アウディA7スポーツバック55 TFSIクワトロ ファーストエディション(4WD/7AT)
インテリジェントモンスター 2018.11.07 試乗記 フルモデルチェンジで2代目となったアウディのラグジュアリーモデル「A7スポーツバック」に試乗。燃費や安全性を高める先進のメカニズムが詰まった最新型は、しかし、自ら積極的にむちを当てたくなる走りの4ドアクーペだった。いまやセダンもカッコがすべて
2005年にメルセデス・ベンツが「CLS」を発表した時には賛否両論が巻き起こった。背の低い、クーペみたいなええカッコしぃの4ドアセダンについて、「実用を犠牲にしてまでデザインを優先するとは何事だ」というお叱(しか)りの声があがったのだ。
お叱りの声があがったのだ、なんてひとごとのように書いているけれど、筆者もお叱りの声をあげたひとりだった。クルマ守旧派というか、頭がカタいので、4ドアセダンが別の乗り物になってしまうことが認められなかったのだ。
そして、クーペみたいなええカッコしぃの4ドアセダンを自動車メーカー各社がつくるようになった。やがて、それが正しい戦略であったことが明らかとなった。荷物を積みたいとか人を乗せたいとか、そういった機能を重んじるのであればミニバンやSUVを選べばよろし。セダンはカッコよさを追求する乗り物になったのだ。
一時期までは、「走りで選べばセダン」的な言説も成り立った。けれども、「ジャガーFペース」や「アルファ・ロメオ・ステルヴィオ」みたいに、“イノシシの皮をかぶったオオカミ”みたいなSUVが出てきたいま、「セダン=走り」という公式も過去のものとなった。
というわけで、セダンはフォーマルでスタイリッシュ、カタカナばかり使っていると頭が悪そうなので、上品なたたずまいに価値を見いだす存在、つまり4ドアクーペが主流となった。セダンはカッコがすべてなのである。
で、ひとくちに4ドアクーペといっても、微妙なすみ分けがあるところがおもしろい。例えばこの夏にフルモデルチェンジした前出のメルセデス・ベンツのCLSは、フォーマルなスーツっぽい。スーツといって昭和のオトーサンが着ていたドブネズミ色の背広ではなく、ミレニアル世代が結婚式の二次会に着ていくような、ちょっと光沢がある細身のスーツだ。
そして、ここに紹介するアウディA7スポーツバックは、もうちょっとカジュアル。というのも独立したトランクではなく、ハッチゲートがあるファストバックのスタイルを採っているから。セダン+クーペという足し算に、もうひとつステーションワゴン(アウディ的に言えばアバント)の要素が加わっている。したがって、光沢がある細身のスーツなんだけど、ネクタイを締めるのではなく、タートルネックのセーターを合わせた感じだ。
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インテリアの変化にびっくり
対面した新型「アウディA7スポーツバック55 TFSIクワトロ」は、近年のアウディのモデルチェンジらしく、従来型とガラッとは変えない路線だ。この“ガラッと変えない”デザイン戦略が正しいのかどうかは、ちょっと判断に苦しむ。実際、「アウディには初代『TT』みたいのを期待しちゃうよね」という声も多い。
ただし、ガラッと変えない路線の「A4」や「R8」も、デビューして1年とか2年を経ると、先代より明らかに新しいと感じるのは間違いない。“ガラッと変えない”戦略が正しいか否かの答え合わせは、5年とか10年とか、時間がかかるのかもしれない。
新しいA7のルックスで目を引くのは、横長になったシングルフレームグリルによってより低く構えているように見えること。試乗車はオプションのHDマトリクスLEDヘッドライトを装着していたこともあり、顔つきがよりシャープに見える。
リアに目を移せば、左右のテールライトがライトストリップで結ばれて、『天才バカボン』に出てくるおまわりさんの目のようにつながった。バカボンのおまわりさんの顔を想像するとマヌケだけれど、アウディA7の場合はつながったことで、宇宙船のような未来っぽい雰囲気が出た。
全体に、少し離れて見るとシンプルな造形に見えるのに、近寄るとバンと張った面とエッジィなラインが巧みに組み合わされているという、不思議なデザイン。実に凝っているしデザイン性が高い。
デザインコンシャスなモデルということでカッコについての記述が長くなってしまったけれど、もう少し。乗り込んで驚くのは、スイッチの類いが大幅に減ったこと。MMIと呼ばれた銀色のダイヤルも姿を消してしまった! うわっ、空調やカーナビはどうやって操作すればいいんだ、というギモンはすぐに解決する。センターコンソールには上下2段に分かれて液晶パネルが配置され、これをスマホやタブレット端末のように操作すればいい。説明書を読まずとも、直感で操作できる。
ちなみにドライバーの眼前のメーターパネルは、12.3インチ液晶の「アウディバーチャルコックピット」だから、3つの大きな液晶画面がインフォテインメントをはじめとする情報の提供を受け持つことになる。運転支援機能やコネクト機能など、あふれる情報を取り扱うにはこうしなければ間に合わないのだろう。エクステリアより、インテリアのほうが変容の度合いが大きい。
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“一糸乱れぬ”走り
