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【スペック】全長×全幅×全高=4940×1875×1495mm/ホイールベース=2910mm/車重=1850kg/駆動方式=4WD/2.8リッターV6DOHC24バルブ(204ps/5250-6500rpm、28.6kgm/3000-5000rpm)/価格=640万円(テスト車=851万5000円)

アウディA6アバント 2.8FSI クワトロ(4WD/7AT)【試乗記】

藍より青し 2012.03.25 試乗記 鈴木 真人 アウディA6アバント 2.8FSI クワトロ(4WD/7AT)
……851万5000円

セダンに遅れること半年、「アウディA6」にワゴンモデルが追加された。セダン同様軽量化を図りながら、見た目の美しさにもこだわった新型「A6アバント」に試乗した。
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スタイル優先でも本分を忘れない

「美しくなければアバントと呼ばない」のだそうだ。世にはびこる「美しすぎる○○」という釣り表現に辟易(へきえき)していたから、つい眉に唾を付けたくなってしまう。でも、「アウディA6アバント」を目の当たりにして、この惹句(じゃっく)に誇張はないと思ったのだ。先代より洗練度を増したのはもちろん、先駆けて販売が開始された新「A6」のセダンに比べても完成度は高い。フロントマスクは同じなのだが、横から見るとルーフラインがなめらかに後方に向かって下降する様子がなんともきれいだ。

リアから眺めても、コンビネーションランプから下の立体的な造形に心引かれる。「A1」のリアスタイルも同様の形状になっていて、これはハッチがあるからこそのデザインだ。前から見ると少々威圧的にも感じられる顔だが、サイドとリアは控えめで流麗なラインを構成する。良いバランスだと思う。

スタイル優先のワゴンといえば、古くは「アルファ・ロメオ 156スポーツワゴン」という先達(せんだつ)がいる。ワゴンとしては衝撃的なフォルムをまとっていたのだが、それは本来の目的である積載性を軽視することによって実現されていた。「156」のセダンが378リッターの荷室を持っていたのに、スポーツワゴンはそれを下回る360リッターだったのだ。そこがアルファらしさなんだろうが、どう考えたって本末転倒である。その点、A6のワゴン版であるアバントは大人だ。荷室容量は通常時で565リッターを確保し、リアシートを倒せば最大1680リッターの空間が出現する。

テスト車にはオプションのミラノレザーのコンフォートシートが装備されていた。コンフォートシート用のカラーはブラック(写真)のほか、ヌガーブラウン、チタニウムグレー、ベルベットベージュの4色から選べる。
テスト車にはオプションのミラノレザーのコンフォートシートが装備されていた。コンフォートシート用のカラーはブラック(写真)のほか、ヌガーブラウン、チタニウムグレー、ベルベットベージュの4色から選べる。 拡大
「A6」セダンと同じフロントマスクは、ワシをイメージしたとされる。
「A6」セダンと同じフロントマスクは、ワシをイメージしたとされる。 拡大
リアのコンビネーションランプはLEDを採用。
リアのコンビネーションランプはLEDを採用。 拡大
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身のこなしに表れるダイエット効果

ドライブトレインはセダン版と変わらない。2種のV6エンジンと7段Sトロニックが組み合わされ、クワトロことフルタイム4WDで駆動する。「Audi ultra(アウディ ウルトラ)」と名付けられたボディー軽量化技術が採用されているのも同様だ。アルミニウムと高張力鋼板を多用して、先代より約20kgダイエットしている。10年前からすれば200kgほど重くなっているのだが、大型化と安全装備や快適装備の増加を考えれば健闘していると言えるのだろう。

アウディ得意のインテリアは、見事に隙が見当たらない。包丁をモチーフにしたというダッシュボードのデザインもさることながら、ウッドパネルの質感はひとつふたつ上のクラスのようだ。こちらが慣れてきたせいもあるのかもしれないが、MMIも初期のものより使い勝手が向上したように感じる。操作方法は直感的で、信号待ちの間にiPhoneをブルートゥースで接続することができたのはありがたかった。

今回試乗したのは、2.8リッターのNAエンジンを搭載した「2.8FSI」だ。204psという数値は3リッタースーパーチャージャーエンジンを搭載した「3.0TFSI」の310psの前にはいささか頼りないようであるが、懸念は無用だ。低回転でもトルクは十分に出ていて、不足があったとしても賢い7段Sトロニックがそれを感じさせないように働く。セダンよりは40kgほど重くなっているが、軽快な運転感覚が損なわれてはいない。実際よりもボディーが小さく感じられるのは、セダンと同様だった。

