BMW 523i(FR/8AT)【試乗記】
得した気分を味わえる 2012.03.19 試乗記 BMW 523i(FR/8AT)……708万7000円
仕様変更により、エンジンが2.5リッター直6から2リッター直4ターボに載せ換えられた「523i」。セダンモデルでその走りと燃費性能を試した。
2リッターの「5シリーズ」
6速、1200rpmで50km/h。スーッと加速していって、7速へ。そのうちにトラフィックが遅くなって……52km/h。まだ7速。1050rpmぐらい。まだ直結。つまり、ロックアップのクラッチは離れても滑ってもいない。速度キープ、全然イージー。多少の加速もそのままイケる。でもさすがに1000rpmを下まわると、ATはギアを1段落とす。ん〜。
と、「523i」は例えばそんな状況というか運転というかが“Freude am Fahren”だったりもするわけです。駆け抜ける、ヨロコビ……の漢字は“喜び”か。ドライバーの要求にクルマ側がキッチリ応えて、ヤレといわれたことをやってくれると、なにもぶっ飛ばしたりしなくたってドライビングプレジャーはある。かなりある。
東京都品川区の自宅を出発して、都心環状線から常磐道へ。谷田部出口の料金所までの64km区間(平均車速75.1km/h)の燃費は、オンボードコンピューターによると18.2km/リッター。3時22分スタートでいまは4時15分、なんて情報も画面から読める。「iDrive」をチャチャッとやってトリップボードコンピューターを出して、それをスタート時にリセットするだけ。それもプレジャー。ガソリンはハイオク。距離計誤差、ほぼゼロ。
523iのエンジンは、排気量でいうと2リッター。4気筒ガソリン直噴にターボ過給(欧州だと「520i」相当のチューン)。トランスミッションはトルコン+8段プラネタリー。車重は1770kgで前が860kg、後ろは910kg。後ろの軸重のほうが重たいぞ。
2トン超の「フォード・エクスプローラー」がEcoBoostエンジンでフツーに元気よく走ってしまうので、1.8トン未満のコイツに2リッター4気筒が載ってるぐらいは昨今、フツー。でも、こんなちっちゃいエンジンの5シリーズがこんなにイイってのはやっぱ、トクした気分になりますよ。なにしろ、本体610万円で買える。調子こいてオプションを足してくと、この個体がそうであるように700万円を超えますが。
プラス100万円弱の内訳は、テスト車のオプション装備を見てもらうとわかるけど、電動シートやiDriveは標準でついてるから、俺ならナンにもつけずに買うなあ。いやUSBはほしいかな。iPod用に。
後輪ステアはどうなんでしょう?
さすがビーエムというべきか、右ハンドルの運転環境はほぼ、パーフェクト。ひょっとして左ハンドルのバージョンはもっといいかもしれないので「ほぼ」。後席の着座環境もやはり……と思いながら座ったら、惜しい!! 姿勢や空間は大筋バッチリなのだけど、骨盤のサポートがなぜかスカッと抜けている。抜けてちゃマズいと思ってお尻を奥のほうへエイッと押し込むと、今度は腰椎のところにバックレストの出っ張りがグギューッと。これってなんか、ワケもわからず「使わなソン」とばかりにランバーサポート調整を最強に調整しちゃったときみたい。
フと見ると、後席の座面と背もたれの境界部分がたしかに抜けている。チャイルドシートを装着しやすいようにISO FIXのキャッチ側のところのクッションをなくして、カタいプラスチックで覆ってある。背もたれのみを倒して荷室空間を拡大するフォールディング機構を採用しながら、着座姿勢はちゃんとしている、ところまではすごく優等生なのに。
ステアリングホイールのロック・トゥ・ロックは2回転とホンのちょっと。そう、日本仕様の5シリーズにはアクティブステアリングが標準装備でございます。今回はインテグレイテッド、つまり4WAS。後輪もステアするタイプ。なので、手応えだけに注目していると低速域で前輪に思ったより切れ角がつきまくってビックリということはあまりない。または、ほとんどない。なぜなら、後輪を逆方向へステアするのもコミで小回りを実現してるから。クルマ全体としては、ミョーにクルッと曲がる感じはハッキリわかる。便利なのかあ?
