プジョー307XS 5ドア(5MT)【試乗記】
ヨーロッパからの回答 2001.10.06 試乗記 プジョー307XS 5ドア(5MT) ……239.0万円 わが国においてもヒットを続ける「206」シリーズに続き、その兄貴分にして、PSA(プジョー・シトロエン)グループのニュープラットフォームを使った最初のモデル「307」の正規輸入が開始された。販売は、2001年10月6日から。2リッターツインカムを載せた新しいプジョーはどうなのか? 『webCG』記者が、山梨県は小淵沢で乗った。お値段232.0万円から
革新の火は受け継がれたのか? 2000年9月開催のパリサロンでお披露目されたプジョーのコンセプトカー「プロメテ」は、翌年3月のジュネーブショーでは市販モデル「307」として発表された。フロントから天井にまで延びたフロントスクリーン、スライド式ドアなどは常識的なものに落ち着いたが、「モノスペースフォルム」と呼ばれる室内空間重視のボディスタイルは継承された。307は「プロメテの遺伝子をもつミュータント(突然変異種)」というのが、プジョーの主張である。
2001年10月6日、早くも日本での販売が開始された。わが国では、「XSi」「XS」「XT」の3種類(すべて右ハンドル)が用意されるが、いずれも2リッター直4ツインカム(137ps、19.4kgm)を搭載する。グレードによる違いは、「レザー」「ファブリック」「ベロア」といった内装の差と、XSiがノーマルより1インチ大きな17インチホイールを履くことくらいだ。ボディ形状は、XTは5ドアハッチだけだが、XSi、XSには、5ドアに加え3ドアモデルもラインナップされる。トランスミッションは、5ドアが4段AT(ティプトロニック付き)と5段MT、3ドアは5段MTのみとなる。
価格は、最廉価の「XT」3ドア(5MT)が232.0万円。「XT」と「XS」の5ドア(4AT/5MT)が、239.0/249.0万円。 「XSi」の3ドア(5MT)が257.0万円、5ドア(4AT/5MT)が264.0/274.0万円である。
平成不況のおり、販売台数が7年連続で前年度を上まわったプジョージャポンは、むろん、307シリーズを「206」と並ぶ量販モデルに育てるつもりだ。約100店舗のブルーライオンネットワークで、年6000台の販売を目論む。ライバルとなるフォルクスワーゲン・ゴルフは、243店舗で約1万8000台(ハッチバックのみ)だから妥当なところだろう。趣味性のみならず、「ハードウェアの面からも、ゴルフと真っ向勝負できる」と、プジョー関係者は胸を張る。
立派になった
プジョー307は、先代306より30mm長い2310mmのホイールベースに、全長×全幅×全高=4210(+180)×1760(+65)×1530(+140)mmのボディを載せる(カッコ内は306比)。従来モデルよりひとまわり大きくなったが、張りのある面構成のおかげで“うすらデカイ”印象は受けない。アルミ製ボンネット、フロントフェンダーの樹脂化などによって、重量増は60kgに抑えられ(306XSi比)、ウェイトは「XS」(5ドア/5MT)で1270kg。
ボディの拡大分は正直に室内空間に反映され、やや平板なドライバーズシートに座るとガランとして、「ずいぶん大きくなった」と感じる。遠くから始まるフロントスクリーン、三角窓風の縦バーが入るサイドウィンドウと合わせ、ミニバンに乗っているようだ。側面衝突に対応するためかドアも離れ気味で、先代比140mmも高くなった背丈とあわせ、ドライバー左右&頭上の空間は大変豊か。20cmほどの幅があるドアポケットが使いやすそうだ。
406「2.0」や206の「S16」モデルでおなじみの2リッター直4DOHC16バルブ「EW10J14」型ユニットは、最高出力137ps/6000rpm、最大トルク19.4kgm/4100rpmを発生。ボア×ストローク=85.0×88.0mmのロングストロークをもつオールアルミユニットである。
XSのマニュアルモデルに乗ると、左足の置き場がないのにとまどうが、エンジンはスムーズかつトルキー、剛性感高いボディは遮音にも優れ、プジョーの中堅モデルはずいぶん立派になった。
なお、307に使われる5段MT(BE4型)は、シフトリンケージが「リンク」から「ケーブル」式に変更された。「全体としては軽く、しかし稼働部分はあえて重くしてフィールに考慮した」という。ギアの動きは滑らかだ。
企画勝負の波
うねりながらの低中速コーナーが続く。新しいプジョーに鞭入れ走ると、相変わらずステアリングホイールを握るのが楽しくはあるが、しかし、かつてのスロットルペダルでリアタイヤをステアさせるがごとき軽やかさ(トリッキーというヒトもいる)は影をひそめた。
