アウディTT RSクーペ(4WD/7AT)
能ある鷹だからこそ…… 2017.10.05 試乗記 アウディスポーツが手がけた「アウディTT」シリーズのフラッグシップモデル「TT RS」。400psを誇り、0-100km/h加速をわずか3.7秒でこなす“リトルスーパースポーツ”の実力をサーキットで試した。 拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
“本籍”はサーキットかアウトバーンか?
アウディのミドル級スポーツクーペであるTT。その最もハイパフォーマンスなモデルであるTT RSを、富士スピードウェイのショートコースで試乗した。
搭載されるパワーユニットは2.5リッターの直列5気筒直噴ターボ。通常ならば4気筒でいくところを、アウディの伝統に従って1気筒増やすことで、余裕をもって450Nmの最大トルクを発生させ、その回転を上げることで400psというパワーを絞り出す。TTは「A3」と同じコンポーネンツを用いるため、そのクワトロ4WDシステムはセンターデフを持たないオンデマンド式となる。ハッチバック/セダンの「RS 3」とコンパクトSUVの「RS Q3」と並ぶ、クーペの「TT RS」という立ち位置になっている。
ただしこのTT RSは、これらRS一族の中でもとびきりスパルタンな存在となっている。その足まわりはダンピングモードを「コンフォート」に緩めてもハッキリと硬く、その短いスプリングがもたらす上下左右の振幅はせわしない。タイヤにしても試乗車は「R8」と同じ、オプションの20インチを履いていた。オープンロードでは、まるでタイヤが走っているような乗り味となる。
エレガントさを売りにするあのアウディTTが、なぜここまでスパルタンな武装をしてきたのか? それはRSモデルのけん引役を務めると同時に、「ポルシェ・ケイマンGT4」や「BMW M2クーペ」といったライバルたちと肩を並べる必要があるからではないだろうか。そしてその視野には完全にクローズドコースが入っている。よって今回の試乗は、その実力を試すのにうってつけのステージとなった。
結論から先に言えば、TT RSは極めて安定したスーパークーペだ。引き締められたサスペンションはロールをそれほど許さず、ガッチリとした車体は安心感に満ちている。そしてブレーキもしっかりと利くから、400psのパワーに気後れすることなくアクセルを踏んでいける。こういったスタビリティーの高さは、TT RSの目が覚めるような速さを安心して楽しむためには、本当にうれしい特性である。
しかし安定性が極めて高いだけに、その操縦性がスポーツドライビングの核心から遠のいてしまっているともいえる。ブレーキ操作をどう工夫してもハンドリングは基本的にアンダーステアであり、クルマの向きを変える楽しさやコントロールする喜びが希薄なのだ。
その大きな原因は、クワトロ4WDがもたらす安定性に加え、リアサスペンションのセッティングにあるように思う。筆者はこの4WDシステムが非常に高度かつ緻密な制御をもって4輪をコントロールできることを知っている。前輪駆動を主軸としたシステムだから、基本的にオーバーステアに持ち込むのは簡単ではないが、それさえクリアしてしまえば、絶妙なトラクションをもって4輪を滑らせながら前へ前へと進ませることができる。その走りは極めて刺激的で、アウディの技術がぎっしりと詰め込まれているように思えた。もっともこれは、「A3スポーツバック」の「2.0 TFSIクワトロ」を雪上で走らせたときの話だから、今回のシチュエーションに単純に当てはめることはできないが。
ハイスピード走行時における過渡領域で、あれほど安心してオーバーステアがコントロールできる性能があるのだから、TT RSにはそこをもう少し積極的に押し出してほしいと思う。最新のハルデックスカップリングは、必要とあらば前後の駆動配分を0:100まで可変できると聞く。たとえ「A4」のように縦置きエンジン+センターデフ式の4WDは搭載できなくても、このTT RSにはスポーツドライビングを極める能力がある。仮にある程度ドライバーにスキルを強いる特性を与えたとしても、許される存在だとも思う。
そういうクルマであるならば、989万円という価格にも納得がいく。TT RSの存在がアウトバーンをぶっ飛ばすためだけにあるのなら、ここまでスパルタンにする必要はないだろう。能ある鷹も、爪を隠しすぎてはいけないと、ボクは思う。
(文=山田弘樹/写真=荒川正幸/編集=竹下元太郎)
拡大 |
【スペック】
全長×全幅×全高=4190×1830×1370mm/ホイールベース=2505mm/車重=1490kg/駆動方式=4WD/エンジン=2.5リッター直5 DOHC 20バルブ ターボ(400ps/5850-7000rpm、480Nm/1700-5850rpm)/トランスミッション=7AT/燃費=11.7km/リッター(JC08モード)/価格=989万円

