.2リッターV6エンジンを積む「アルファ・ブレラ Sky Window 3.2 JTS Q4」の3モデルだ。いずれも左ハンドル、6段マニュアル仕様で、2.2 JTSは前輪駆動、3.2 JTS Q4はフルタイム4WDである。
このうち、今回の試乗会ではブレラ Sky Window 2.2 JTSとブレラ Sky Window 3.2 JTS Q4を試すことができた。
まずは4気筒モデルのブレラ Sky Window 2.2 JTSに乗り込む。センタークラスターにリモコンキーを差し込み、その右下にあるスタートボタンを押すと……なぜかショックを伴いながらエンジンは目覚めた。しかし、アイドリングを始めてしまえば静かでスムーズ。軽いクラッチペダルを操作して発進する。1500rpm以下ではトルクが心許なく、多少回転を上げ気味にクラッチを繋がないとエンストしてしまいそうだ。
走り出したところで、なんとなく元気がない。カタログによればこのエンジンの最高出力は185ps/6500rpm、最大トルクは23.4kgm/4500rpmとあるが、アルファGTに積まれる2リッター(166ps、21.0kgm)のほうが断然活発なのだ。最終減速比や車両重量の違いもあるのだろうが、すくなくとも体感上は「期待はずれ」といわざるを得ない。
一方、静粛性やスムーズさの点では、最新のエンジンである2.2リッターに軍配が上がる。さらに3500rpmあたりからリブリミットの6800rpmくらまで、広く浅く盛り上がるトルク特性は確実に洗練度がアップした。ショートストロークというほどではないが、スパッと決まるシフトの感触も好ましいと思う。
その後に乗った3.2リッターV6は、当然のことながらアイドリング付近からトルクが豊かで、アクセルペダルから右足を離したままでクラッチを繋ぐことが可能。2.2リッターに較べて車重が170kgほど重いにもかかわらず、2000rpm以下でも十分に実用的だ。回してもスムーズで力強い印象に変わりはなく、それでいて、フルタイム4WDのおかげで260ps/6200rpm、32.8kgm/4500rpmの性能を持て余すことはなかった。試乗会当日、天気は“大荒れ”だったのだが、濡れた路面コンディションならなおさらのこと、土砂降りのおかげでその実力を確認することもできた。
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洗練と色気、躍動感は両立できないのか
走りっぷりについては“洗練”の一言である。サスペンションストロークを抑えた硬さとは違って、このブレラはある程度のストロークを許しながら、しっかりとボディの動きを規制する懐の深さが特徴だ。だから、18インチを履く3.2リッターモデルに多少バネ下の重さを感じる以外、乗り心地に不快さはなく、ワインディングロードでも直4、V6ともに軽快にコーナーを駆け抜けるのが印象的である。しかも、コーナリング中のフロントタイヤはまるで路面に食いつくような安定感で、ドライバーはクールに、いつもの山道に挑めるかもしれない。
しかし、安定感があることや快適性と、走りが楽しいかどうかは別の問題でもある。並みのセダンとは比べものにはならないが、ブレラは2ドアのスポーツクーペなのだ……という視点に立つと、とりたてて鋭い回頭性を持っているとはいえないし、コーナーの切り返しなどではなんとなく「重いものを操縦している」という感じが強い。「人とクルマとの一体感が希薄になった」とでもいうべきだろうか?
たしかにブレラは、現代のクルマらしい洗練されたマナーを手に入れた、魅力溢れるクーペである。一方、そのぶんこれまでのアルファ・ロメオのスポーツクーペが持っていた、走りの色気が褪せてしまった気がする。エンジンの色気もまたしかり。時代の流れとはいえ、私は寂しく思うのだが……。
もちろん、気楽にスタイリッシュにクーペと付き合いたい人には、文句のない選択といえるのもまた現実なのだが。
(文=生方聡/写真=郡大二郎/2006年4月)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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