「インテグレイテッド・アクティブ・ステアリング」は、試乗した感覚では70km/hまでは後輪逆ステア。クルッと曲がる。アンダーステアにならなくてイイ……のか? 乗った感じとしては、きったハンドルが、ピッとまた真っすぐに戻るときの感じがイマイチなくてヘン。どうも残尿感ぽい。
70km/hより速い領域では、後輪は同相ステア。70km/hを境にしてマップAとマップBがパタッと入れかわるような単純な制御にはなってないだろうけど、でも例えば同じコーナーを60km/hで曲がったときと80km/hで曲がったときのクルマの動きは明らかに違う。80km/hで曲がると、コーナリングの早い段階から後ろがグッと踏ん張るのがこれまたハッキリわかる。ということは、ゲンミツにいうと同じカーブを走るときでも60km/hのときと80km/hのときでは違う運転をしないといけない。で、それってどうなんでしょう。
実際には、インテグレイテッド・アクティブ・ステアリングがついてるせいでセンターラインを踏んじゃったとか、壁にクルマをコスっちゃったとかいうことにはなりません。たとえテキトーに運転していても。というか、そうなった場合はドライバーの責任。でも、クルマの挙動というか反応というかは明らかに違う。リア逆相のときとリア同相のときとは。アクティブステアリングはあくまでお好きなかたがあえて選んでつけるもの、という扱いであるべきでしょう。
素の状態を味わいたい
サブフレームやステアリングラックの取り付け等もふくめた車体骨格のガッチリ度はこのクルマ、おそらく相当高い。アシの素性もハンパなくよさげ。特にリア。だからこそ、4輪アクティブステアリングが「どうなんでしょうねえ」のレベルで済んでるとも考えられる。ヘナチョコなクルマにつけたら、きっと「ウギャーやめてくれー!!」になるだろうから。
でも、そうであるだけになおのこと、余計なデバイスのついてない素の状態を味わいたい、ということもすごーくあるわけです。5シリーズに関しては。
ランフラット標準装着はもうしょうがないとして。あと電動パワステと。どちらもクルマのベースがちゃんとしてるから、ナンとかなってる部分はおそらく相当ありますよ。
ステアリングのアシスト制御やオートマの変速の制御とセットで行われる、ダンパーの減衰力の切り替えは、スイッチひとつで完了。乗り心地ってことでいうと、モードはどこでもいいでしょう。お好みで。ひょっとして、ハイスピード領域ではスポーツ系にしたほうが快適かもしれません。たわまないタイヤのドドン・ブルブル系の上下動をスッキリ抑え込むことができて。
ベンツの「Eクラス」とアウディの「A6」とこれと3つあるなかで、俺が今どれかをどなたかにオススメするとしたら、取りあえずBMWですね。払ったオカネに対する見返りということでは、ビーエムが一番ズッシリあるようなので。マーケティングやイメージや看板の力で買わせてナンボの高額ブランド商品……には、一番なってないっぽい。クルマとして骨太度が高い。「528i」は乗ったことないけど、でも523iで速さが足りなかったとか、まったくなかったし。
あと、ビーエム内の比較ということだと3シリーズよりは5シリーズ。余計なことを考えなくてもアソコと決めたところへ「スーッ、ピタッ」と止まれるブレーキ環境がバッチリ整ってるということだけでも5シリーズの勝ち。非制動時の引きずり抵抗を極限まで減らしたからなのかナンなのか、どうも3シリーズ、ブレーキが……。具体的には、常に気をつけていないとカックン的なGのピークを出しちゃいやすい。
というわけで523i、注文つけたいところはいくつかあるにしても、ヨカッタ。余談としては、ウチの奥さんも助手席で喜んでおりました。首都高やハイウェイやイナカのすいた道のほかに都内一般道もチョロッとは走りつつ合計373.6km。借りてた間(平均車速は55.2km/h)の平均燃費は、13.7km/リッターでした。
(文=森慶太/写真=郡大二郎)

森 慶太
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