第380回:新型「マツダCX-5」が狙ったモノ
ここでも見つけたマツダ理想主義!
2016.11.21
エディターから一言
拡大
|
マツダはロサンゼルスオートショー(開催期間:2016年11月14日~27日)で新型「CX-5」を世界初公開した。このクルマで表現していること、そしてそこに込められた思いを、自動車ジャーナリストの小沢コージが開発陣に聞いた。
拡大
|
拡大
|
拡大
|
「魂動」デザインを熟成
「ヒトコトで言うとプレミアム化です」
とはマツダノースアメリカンオペレーションズの副社長、大塚正志さん。小沢はこの言葉を聞いた時、ハッキリと2代目CX-5の開発意図がわかった気がした。まずデザインが露骨に熟成の方向で来ていたからだ。
LAショーの前夜祭で、新型CX-5を初めて見た時、小沢は正直アレ、一体前とどこが違うんだ? と思ってしまった。もちろんよく見るとすべてが新しくなっていて、グリルはワイド化され、特に下唇が分厚くワイルドになってると同時に、ライトは薄く鋭くなってる。
なによりもプロポーションだ。タイヤの前後トレッドが10mm幅広くなってるのと、ビックリしたのはフロントピラーの位置が35mm後退していること。さらにグリルが露骨に逆スラント化してるから、ノーズはますますワシの鼻のように伸びてワイルド化。まさか室内スペースを犠牲にしてまでダイナミズム優先にするとは。確かに味濃くなってます。
それでいて全体はまさしくCX-5のイメージをキープ。明らかに熟成方向で、デザイン・ブランドスタイル担当の常務執行役員である前田育男さんを直撃すると、
「変化球を投げてるわけじゃありませんから。しっかり、現行型の“ポジティブテンション”がこの新型では“ネガティブテンション”になってるでしょう」
ますます美しく成長していくデザインでありたい
さらにチーフデザイナーの諌山慎一さんにも聞いてみたが、
「新型を単なるアイキャッチにしたいわけじゃない。それとは逆の想いの方が大きいです。それよりとにかく飽きずに長く愛していただきたいと」
要はパッと見のインパクト以上に、何年も飽きない美しいデザインを目指したわけで、なにより面白かったのが小沢が「カーデザインってスーパーカーにせよ、実用車にせよ、古い方がカッコいいって言われる場合が多いですよね」と言った時だ。
「それはおかしいと思うんです。法律とか安全性能のために劣化していくのではなく、どんどん美しくなるカーデザインにしたいと」。
現実にはさまざまな要件で劣化していくデザインが多い中で久々のガンコな反骨精神。マツダ理想主義、ココにも見たりという感じだ。
それはインテリアもそうで、見たとたん欧州のプレミアムカーもかくやと思えるマテリアルクオリティーの高さと同時に、シフト面が高くなって一体感が増しているのに気づく。既にライバルは欧州車といわれるマツダだが、その方向は明らかに強化されている。
ついでにユニークなのはボディーカラーへのこだわりで、今回「ソウルレッドプレミアムメタリック」に代わる「ソウルレッドクリスタルメタリック」を新開発。先日発表された「マシーングレープレミアムメタリック」より発色が難しいそうで、塗装の乾燥の工程からして手間がかかるとか。
でもそういった細かいディテールにこだわってまで己の理想を追求するのが今のマツダ。2代目CX-5にもその体質は確実に反映されている。
アメリカこそディーゼルが合っている
一方、中身というか走りだが、開発主査の児玉眞也さんによると、プラットフォームは基本旧型のキャリーオーバー。だが、前述の大塚さんいわく、既に北米市場で出ている全長5m超の大型SUV「CX-9」開発時に共有プラットフォームを大幅強化したとのこと。今回小沢も世界カーオブザイヤー試乗会でそこを実感しており、そのソリューションを新型CX-5に投入しているからボディーはムチャクチャしっかりしているというし、児玉さんも、「全体が1枚マスキングされたんじゃないかっていうくらい静粛性、乗り心地は良くなってます」と自信満々。シートにも新しいコンセプトを導入して、相当座り心地が良くなっているとか。
また今回の新型CX-5と同時に投入が決まった北米初のディーゼル仕様だが、「アメリカは日本以上に超渋滞しますが、絶対に止まらない。止まりそうで止まらずに突然加速したり速度を落としたり。そういうシーンにこそディーゼル。ディーゼルエンジンこそがアメリカ向きなんですよ」と大塚さん。実は軽油価格がガソリン価格より高かったりする北米。経済性というよりクオリティーアップのためにディーゼル投入を決めたのが真実なのだ。
それもこれもCX-5こそが今の絶好調マツダのスカイアクティブ革命の第1弾であり、象徴たる年間グローバル販売37万台の稼ぎ頭だから。そのうちの約4割が北米だそうで、そりゃコッチで頑張るっきゃないし、革命の手を緩めるわけにもいかないわけだ。
一見ビックリするほどの変化はないけど、確実に美しく、なおかつ全体的に濃くなってるって話のニューマツダCX-5。国内試乗が楽しみですなぁ。
(文=小沢コージ/写真=Victor Decolongon/Getty Images for Mazda Motor Co./編集=竹下元太郎)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第855回:タフ&ラグジュアリーを体現 「ディフェンダー」が集う“非日常”の週末 2025.11.26 「ディフェンダー」のオーナーとファンが集う祭典「DESTINATION DEFENDER」。非日常的なオフロード走行体験や、オーナー同士の絆を深めるアクティビティーなど、ブランドの哲学「タフ&ラグジュアリー」を体現したイベントを報告する。
-
第854回:ハーレーダビッドソンでライディングを学べ! 「スキルライダートレーニング」体験記 2025.11.21 アメリカの名門バイクメーカー、ハーレーダビッドソンが、日本でライディングレッスンを開講! その体験取材を通し、ハーレーに特化したプログラムと少人数による講習のありがたみを実感した。これでアナタも、アメリカンクルーザーを自由自在に操れる!?
-
第853回:ホンダが、スズキが、中・印メーカーが覇を競う! 世界最大のバイクの祭典「EICMA 2025」見聞録 2025.11.18 世界最大級の規模を誇る、モーターサイクルと関連商品の展示会「EICMA(エイクマ/ミラノモーターサイクルショー)」。会場の話題をさらった日本メーカーのバイクとは? 伸長を続ける中国/インド勢の勢いとは? ライターの河野正士がリポートする。
-
第852回:『風雲! たけし城』みたいなクロカン競技 「ディフェンダートロフィー」の日本予選をリポート 2025.11.18 「ディフェンダー」の名を冠したアドベンチャーコンペティション「ディフェンダートロフィー」の日本予選が開催された。オフロードを走るだけでなく、ドライバー自身の精神力と体力も問われる競技内容になっているのが特徴だ。世界大会への切符を手にしたのは誰だ?
-
第851回:「シティ ターボII」の現代版!? ホンダの「スーパーONE」(プロトタイプ)を試す 2025.11.6 ホンダが内外のジャーナリスト向けに技術ワークショップを開催。ジャパンモビリティショー2025で披露したばかりの「スーパーONE」(プロトタイプ)に加えて、次世代の「シビック」等に使う車台のテスト車両をドライブできた。その模様をリポートする。
-
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。









