プジョー307のサスペンションは、フロントは基本的に306と同じ、L字アームを用いたマクファーソンストラット/コイルながら、キャスター角を増して直進安定性を重視したセッティングが施された。リアは、本国でのライバル「ルノー・クリオ」に歩調を合わせるごとく、アウディ由来のトーションビーム/コイルが採用された。
もちろん、サスペンション形式はひとつの要素に過ぎないが、トレーリングアーム/トーションバーの後足にひとつのアイデンティティを見ていたリポーターは、やや寂しい。そのうえ、乗り心地はドイツ車流(?)に硬めで、運転中にフランス車を感じるのは、大きなフロントシールド下端から見える景色が少々ゆがんでいることくらいである。
「307はゴルフより何が優れているのですか?」。試乗を終えてプジョージャポン広報担当の方にうかがうと、「まずコンセプトが新しいですし、安全装備も充実しています」とおっしゃる。新しいプジョーは、膨張速度を自動的に3段階に切り替える「スマートエアバッグ」、前席サイドエアバッグ、そしてカーテンエアバッグを、全モデル標準で装備する。前席には、追突された際にヘッドレストが前方に動いてムチ打ち症を防止、軽減する「アクティブシートバック」機能が組み込まれた。
ホテルの前で撮影されるプジョーに夕日が当たる。サイドに走るキャラクターラインが美しい。「新しいコンセプト」とは、ピープルムーバーの要素を取り入れたモノフォルムデザインのことであろう。欧州の、速度が高い交通事情を背景に、めったにない7人乗車の機会のためにハンドリングを犠牲にすることなく、しかしミニバンなみの居住空間は確保する。そこに“フランスのエスプリ”や、クルマのシロモノ家電化を否定する”ヨーロッパからの回答”を見たつもりのリポーターに、広報担当氏が言葉を続けた。
「フランクフルトショーで発表された307ワゴン(SW)に続き、間もなく同じシャシーを使った3列シートモデルが姿を現わすはずです。307(ハッチバック)は、今後プラットフォームを4つに統合するという、プジョーの新しい戦略の最初のモデルなんです……」。
「エミッション」「燃費」「衝突安全」などの規制に縛られるかの地の自動車業界にも、わが国がドップリ浸る“企画勝負”の波がヒタヒタと押し寄せるのであった。
(文=webCGアオキ/写真=阿部ちひろ/2001年10月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】 2026.6.3 「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。
-
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】 2026.6.2 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
NEW
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.6.5試乗記「ホンダ・インサイト」が電気自動車(BEV)として復活! ……というよりは中国工場製BEVにその名が与えられて日本にやってきた。さまざまな事情により、国内で販売されるのはわずか3000台のみ。日本人は“限定”に弱いとされるが、果たしてこの場合はどうか。 -
NEW
KTM 990 RC R(6MT)
2026.6.5JAIA輸入二輪車試乗会2026今年も開催された「JAIA輸入二輪車試乗会」より、魅惑のバイクを一挙紹介! 先陣を切るのは、この4月に発売されたばかりの「KTM 990 RC R」だ。オーストリアの雄が放つ最新鋭のスーパースポーツは、意外や“速さ”以外にも見どころの多い一台だった。 -
NEW
空冷の「スポーツスター」が復活!? ハーレーダビッドソンの定番商品はどんなバイクとなるのか
2026.6.5デイリーコラムハーレーダビッドソンが、一度は廃止した空冷の「スポーツスター」の復活を発表! 伝統の一台はなぜ絶版の憂き目にあい、そしてよみがえることとなったのか? ファンに愛される定番車種を刷新する難しさと、新型に課せられた使命、そして課題を考察した。 -
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。 -
第964回:フィアットグッズのコレクターから学ぶ人生訓
2026.6.4マッキナ あらモーダ!イタリア在住の大矢アキオが、トリノで著名なフィアットグッズのコレクターを取材。若き日の苦労を経て大成した人物が語る、人生で大切なものとは? フィアットやイタリアの歴史を物語る、貴重なコレクションの数々とともに紹介する。














