第302回:アルファ・ロメオ復興なるか!?
~新生「ジュリア」発表会の会場から(後編)
      
      2015.07.06
      エディターから一言
      
      
      
      
  アルファ・ロメオの新生「ジュリア」が、いよいよその姿を現した。日本市場への導入も予定されているこのセダンは、いったいどんなクルマなのだろうか? 前編に続き、イタリアはミラノの発表会で得られた情報をお届けする。
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ドイツのライバルもたじたじ!?
(前編からのつづき)
メタリックレッドのジュリアは、最上級グレードなのだろう、見るからに大きなタイヤ&ホイール、控えめだが主張のあるエアロパーツ、そして左右2本ずつ計4本出しのマフラーを備えている。
会場内で明かされた最上級グレード「クアドリフォリオ」のスペックはごく一部だったが、そのスタイリングを目の当たりにし、“中身”の話を聞けば、自然と心も騒ぎだす。
ジュリアは、FRもしくは4WDの、欧州Dセグメントに相当するサルーンだ。前後重量配分は50:50で、心臓部はフェラーリのテクノロジーを詰め込んだオールアルミ製直噴V6ターボ。最高出力510hpで、パワー・ウェイト・レシオはなんと2.99。0-100km/h加速は4秒を切る3.9秒を実現というから、半端じゃない。トランスミッションは、写真を見る限り、2ペダル式DCTのほかに3ペダル式マニュアルも用意。ライバルはずばり、「BMW M3」「メルセデスAMG C63」、そして「アウディRS 4」。
現在、セグメントトップの性能をうたう新型C63の数値は、パワー・ウェイト・レシオが3.4で0-100km/h加速が4.0秒だから、いかにジュリア クアドリフォリオの走りが過激か、想像することはたやすいはず。もちろん、その走りそのものへの期待も、大いに……!
本物のDNAを伝えるモデル
面白いのは、このジュリアを開発するにあたって、アルファ・ロメオはこれまでと全く違う開発手法を採りいれたことだ。それは、ロッキード・マーティン社の伝説的な開発チーム“スカンク・ワークス”にちなんで、“スカンクス”と名付けられた。
要するに、首脳陣が欲するアルファ・ロメオとは、純粋にブランドヘリテージを尊重し、その一線上にはありながらも、過去30年のしがらみから解放された、全く新しく、けれどもピュアでオーセンティックなアルファ・ロメオなのだ。それゆえ、若い人材を中心としたスカンクスが秘密裏に招集され、全く独立した開発機関として、2年間にわたり首脳陣しか知らぬ場所で活動したという。彼らはフィアット クライスラー オートモービルズ(FCA)のリソース全てに到達可能なフリーハンドを与えられ、ジュリアの開発に白紙から取り組んだのだった。
「だからこそ、この新型セダンは、従来のモダンアルファ・ロメオとも、そして今世界を席巻するジャーマンプレミアムとも一線を画するモデルに仕上がった」と、マルキオンネは豪語した。「ジュリアこそは、アルファ・ロメオの、本物のDNAを現代に伝えるモデルであるのだ」とも。
感動のジュリア発表会に立ち会ったのち、われわれは、ベルガモの星付きリストランテ「ダヴィットリオ」がサービスするフランチャコルタとクラテッロで小腹を満たしつつ、白と赤のジュリア クアドリフォリオをじっくり観察した。
筆者が特に興味を持ったのは真横から見たプロポーションで、それはBMWのセダンに近い。つまり、前後重量配分50:50の“FRプロポーション”だ。
全体的に「3シリーズ」に似て見えるのは、「3シリーズを研究しつくしたから」ではなく、「現代のDセグメントパッケージで理想を追求したら、似たようなシルエットに仕上がった」というのが本当のところだろう。ディテールのデザインは、さすがに彫刻的で、前後のフェンダーラインやルーフからトランクにいたるカーブが、なんともなまめかしい。早く、日の光のもとで眺めてみたいものである。きっと、印象がまるで違うはずだ。
今後のアルファは新作ラッシュ!?
FCAがアルファ・ロメオのヘリテージに最大限の敬意を払い、歴史に学ぶと誓ってブランド再生に乗り出したということは、ムゼオ・ストリコ・アルファ・ロメオのリニューアルオープンにもよく表れている。
題して、“ラ・マッキナ・デル・テンポ(時代を飾った名車たち)”。250台の所蔵品の中から、特に69台を選んで展示。最初のA.L.F.A.である「24HP」に始まり、戦前のミッレミリア・スーパースターや、グランプリマシン、そしてなじみの深い戦後のモデルやレーシングカーが、フロアごとのテーマにのっとって展示されている。既に、一般公開も始まった。ミラノ周辺に旅行の際には、ぜひとも立ち寄ってほしい(開館時間:10時~18時、木曜のみ夜22時まで<火曜休館>)。
FCAという組織ができて、アルファ・ロメオ再生の条件がようやくそろった。現在、7万台にも満たない生産台数を、2018年までに40万台までに引き上げるという。それだけ“新しいアルファ”が登場するということだ。ジュリア派生モデルはもちろんのこと、大小クロスオーバーSUV、新型「スパイダー」、そして「8C」の後継となるスーパースポーツまで……。アルファ・ロメオが真に復活する日は、すぐそこまできている!
その確信とともに、迎えたディナー。施設内レストランでダヴィットリオの、パーティー料理離れしたメニューの数々に舌鼓を打つ。アルファ・ロメオ好きで良かった、と、その幸福を全身で実感した一日だった。もちろん、翌朝早くの便で、アメリカのレースへ舞い戻ったことは、言うまでもない。
(文=西川 淳/写真=FCA、FCAジャパン)

西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
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