ジャガーSタイプR【試乗記】
微笑ませるジャガー 2004.06.06 試乗記 ジャガーSタイプR ……1070万4500円 「リンカーンと離婚しました」(ジャガージャパン、デービッド・ブルーム代表)の言葉どおり、ジャガーらしさを求めて改良し続けてきた「Sタイプ」。フェイスリフトした最新型はどうなのか? 最強グレード「R」に、自動車ジャーナリストの笹目二朗が乗った。
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Sタイプの1割
現行「Sタイプ」は、1998年のバーミンガムショーに登場。フォード傘下に入ったジャガーが、「リンカーンLS」と共同開発したことで話題を集めた。以後、2002年には内装に手を入れて高級化を図り、構成パーツの約80%を刷新する“ビッグマイナーチェンジ”を敢行した。
今回のマイナーチェンジは、エクステリアデザインに加えられた小変更が主である。「XJシリーズ」よりひとまわり小さなジャガーサルーンとしての新しい提案に対し、顧客はより高級感を欲しているようで、今回の変更主旨もまた、よりジャガーらしさを求めた、手のこんだつくりが実現された。
SタイプはV6の2.5と3リッター、V8は4.2と、それにスーパーチャージャーでパワーアップした「R」の4本立てである。1割弱が「R」という販売実績が、このクラスであっても、高性能車を求める層が厳然と存在することを証明する。
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強引、猛烈、快感
門外漢にとって、1.8トンもある重量車に406psのエンジンを積み、半ば強引に走らせるよりも、1.6トンのボディを243psで運ぶ「XJ6」の方が知的だと思うが、実際「R」に乗ってみると、これがなかなか面白い。
スーパーチャージャーの発する“ギュイーン”というBGMも、耳につくと思えば騒音であるが、一定速度では気にならない。加速時だけ盛り上がるメカニカルサウンドは、むしろ、瞬時に吹け上がる軽快なリズムだ。猛烈な加速とあいまって、ATであっても快感には違いない。
ダンパー減衰力は電子制御サスペンション「CATS」が、NAモデルよりハードな設定となるが、不当に硬くない。乗り心地はしっとりと動きを静め、スポーティでありながら高級感が味わえる。
ジャガーらしい高級感
内装はより凄味を加えた渋い艶消しのメタリック仕上げ。ジャガー伝統のウッド&レザーの佳境とはまた違った味わいを醸す。内装の仕上げやシートの縫製処理なども、より洗練されて高級感を増した。
外観デザインは一見してSタイプであり続け、変更箇所はイメージを踏襲した微小な部分だ。それでも、テールランプ周辺の丸みやサイドのプレスライン、アルミホイールのデザイン、多少スクエアになったかに見えるグリル、ヘッドランプの中身、アルミホイールのデザインなど、ディテールの処理に丁寧な仕上げが施された。全体として、よりジャガーらしい高級なたたずまいが感じられる。
デビュー当初からこのレベルが達成されていれば……と考えないでもないが、成長過程を経験していくこともまた、新規ユーザーを開拓する一助になることを、ジャガーは学習したはずだ。
また、伝統や暖簾の重みを継続させるのは難しく、評判を落とすのは簡単。復活させるのはもっと大変ということを、われわれにも教えてくれた。
というわけで、よりジャガーらしさが濃厚になったSタイプ。クチうるさい旧来のジャガーオーナーをも、微笑ませることができるだろう。
(文=笹目二朗/写真=清水健太/2004年6月)

笹目 二朗
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