第289回:検証! ルノー入魂のスペシャルパーツ(ルーテシアR.S.編)
2015.04.10 エディターから一言ルノー・ジャポンが、コンパクトなハイパフォーマンスモデル「ルーテシア ルノースポール(R.S.)」の性能をさらに高めるスペシャルパーツをリリース。その発売に合わせて、購入サポートキャンペーンもスタートさせた。
品目は、大きく分けて3種類。一体、どんなアイテムなのか? 実際に走りは変わるのか? テスト車の試乗を交えて報告する。
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ユーザーの期待に応えて
ルーテシアR.S.は、ルノー直属のモータースポーツ部門であり、フォーミュラやラリーカーの開発、ワンメイクレースの運営などを手がけるルノースポールが生み出した市販スポーツモデルだ。つまり単なる高性能ハッチバックではなく、モータースポーツの経験を注ぎ込んだ“本物”である。実際ヨーロッパでは、基本的に同じ仕様の車両が、ワンメイクレースで活躍している。
だから先代までのルーテシアR.S.は3ドアのMT車という硬派な成り立ちであり、われわれもそれを納得していた。ところが現行型では一転、5ドアボディーにデュアルクラッチトランスミッションというスペックになり、一気に万人向けになった。おかげでわが国での販売台数は大幅に増加しているという。
しかしながら、歴代R.S.同様、走りへの情熱はいささかも薄れていない。ユーザーにもその姿勢は伝わっていて、さらなるスポーツマインドを求める向きも多い。
そんな気持ちに応えたのがルノー・ジャポン。専用開発の軽量鍛造アロイホイール、リアスポイラー、マフラーを用意してきた。しかも多くのユーザーにその効果を体感してほしいという配慮から、新車購入者を対象に購入サポートも実施しているのだ。
品質はタイムに表れる
ガンメタとホワイトのカラーが選べるアロイホイールは、世界的に有名なホイール設計者のひとりであるロベルト・マルケジーニ氏の手になる。彼を起用した理由は何か、ルノー・ジャポン マーケティング部のフレデリック・ブレン氏に聞いた。
「イタリアンデザインならではの美しさと、1本あたり約3kgものダイエットを達成した軽さです。ルノースポールのテストドライバーにも乗ってもらい、OKをもらっています。最初は『スポークが細すぎないか?』などと言われましたが、鈴鹿サーキットのアタックではノーマルより良いタイムが出ました」
リアスポイラーはワンメイクレース用を参考に、取り付け強度などを市販車にふさわしいレベルに引き上げたもので、ホワイトとシルバーを用意。アンテナまでシャークフィンタイプで作り直すというこだわりぶりだ。そしてマフラーは日本を代表するメーカー、フジツボとの共同開発。意外なことにフランス製ではない。
「フジツボさんには10年以上前からルノーのマフラーを作ってもらっています。日本製ならではの信頼性の高さを評価しています。コストパフォーマンスも魅力です。外国製でわが国の規制に合ったマフラーをこの価格、この品質で提供するのは難しいでしょう」
ルーテシアR.S.用には、ノーマル比5.3kgもの軽量化を実現するチタン製と、価格的に求めやすいステンレス製を用意。今回はチタン製マフラーと鍛造アロイホイール、リアスポイラーを装着したデモカーで試乗を行った。
全方位的にレベルアップ
ワンメイクレース仕様車をイメージしたステッカーで彩られたボディーはサーキットの匂い。このいでたちにリアスポイラーは必須だ。それでいてルーテシアが持つ洗練美をキープしているのは、マルケジーニ・アロイホイールの造形美のおかげだろう。
キャビンに収まってエンジンをかけると、音に驚かされた。爆音ではないけれど、ノーマルとは明確に違う。早速スタートすると、ノーマルでは抑え気味だったサウンドが、フォーンという抜けのいい音色に変貌していて、うれしくなる。効率重視という傾向もあるダウンサイジングターボに、音で色気をプラスしているのだ。
続いて軽さを実感する。試乗車はカップシャシー仕様で、ホイール/タイヤは18インチとハードなスペック。にもかかわらず、路面からのショックを巧妙にいなしてくれるのは、足元が軽くなって動きの自由度が増しているからだろう。ステアリングもより軽くスッと切れるようになって、走りが一層リズミカルに楽しめるようになった。
現行ルーテシアR.S.は、5ドア2ペダルとなったことで、機能性や快適性が飛躍的に高まった。一方、今回のスペシャルパーツは、持ち前のスポーツ性を全方位的にレベルアップした。ルーテシアR.S.が有するオールラウンド性に、さらに磨きがかかったようだ。
(文=森口将之/写真=田村 弥)
■ルノー・ルーテシアR.S.「キット スポール キャンペーン」
◇キャンペーン概要
2015年7月31日までにメガーヌR.S.の新車(限定車、特別仕様車を除く)を購入した場合、下記スペシャルパーツの購入費合計額のうち、15万円をルノー・ジャポンがサポートする。
◇パーツ価格(全て1台分。取り付け費用は含まず)
・軽量鍛造アロイホイール(ガンメタ):29万3760円
・軽量鍛造アロイホイール(ホワイト):31万5360円
・専用チタンマフラー:23万580円
・専用ステンレスマフラー:12万7440円
・専用リアスポイラー(ホワイトまたはシルバー):20万3472円
・専用リアスポイラー(無塗装):14万4288円
※ホイールは、いずれも専用エアバルブ付き。
※リアスポイラーには、シャークフィンアンテナが付属。上記価格はリアスポイラーと同色の場合。

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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