細部のチリがきっちり合った、いかにもアウディらしく洗練されたコックピットに収まり、アウディA7スポーツバック55 TFSIクワトロのエンジンを始動。「55」という2ケタのグレード名に違和感を抱いた方がいるかもしれない。これはアウディの新しいグレード表記の方法で、A7でも「A8」でも「55」は3リッターのV型6気筒ガソリンエンジンを積んでいることを表す。ちなみに3リッターV型6気筒ディーゼルなら「50」、4リッターV型8気筒ガソリンは「60」となる。
ダウンサイジングの世の中、エンジン排気量に基づいたグレード表記だと、デカいプレミアム車なのに「1.8」とか「2.0」を使わざるを得ない。それだとちょっとショボい……という事情から取った措置だという。
市街地から高速道路、ワインディングロードまで走って、そのたびに頭に浮かんだフレーズが「一糸乱れぬ」だった。
加速から減速、コーナリングから直線での巡航に至るまで、エンジンやトランスミッションやサスペンション、その他のこのクルマを構成するすべてが、一致団結して正しい姿勢を維持しようと努めている。
例えば右コーナーへの進入時、かなり強めのブレーキなのに過剰にノーズが沈み込むことなく、フラットな姿勢を保ちながら減速する。ブレーキとサスペンションとの息がぴたりと合っている。ステアリングホイールを右に切り込むと、外側、つまり左側の前後輪が荷重を受け止めながらも、ロールを適切に抑えようと踏ん張る。ステアリングホイールとサスペンションとの意思の疎通がばっちりだ、とドライバーは感じる。
コーナー出口に向けてアクセルペダルを踏み込むと、四輪駆動のクワトロシステムが4つの車輪に効率的に力を配分して、340psの大出力を知的に使い切る。インテリジェントモンスター! という、古舘伊知郎さんがプロレスラーの故ブルーザー・ブロディに与えたニックネームを思い出す。
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ハイテクも支えるファン・トゥ・ドライブ
ドライバーは気付きもしないけれど、こうした一糸乱れぬドライブフィールは、ハイテク装置のたまものでもある。試乗車にはドライビングパッケージというオプションが組み込まれている。
その中のダンピングコントロールサスペンションはステアリングホイールの切れ角やアクセルペダルやブレーキペダルの踏み具合、それに路面状況などをトータルで勘案して、サスペンションの設定を素早くかつ連続的にコントロールしているのだ。
また、ダイナミックオールホイールステアリングは、速度に応じてステアリングギアボックスのギアレシオが変わるダイナミックステアリングと、四輪操舵(つまり後輪も向きを変える)のオールホイールステアリングを組み合わせたもの。高速コーナーを曲がる時には安定したコーナリング姿勢を提供し、タバコ屋の角を曲がる時には回転半径を小さくするように働く。
計23個のセンサーを備えることで自動ブレーキや追従系の安全および運転支援装置も大幅に進化した……、はずであるけれど、クルマ趣味守旧派としては、こんなに楽しいクルマでどこの馬の骨かもわからない先行車両についていくのもつまらないので、ちょこっと試してすぐ自動運転から自分運転に戻った。インターフェイスは良かったです。
例外はトラフィックジャムアシストで、ストップ&ゴーを繰り返す渋滞時にこの機能は心から便利だと思った。疲労とイライラを明らかに軽くしてくれる。
おもしろかったのはアウディA7に試乗する数日前に乗った新型メルセデス・ベンツCLSとの違い。あちらはゆったりとサスペンションが伸び縮みして快適に走るのに対して、A7はビシッと快適に走る。同じ快適でも種類が違う。カッコよさにも快適さにもいろいろあって、予算1000万円級の4ドアクーペが選べる人がウラヤマシイ。
(文=サトータケシ/写真=郡大二郎/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
アウディA7スポーツバック55 TFSIクワトロ ファーストエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4970×1910×1415mm
ホイールベース:2925mm
車重:1900kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:340ps(250kW)/5200-6400rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1370-4500rpm
タイヤ:(前)255/40R20 101Y/(後)255/40R20 101Y(ピレリPゼロ)
燃費:12.3km/リッター(JC08モード)
価格:1058万円/テスト車=1058万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:3397km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:242.9km
使用燃料:25.4リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:9.6km/リッター(満タン法)/9.9km/リッター(車載燃費計計測値)
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サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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