スバルR1(CVT/4WD)【試乗速報】
これからは、スバルがイタ車を作ります 2005.01.21 試乗記 スバルR1(CVT/4WD) ……150万450円 テレビCMでは、「てんとう虫」のスピリットを受け継ぐことを強調している「R1」。「小さいこと」を利点とするクルマ作りは、現代でも可能なのか。『NAVI』編集委員鈴木真人の速報インプレッション。割り切って、コンセプトが明確に
これは、ぜひともイタリアに輸出していただきたい。きっと、売れるはずだ。だって、本場のイタリアからは、最近こういうクルマが登場していないのだ。外から眺めてうっとりし、座席に座っただけでうれしくてにんまりする。走らせてみれば、力はないけどブンブンまわしていると若返ったような気になる。そういうクルマなのだ、「R1」は。
4ドアの「R2」が先にあったので、単にその2ドア版と考えることもできるが、割り切った造りにした分、コンセプトが明確になった。4人乗りではあるけれども基本的には2人乗車を前提としていて、スタイルを優先している。そのおかげで、スバルが「ワンモーションフォルム」と呼ぶタマゴ型のシルエットはよりピュアなものとなり、意図がシンプルに表現されることになった。イメージは似ているものの、リアエンドの造形はまったく違うものだし、顔つきも変えてある。
今回発売されたのは、すべて自然吸気の4気筒DOHCエンジンにCVTの組み合わせで、FFと4WDがある。R2で採用されたスーパーチャージャー付きエンジンを搭載したモデルは、今のところラインナップされていない。また、マニュアルトランスミッションどころか、マニュアルモード付きのCVTも採用を見送られた。ちょっと残念なのだが、がっかりすることはない。開発者に話を聞くと、口を揃えて「市場の動向を見て」と言いながらも、しばらくすればスポーティなモデルを投入したいという意欲が十分に伝わってくる口ぶりだった。
内装色ありきのボディカラー
「てんとう虫」(スバル360)を意識したという愛らしい外観とともに、内装も注目される点である。赤と黒のツートーンで構成されるインテリアは全車共通で、この内装色を前提としてボディカラーのバリエーションが決定された。だから、R2に設定されているきれいなブルーや若草色がR1には採用されなかった。
抑えた色調のレッドとマットなブラックの組み合わせは、落ち着いた雰囲気で気持ちがいい。あからさまにスポーティを狙うのでもなく、変にファンシーな色調にするのでもない。真っ当な大人が満足できる仕上がりになっている。ものすごく高級感があるというわけではないが、安っぽい感じは一切ない。運転席に座ってプライドを保っていられるということは、このクラスのクルマにとってかなり重要な要素である。
標準モデルは布地のシートでこれもなかなかいい感触なのだが、「レザー&アルカンターラセレクション」を選ぶと座面と背もたれにスエード調人工皮革、サイド部に本革を使ったシートになる。それに加えて、ステアリングホイールとシフトノブが本革巻きとなり、アルミ製スポーツペダルも装備される。もともと、この仕様が本来の内装イメージだったらしい。5万円の出費なら、選ぶ価値があると思う。
スマートに対抗しうる
4気筒DOHCエンジンは、R2のものと変わらない。54ps、6.4kgmというスペックだから、絶対的な性能はもちろん期待してはいけない。スーパーチャージャーが欲しくなるところだが、登場するとしても1年は待つことになりそうだ。ただ、どうしようもなく非力という感じはなく、CVTのおかげもあってスムーズな走りである。少なくとも、「スマート」よりはずっと普通に乗れることは確かだ。ただし、全開で加速する時はかなり勇ましいエンジン音が車内に溢れることになる。振動は抑えられているので、不快なものではない。
燃費性能はたいしたもので、「10・15モード燃費」では24km/リッターという数値を達成していて、クラストップを謳っている。軽の規格は現代の交通には無理があって、リッターカーのほうが効率よく燃費を稼げる、というのが最近の定説となっていた。しかし、この数字がリアルワールドでも実現できるのなら、かなりのエコカーだといえる。
ほかにも、小さいわりにユーティリティが考えられているなどの美点はいくつもある。そして、いくら「+2」とはいえ、後席があまりにも狭いという大きな欠点もある。しかし、そういう細部についてあれこれいうより、「軽」という枠の中でこんなに魅力的なクルマを作り上げたことに感謝したいのだ。
サイズもエンジンパワーも、軽自動車の枠を使い切ってはいない。むしろ、「小さい」ということを価値に転じている。それは、もともと日本の得意技だったはずだ。本来ならば、スマートは日本から出現しなくてはならなかった。遅まきながら、ようやく対抗しうるクルマを我々は持つことができたのだ。
(文=NAVI鈴木真人/写真=峰昌宏/2005年1月)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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