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
-
スズキ・エブリイワゴンPZターボスペシャル ハイルーフ(MR/CVT)【試乗記】 2026.7.8 フロントマスクが変わったのはすぐにお気づきのことと思うが、実は最新の「スズキ・エブリイワゴン」は中身のレベルアップが著しい。内装デザインが刷新されたほか、アダプティブクルーズコントロールなどの軽バンらしからぬ装備も標準化されている。ワゴンの最上級グレードを試す。
-
ポルシェ911 GT3 S/C(RR/6MT)【海外試乗記】 2026.7.7 スポーツカーの水準器「ポルシェ911」に、新たなバリエーションの「GT3 S/C」が登場。サーキット直系の走りとオープンエアの爽快感は、私たちにどんな体験をもたらしてくれるのか? ポルシェのおひざ元である、ドイツのワインディングロードで確かめた。
-
日産リーフB5 X(FWD)【試乗記】 2026.7.6 先に登場した「B7」の容量78kWhに対して、少し控えめな容量55kWhの駆動用バッテリーを搭載する「日産リーフB5」。日常使いをシミュレートしながら、現実的な一充電走行距離や走り、使い勝手を、購入を真剣に検討するカスタマー目線でチェックした。
-
スズキ・ハスラー ハイブリッドX(FF/CVT)【試乗記】 2026.7.4 スズキの軽クロスオーバーモデル「ハスラー」のマイナーチェンジモデルが登場。愛らしいフロントマスクにお化粧直しが施されたほか、先進運転支援装備が一段と充実。さらに走行性能の強化も図るなど、そのメニューは盛りだくさんだ。「ハイブリッドX」グレードのFFモデルに試乗した。
-
スズキ・ジムニーシエラJC(4WD/4AT)【試乗記】 2026.7.3 俺の「ノマド」まだかな? とソワソワしている人が多いかもしれないが、実は既存の「ジムニー/ジムニー シエラ」もひっそりと進化を果たしている。とりわけ大きいのはアダプティブクルーズコントロール(ACC)の搭載だ。シエラの4段AT車でその仕上がりを試した。
-
NEW
ベンダ・ナポレオンボブ250(6MT)
2026.7.10JAIA輸入二輪車試乗会2026個性的なバイクがそろうJAIA輸入二輪車試乗会の会場でも、ひときわ強烈な存在感を放っていた「ベンダ・ナポレオンボブ250」。中国からやってきた250ccクラスのクルーザーには、他のこのセグメントのバイクにはない“こだわり”が存分に注ぎ込まれていた。 -
NEW
さらば青きe-BOXER! スバル・マイルドハイブリッドに贈る別れの言葉
2026.7.10デイリーコラムスバルのMHEVがついに販売終了に! 彼らが初めて手がけた電動化ユニットには、どんな特徴があり、どんな役割を果たしてきたのか? 派手な存在ではなかったけれど、13年にわたり頑張ってきたいぶし銀のパワートレインに、独自性を重んじるスバルの矜持を見た。 -
ホンダ・フィット
2026.7.9画像・写真本田技研工業は2026年7月9日、マイナーチェンジした「フィット」を発表した。2020年2月のデビューから6年。グレード体系の見直しや内外装のブラッシュアップなど多岐にわたる変更が行われた最新モデルを写真で詳しく紹介する。 -
第291回: あの衝撃的なラストシーンは2CVで撮影されていた!? 『ヌーヴェルヴァーグ』
2026.7.9読んでますカー、観てますカー1959年のパリで、ゴダールが『勝手にしやがれ』の撮影を開始。脚本もなく演出はその場で指示するという型破りのスタイルに、俳優もスタッフも困惑し現場は混乱を極める。はたして映画は無事に完成するのか……。 -
第969回:裏地に『大脱走』! ピッティ・イマージネ・ウオモと自動車模様
2026.7.9マッキナ あらモーダ!イタリアで開催された世界屈指の紳士モード見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ」を、現地在住の大矢アキオが取材。自動車にまつわるアパレルの最新トレンドを探り、新興ブランドのひたむきさと、老舗の刻んできた年輪に触れた。 -
第59回:待望の2代目「日産キックス」は「ヴェゼル」や「カローラ クロス」に勝てるのか!? 小沢コージが嗅ぎまわる
2026.7.9小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ日産が満を持して「キックス」の新型を発表した。新世代の「e-POWER」を搭載したほか、各部の質感もデザインも先代モデルから大幅に進化しているが、大事なのはライバル車に勝てるかどうかだ。小沢コージが開発リーダーを直撃した。






























