トヨタ・クラウン ハイブリッド アスリートS/ハイブリッド ロイヤルサルーンG【試乗記】
かつてない変化 2013.03.12 試乗記 トヨタ・クラウン ハイブリッド ロイヤルサルーンG(FR/CVT)/ハイブリッド アスリートS(FR/CVT)……567万9200円/475万3000円
最新型「クラウン」のハイブリッドモデルに試乗。先代からは、どのような進化を遂げたのか? 「ロイヤルサルーン」と「アスリート」、二つのモデルでチェックした。
燃費はアップ、価格はダウン
2割から7割にアップしたのが、「クラウン」のハイブリッド比率である。初期受注の段階とはいえ、新型クラウンは一気に「ハイブリッドのクルマ」になったのだ。
新型初のプレス向け公道試乗会にはハイブリッドと「それ以外」がほぼ半々で用意されていた。だが、メディアの人気も圧倒的にハイブリッドである。ひとコマ1時間の試乗で最初、ハイブリッドの「ロイヤルサルーンG」に乗ると、次の枠ではハイブリッドはとれず、2.5リッターV6の「ロイヤルサルーンG」になった。
同一グレードだから比較ができて、ま、いっか、と、乗り込んでエンジンをかけると、車載コンピューターの平均燃費は7.3km/リッターと出ていた。エーッ、それまで乗っていたハイブリッドは13.6km/リッターだったのにィ!
ついでに言うと、新車購入時に2.5リッターV6ロイヤルサルーンGは4万9200円の重量税をとられるが、ハイブリッドはもちろん全モデル免税、タダである。
「手が届く、驚き燃費のFRハイブリッド」というのが、今度のクラウンハイブリッドのキャッチフレーズだという。3.5リッターV6がベースだった旧型ユニットを捨て、エンジンを2.5リッターの4気筒にダウンサイジングした。
といっても、「カムリハイブリッド」用と同じではなく、ポート噴射と筒内噴射二刀流の「D-4S」を採用するなど、低燃費化をさらに突き詰めた結果、JC08モードの燃費値は23.2km/リッター。カムリの23.4km/リッターに肉薄した。車重はクラウンのほうが100kg以上重いのに、だ。ちなみに、旧型クラウンハイブリッドは14.0km/リッターだった。
エンジンを小さくしたために、コストは下がり、スタート価格は旧型の540万円から410万円に急降下した。発売直後の人気がハイブリッドに集中するのも当然だ。トヨタ、してやったり!である。
パワーは減ってもスイスイ走る
直噴2.5リッター4気筒は178ps。モノとしては旧型クラウンハイブリッド用と同じだというモーターの最高出力は、143ps(旧型は200ps)。システム出力220psの新ユニットを搭載する新型クラウンハイブリッドは、史上最もスイスイ走るクラウンである。今の言い方をすると、サクサク走る、だろうか。
好燃費を狙ったエンジンのダウンサイジングで、0-100km/h加速は旧型の6秒台から8秒台に落ちている、だから、もう3.5リッターV6の「フーガハイブリッド」と同じクラスではありませんと、試乗後に開発者からそう聞いて驚いた。そんな印象はなかったからだ。
むしろ旧型よりピックアップが鋭くなり、はるかにキビキビ走るようになったと感じた。今回はワインディングロードで堪能するようなことはできなかったが、右左折の立ち上がりでちょっと深めに右足を踏み込むと、後輪がウリウリとむずがるような力強さも見せた。
実際、今度のハイブリッドは、動力性能的ヒエラルキーにおいても203psの2.5リッターV6モデルをしのぐ位置づけだ。旧型にあった3リッターV6モデルがカタログから落とされたのはそのせいでもある。
ダッシュ中央にある8インチディスプレイにはハイブリッドユニットのパワーフローや充電の様子がリアルタイムで表示される。それを見ていないと、システムのやりとりをいちいち体感するのは不可能だ。停車直前に回生ブレーキのヒューンという音が聞こえることを除くと、およそ違和感のないハイブリッドである。4気筒化でエンジン自体の音は旧型より聞こえるようになったから、その点では、よりふつうのエンジン車っぽくなったとも言える。
「いつかは」から「いつでも」へ
この日乗ったのは、ハイブリッドのロイヤルサルーンGと「アスリートS」。今回はまずフロントグリルの好みでロイヤルサルーンかアスリートを決めるという人も多そうだが、足まわりは16インチのロイヤルサルーンGより17インチのアスリートSのほうがよりスッキリしていて好印象だった。
ただ、そのアスリートSにしても、乗り心地はいまひとつに思えた。実際、比べる人がいるかいないかは別にして、この価格だと「BMW 320i」や「メルセデス・ベンツC180」も候補に挙がるはずだが、乗り心地はライバルたちのほうがフラットで快適だ。わかりやすく言うと、「シャシーにお金のかかった感じ」は、これらのドイツ車にまだかなわない。
でも、新型ハイブリッドがクラウンの歴史に新しい1ページを加えるのは間違いないと思う。新しい4気筒ハイブリッドのおかげで、クラウンがかつてなくカジュアルになった。「いつかはクラウン」とお高く止まっていたクルマが、一転、「手が届く」というキーワードを掲げるようになった、その目的はユーザーの若返りだ。いつかは死んでく人ばっかりが乗っているクルマじゃあ、メーカーは困るわけである。そのためのエースとして登場したハイブリッドは、ユーザーの平均年齢を少なからず下げる効果がありそうだ。
となると、「クラウンワゴン」の復活もリクエストしたい。それもシューティングブレークみたいなカッコイイやつ。駆動用バッテリーの置き場がなくてワゴンのハイブリッドは無理というなら、V6モデルだけでもいい。このサイズの4ドアセダンを、若い人がそうそう求めるとは思えないからだ。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=峰昌宏)
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下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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