目玉機能じゃなかったの!?
新型「アウディA8」のレベル3自動運転はどこへ消えた?
2018.09.19
デイリーコラム
世界のどこにも売っていない
アウディのフラッグシップサルーンである「A8」が8年ぶりにフルモデルチェンジされ、ついに日本でも正式発表となった。A8はアウディの最上級モデルであると同時に、同社のスローガンである「Vorsprung durch Technik(技術による先進)」のシンボルでもある。例えば、初代A8には量産車初のオールアルミボディーの「ASF(アウディスペースフレーム)」が採用されているし、その後もインフォテインメントシステムの「MMI」や「マトリクスLEDヘッドライト」といった新技術が真っ先に投入されてきた。
そして、この4代目のA8では、量産車として初めてレベル3の自動運転機能を実現したことで注目を集めたのは記憶に新しい。それが「アウディAIトラフィックジャムパイロット」という機能で、高速道路などを60km/h以下で走行する際に、発進や加速、ステアリング操作、ブレーキをすべて自動化。ドライバーはステアリングから手を離したままでもいいし、車載のテレビを見るなど、運転以外のことをするのも可能である。アダプティブクルーズコントロールやレーンキープアシストのように、ドライバーが常に運転を監視しなくてはならないレベル2の自動運転とは大きく異なるのだ。
そんな世界初のレベル3の自動運転がついに現実に……と楽しみにしていた人も多いはずだが、残念ながら日本に導入される新型A8にはいまのところその機能は搭載されていない。それどころか、現時点でアウディAIトラフィックジャムパイロットが搭載されるA8が販売されている国はどこにもないのだ。
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まずは法整備が必要不可欠
その理由は、自動運転を受け入れるための法整備が遅れていること。例えば日本では、道路交通法上はレベル2の自動運転が可能で、実際にその恩恵にあずかっている人は多いはずだ。しかし、レベル3の自動運転については、運転席でクルマの動きを監視しながらの公道実証実験は可能だが、実用化についてはルールづくりができていないというのが現実だ。また、日本が批准している道路交通に関する条約である「ジュネーブ条約」でも、レベル3の自動運転を認めていないのだ。
一方、ドイツはジュネーブ条約に加盟せず、「ウィーン条約」のみに加入しているが、このウィーン条約で自動運転を認める改定があったことを受けて、ドイツでも国内法を改正、自動運転が合法化されている。しかし、自動車の国際的な認証について話し合う国連欧州経済委員会(UN-ECE)の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)において、現在の基準では10km/h以下の自動操舵しか認めておらず、このためドイツでもアウディAIトラフィックジャムパイロットが搭載できないというのが現状である。
つまり、アウディAIトラフィックジャムパイロットが現実のものになるには、自動運転に関する国内外の法整備が必要であり、2020年までにレベル3を実現したいとする日本でも、いましばらくはアウディAIトラフィックジャムパイロットが用意されることはないだろう。
しかし、アウディがAIトラフィックジャムパイロット実現のために開発した新型センサーや制御技術の中には、すでに新型A8に搭載されているものもあり、アダプティブクルーズコントロールやアクティブレーンアシスト、トラフィックジャムアシストを統合したアダプティブドライブアシスタントは、従来のシステムに比べて大幅に精度が向上している。レベル3の実用化に一歩一歩近づいているのは確かである。
(文=生方 聡/写真=アウディ ジャパン/編集=藤沢 勝)
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生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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