スバル・レガシィアウトバック 2.5i EyeSight Sパッケージ リミテッド(4WD/CVT)【試乗記】
“全部のせ”レガシィ 2011.07.24 試乗記 スバル・レガシィアウトバック 2.5i EyeSight Sパッケージ リミテッド(4WD/CVT)……346万5000円
SUVライクな「スバル・レガシィアウトバック」にスポーティな特別仕様車が登場。その走りと乗り心地は……?
「あ、デカイ!」
かつてターボの「GT」系が大人気だったころ、高速道路で「レガシィ」を見かけると「あ、速い!」と思った。ところが今のレガシィは、町ですれ違うと「あ、デカイ!」と思う。
レガシィが現行型で大きくなったのは、メインターゲットを米国市場に据えたためだ。だから、デビュー時のCMキャラクターもロバート・デ・ニーロだった、かどうかは定かではないが、速さよりも、アメリカンなゆとりを身につけたクルマに成長したのはたしかである。
今回乗ったのは、レガシィの最低地上高をさらに5cm上げた「アウトバック」の特別仕様車「2.5i EyeSight Sパッケージ リミテッド」。先進の運転支援システム「アイサイト」を搭載する一方、大径アルミホイールやビルシュタインダンパーなど、走りの装備も充実させたモデルである。価格は317万1000円。要はいちばん高い2.5リッターのアウトバックだ。
“ぶつからない”だけじゃなく、よく走るアウトバックに、スバルビルの地下駐車場で対面する。7cm全高が上がり、全幅も4cm広いアウトバックは、ツーリングワゴンよりさらにデッカいクルマだが、加えて18インチのホイールが一層の押し出しを強調する。 ボディのそばに立つと、自分の目のスケール感がおかしくなったような錯覚に陥るデッカさは、MINIの「クロスオーバー」や「BMW5シリーズ グランツーリスモ」などもそうである。共通するのは、いずれも「対米重視モデル」ということ。アメリカで見れば、ちょうどいいのである。
大人の特別装備
2.5リッターアウトバックのエンジンは、自然吸気の水平対向4気筒SOHC。170psの最高出力をはじめ、スペックには変更ない。1540kgの車重に対して十分以上のパワーを持つが、かといってとくに瞬発力にたけているわけではない。
ビルシュタインダンパーや18インチホイール、あるいは強化されたブレーキといった「Sパッケージ」の特装品も、アウトバックのキャラクターを武闘派に一変させるようなものではない。そもそも大柄なボディをリフトアップして、ますます“飛ばしゴコロ”を鎮めるのがアウトバックのいいところでもある。
18インチ+225/55R18の組み合わせでも、乗り心地はいい。200mmというオフロード四駆並みの最低地上高を持つのに、コーナリングでもグラッと傾かないのは、固さとしなやかさが同居するビルシュタインならではだろうか。
変速機は「リニアトロニック」。マニュアルモード時には6速のステップが切られるCVTだ。この無段変速機でひとつ気になったのは、5000rpm以上の高回転域で、独特の高周波音が高まること。何に似ているかというと、遠くで聞こえる白バイのサイレンに似ている。試乗中、「あ、やられた!」と思ったことが2回あった。心臓に悪いので、要改良を願いたい。
まるで気のいい大型犬
車載カメラで障害物を認識し、警告音で注意喚起するだけでなく、最後は自動ブレーキで停止までやってのける、アイサイトのような技術の目指す先は「完全自動運転」である。だから「ファン・トゥ・ドライブ」とは逆のテクノロジーなのだが、転ばぬ先のつえと考えれば、矛盾しない。コストさえ下がれば、“保険”として、今後のニーズは大きいとメーカーは考えている。セコムが一般家庭にどんどん広がっているようにだ。
停車時や徐行時、前方に障害物が検知されているとき、アクセルを大きく踏み込んでも、アイサイト付きなら警告音を発して急発進をしない。つまりATの暴走事故を起こさない。こうした先進機能は、ややもすると「ウザったい」と思わせるものだが、普段の使い勝手をとくに阻害していないのがアイサイトのいいところだと思う。
しかし、このクルマのよさはそんなことではない。ひとことで言うと、とてもゆったりしている。気のいい大型犬と一緒にいるみたいに、なごむ。運転していて、気に障るところがない。SUVの台頭でアメリカのステーションワゴンは絶滅してしまったが、アウトバックに限らず、現行レガシィのワゴン系には、なつかしい「アメ車のワゴン」みたいな“味”がある。個人的にはそこがいちばん好きである。
シリーズ全体がそうなると、アウトバックの存在意義は薄れたようにも感じるが、だからむしろよりSUVっぽいアウトバックのほうが本命なのだという見方もできる。この特別仕様は、さしずめ“全部のせ”のレガシィというわけだ。
(文=下野康史/写真=峰昌宏)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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