第478回:“クワトロ”の実力を解き放つ!
「アウディ ウインター エクスペリエンスin女神湖」に参加して
2018.02.07
エディターから一言
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アウディが長野県の女神湖で開催した、氷上試乗会に参加。時にクルマが写りこむほどツルツルの氷の上で、日常生活ではおよそ体感することのできない、4WDシステム「クワトロ」の限界性能を味わった。
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雪だ氷だクワトロだ!
ここ数年、冬になると雪を求めてドライブに出かける機会が多かったせいか、雪道の運転にはだいぶ慣れてきた。それでも、運転中は緊張が続き、運転を楽しむにはほど遠い状況である。
現に長野県の女神湖に向かっているいまも、路面に雪が現れてからは緊張の連続。無事に目的地に着けるといいなぁ……そればかり考えて走る時間がとても長く感じる。
女神湖と聞いてピンときた人も多いだろう。そう、女神湖は雪上・氷上ドライビングレッスンの聖地ともいえるスポットで、かくいう私もそのために聖地を目指しているのだ。
なんとか無事にたどりつき、雪と氷で覆われた女神湖に臨むと、そこにはたくさんのアウディ車が待ち構えていた。しかも全車、4WDのクワトロである。
アウディは、1983年からユーザー向けのセーフティードライビングレッスンの「Audi driving experience(アウディドライビングエクスペリエンス)」を開催していて、日本でも2001年からアクティブセーフティーやウインタードライビングのメニューを用意。さらに2016年にはサーキットドライビングプログラムの「Audi race experience(アウディレースエクスペリエンス)」をスタートさせている。今回は、ウインタードライビングを久しぶりに開催するということで、われわれプレス向けの取材日が設けられた。
クワトロの実力やその楽しさを安全に体験するにはまさに打ってつけ。しかも、トレーニングカーのラインナップを見たら、寒さなんて一気に吹き飛んでしまった。
ひとくちにクワトロといっても
トレーニングカーは、「S4」や「S4アバント」といったメインストリームに加えて、「RS 6アバント パフォーマンス」や「RS 7スポーツバック パフォーマンス」「RS 3スポーツバック」「RS Q3」など、「アウディ スポーツ」ブランドの超ハイパフォーマンスモデルが勢ぞろいだ。
個人的にうれしかったのは、さまざまなタイプのクワトロが用意されていたこと。ひとくちにクワトロといっても、クルマのサイズや性格によって4つのタイプがある。すなわち、主流の縦置きエンジンモデルに搭載されるセルフロッキングデファレンシャル式、横置きエンジンモデル向けの電子制御油圧多板クラッチ式。そして、新しいタイプとして、縦置きエンジンモデルに設定される電子制御油圧多板クラッチ(AWDクラッチ)式。もうひとつが、ミドシップエンジンの「R8」に採用される電子制御油圧多板クラッチ式だ。今回、R8用以外の3タイプを比較できるというのも、楽しみのひとつである。
前置きはこのくらいにして、まずはウオーミングアップを兼ねてブレーキングのレッスン。湖上の特設コースは、走行する部分はほぼ氷が露出しており、アイスバーンという状況。40km/hまで加速し、パイロン通過とともにフルブレーキという課題だったが、あまりの滑りやすさにクワトロでも発進がままならず、パイロンにたどりつくまでに30km/h程度を出すのが精いっぱい。そこからブレーキを踏んでも、なかなかスピードが落ちない。
難易度が高い“クワトロドリフト”
前方にクルマや人がいないからいいようなものの、もし前に何かあったら……。そんな場面を想定して、ブレーキを踏みながらステアリング操作で危険を回避するレッスンも。ギリギリでなんとか切り抜けたあとは、ブレーキを踏まずアクセルオフのみでもチャレンジ。すると、意外にこちらのほうがラクに障害物を避けることができた。なるべくタイヤを滑らせないのがミソなのである。
氷の感触に慣れてきたところで、次のプログラムは定常円旋回。パイロンのまわりをグルグル走るだけでも大変なのだが、今回は上級者向けにドリフトしながらの定常円旋回を練習する。これぞクワトロの醍醐味(だいごみ)だ。まずはインストラクターがお手本を見せてくれるが、ステアリングとアクセルの絶妙なコントロールでゆっくりとドリフトを続ける姿にほれぼれする。こんなまねができるのだろうか?
トレーニングカーの1台、RS 7スポーツバック パフォーマンスに乗り込み、早速挑戦。横滑り防止機能のESCを完全オフにし、軽くステアリングを切りながらパイロンのまわりを走る。そして、頃合いを見てアクセルペダルを踏み込むとテールが出て、比較的簡単にドリフト状態になった。あとは、パイロンをフロント視界のなかにとどめながらこの態勢を維持すればいいのだが、言葉で言うほど簡単ではない。すぐにパイロンが視界から外れてしまう。
そして、何度かやり直すうちに、車両から警告メッセージが発せられる。通常では想定しない走り方に対して、ESCやクワトロシステムの異常と判断されたらしい。ハイテクすぎるのも考えものだ。
“クワトロダンス”まであとちょっと
残念ながら“クワトロドリフト”をマスターできないまま次の課題へ。前半がコーナー、後半がパイロンスラロームというハンドリング路で、クワトロの違いによってクルマの挙動がどう変わるかをチェックする。やはりここでもESCを完全オフにしてドライブするが、横置きエンジンのRS Q3はコーナーでアクセルペダルを踏むとアンダーステアが出るのに対し、縦置きエンジン+セルフロッキングデファレンシャルのRS 6アバントやS4アバントでは、テールがスライドして向きが変わるので、コーナーをコンパクトに曲がれるし、いざというときに危機回避ができる。このときの“操っている感”はなかなか楽しい。
そして最後に“クワトロダンス”の練習。クワトロダンスは、テールを滑らせながらスラロームを続ける走り方で、縦置きエンジン+セルフロッキングデファレンシャル式クワトロの得意科目だ。S4アバントで挑むと、はじめのうちはタイミングをつかみきれずスピンすることもあったが、何度か練習を繰り返すうちに3、4回つなげられるようになった。
クワトロダンスと呼べるほど華麗ではないが、その入り口が見えてきたのは今回一番の収穫。(雪道に比べて)苦手意識が強かった氷上のドライブがこんなに楽しいとは! 次こそはクワトロダンスとクワトロドリフトを完成させるぞと心に誓った私である。
(文と写真=生方 聡/編集=藤沢 勝)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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