重量増は、乗り心地に関してはプラスに働いたかもしれない。20インチの大径タイヤがオプションで装着されていたが、運転席にいる限り路面からの不快な突き上げに苦しむ事態は訪れなかった。標準装備のBOSEオーディオシステムで音楽を楽しみながらのドライブは、街中だけでの試乗でもゆったりした気分を誘う。つまり、静粛性も合格点だったということだ。

インテリアデザインは、セダンと基本的に同じ。アバントには、電動パノラマサンルーフがオプション設定される。
インテリアデザインは、セダンと基本的に同じ。アバントには、電動パノラマサンルーフがオプション設定される。 拡大
204psを発生する2.8リッターV6エンジン。
204psを発生する2.8リッターV6エンジン。 拡大
テスト車には、オプションの10パラレルスポークデザインアルミホイールと265/35R20タイヤが装着されていた。標準は5アームのデザインアルミホイールと245/45R18タイヤ。
テスト車には、オプションの10パラレルスポークデザインアルミホイールと265/35R20タイヤが装着されていた。標準は5アームのデザインアルミホイールと245/45R18タイヤ。 拡大
 
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練習を要求されるテールゲート

アバントのみの新機能として、「バーチャルペダル付きオートマチックテールゲート」がある。リモコンキーを持ってリアのバンパーの下に足を差し入れて動かすと、ハッチが勝手に開くのだ。両手がふさがっている時に便利だという。フォードやメルセデス・ベンツも同様な装備を取り入れているから、最新の流行なのかもしれない。

しかし、これがなかなかコツのいる作業なのだ。いくら足を動かしても反応してくれず、ハッチを開けるのに10回近くも奇妙な挙動を繰り返すことになった。一度成功しても、同じような動きで必ず動作するとは限らない。猫が通っただけで開いてしまっては困るのでセンサーの感度を調整しているようだが、かなり練習しないと使いこなすのは難しいだろう。すべてが洗練の極であるA6の中で、ドライバーのスキルを要求する部分があるのが面白い。1万5000円のオプションなら付けておくのも一興かと思ったが、よく見たらゼロがひとつ多くて15万円だった……。

アウディではA6アバントの年間目標販売台数を800台に設定している。これに販売価格をかけあわせると結構な金額になるのだが、この数字は控えめにすぎるような気もするのだ。もともとA6はワゴン比率が高いようで、最上級のワゴンとしての魅力は侮りがたい。セダンとの価格差はわずか30万円である。ネガな部分は見いだせなかったのに、利便性に加えてスタイルにもアドバンテージを持つ。選ぶ理由としては、十分すぎるように思える。

(文=鈴木真人/写真=峰昌宏)

リアシートは6:4分割の可倒式。3リッターモデルにはシートヒーターが標準装備されるが、2.8リッターではオプションとなる。
リアシートは6:4分割の可倒式。3リッターモデルにはシートヒーターが標準装備されるが、2.8リッターではオプションとなる。 拡大
荷室は、通常565リッターを確保し、後席のシートを倒すことで最大1680リッターまで拡大することができる。後席シートは、荷室の両サイドにあるレバーでも簡単に倒すことができる。新しくオプション設定される「バーチャルペダル付きオートマチックテールゲート」は、キーを持ってリアバンパー下に足をかざし、上に上げるような動作をするとテールゲートが自動的に開く。
荷室は、通常565リッターを確保し、後席のシートを倒すことで最大1680リッターまで拡大することができる。後席シートは、荷室の両サイドにあるレバーでも簡単に倒すことができる。新しくオプション設定される「バーチャルペダル付きオートマチックテールゲート」は、キーを持ってリアバンパー下に足をかざし、上に上げるような動作をするとテールゲートが自動的に開く。 拡大
【テスト車のオプション装備】
ボディーカラー(メタリック/パールエフェクト)=8万5000円/プレセンスパッケージ=50万円/SEパッケージ=22万円/コンフォートシート=36万円/LEDヘッドライト=30万円/バーチャルペダル付きオートマチックテールゲート=15万円/電動パノラマサンルーフ=25万円/10パラレルスポークデザインアルミホイール/265/35R20タイヤ=25万円
【テスト車のオプション装備】
	ボディーカラー(メタリック/パールエフェクト)=8万5000円/プレセンスパッケージ=50万円/SEパッケージ=22万円/コンフォートシート=36万円/LEDヘッドライト=30万円/バーチャルペダル付きオートマチックテールゲート=15万円/電動パノラマサンルーフ=25万円/10パラレルスポークデザインアルミホイール/265/35R20タイヤ=25万円 拡大
鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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