第560回:EVで戦う最高峰レース
「フォーミュラE」はいまこうなっている!
2019.03.13
エディターから一言
日本国内での開催も検討されているという、電気自動車の最高峰レース「フォーミュラE」。どんなマシンのどんなバトルが楽しめるのか、今季の香港大会を例に、競技の内容をリポートする。
この盛り上がりは要注目
FIAが管轄する国際レースの中で、いま最も著しい発展を遂げているのは、“電気のF1”の異名を持つフォーミュラEにほかならない。
同レースは電動シングルシーターの最高峰シリーズで、最初のシーズンは2014年9月に開幕した。設立当初こそ主要メーカーのワークスチームは少なかったが、環境対策の一環として世界各国で推し進められている「電気自動車の普及」が、その後の発展の追い風となっているのだろう。
プライベーターの支援を行っていたルノーやアウディに続いて、PSAグループのDSやジャガー、そしてBMWらもワークスとして参戦。さらに2018年12月に幕を開けた2018-2019年の第5シーズンでは日産も加わった。2019-2020年の第6シーズンからは、メルセデスとポルシェが新たに参戦するという。
このように、フォーミュラEは活況を迎えつつあるが、このレースの魅力はどこにあるのか? 2019年3月10日に香港で争われた2018-2019年(第5シーズン)の第5戦にあたる「香港E-Prix」にも触れつつ、現在のフォーミュラEにクローズアップしたい。
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マシンも次々アップデート
まずは気になるマシンから紹介していこう。フォーミュラEの主力モデルはレース専用に開発された電動フォーミュラカーで、シャシーや空力パーツ、バッテリーなどは共通のパーツを採用している。
2014-2015年の第1シーズンの際に投入されていた第1世代のマシン、Gen1はほぼワンメイクの状態で争われていたが、第2シーズンからはモーターやインバーターなどパワートレインの独自開発を解禁。このレギュレーション変更も新規メーカーの参戦を促すファクターとなり、Gen1のパフォーマンスアップを果たしたが、2018-2019年の第5シーズンに合わせて投入された第2世代のマシン、Gen2はさらなるアップデートが施されている。
具体的な変更点として挙げられるのは空力パーツが一新されたことで、エクステリアが近未来的なフォルムに変貌している。バッテリー容量も28kWhから54kWhにアップ。それまでは45分のレースを走りきることができずに、レース途中でピットインを行いマシンを乗り換えていたのだが、Gen2からはノンストップで1レースを走りきれるようになった。バッテリー容量の増加および最高出力の向上で、最高速度がGen1の220km/hから280km/hにアップしたことも、Gen2の特徴といえる。
とはいえ、45分間の全開走行が難しいことから、基本的にレース中の最高出力は200kWに抑えられているのだが、レコードラインから外れた不利なラインを通過することで10%の出力向上が許される“アタックモード”が導入されたことも今シーズンのポイントだろう。
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ファン投票もレースを動かす!?
こうした変更により、フォーミュラEのゲーム性はさらに向上した。ファン参加型のドライバー応援システム“Fan Boost(ファンブースト)”という要素もある。SNSのファン投票で人気上位5名のドライバーは、1回(5秒間)限定ながら、250kWの最高出力発生が可能となるため、人気ドライバー同士のシーソーゲームも展開されるのだ。
ちなみに、モーターをパワートレインとする同マシンは、エキゾーストサウンドが皆無。E-Prix(イープリ)と呼ばれるフォーミュラEの各ラウンドは公道を封鎖した市街地コースが舞台で、ローマやパリ、ベルリン、ニューヨークなど、世界各国の大都市やリゾート地で争われていることも同シリーズの特徴となっている。
ステアリングを握るドライバーはといえば、フェリッペ・マッサ(ヴェンチュリー)やネルソン・ピケJr.(ジャガー)、パスカル・ウェーレイン(マヒンドラ)、セバスチャン・ブエミ(日産)、アンドレ・ロッテラー(DS)など、F1世界選手権やWEC(世界耐久選手権)で活躍してきた強豪が勢ぞろいしている。いずれも百戦錬磨のトップドライバーだけに、スタートからチェッカーまで激しいポジション争いが展開されるのも同シリーズならではの魅力といえるだろう。
以上、簡単にフォーミュラEの特徴について触れてきたが、第5シーズンの第5戦となる香港E-Prixを取材してみると、これがまた、なかなか興味深いレースとなっていた。
日本の勇壮な祭りのように
「ドライバーが搭乗する1分の1のラジコンレース」という印象を抱きがちなフォーミュラEだが、いざレースが始まると、やはり見応えのあるものだ。
確かに、エンジン搭載型フォーミュラによる従来のレースと違い、迫力あるサウンドは聞こえず、マシンのスピードもF3程度のレベルにすぎないが、スタートからチェッカーまで、激しい接近戦が展開される。しかも、観客席からマシンまでの距離が近いことから、博多の祇園山笠や岸和田のだんじり祭りのように、疾走感のあるストリートファイトが間近で体感できるのだ。
フォーミュラEは基本的に、2回の練習走行、4グループに分けて争われる予選、そして45分間の決勝ともにワンデーで行われることもポイントで、朝の練習走行から夕方の表彰式まで間延びすることなく、密度の高い一日を楽しめる。チーム関係者からの評価も高く、アウディで開発を担うブノワ・トレルイエによれば「ドライバーもチームもミスができないけれど、ワンデー開催は新しいスタイルで、ユニークなチャレンジだと思う」とのことだった。
今回の香港E-Prixも、朝から雨にたたられたものの、公式練習から激しいタイム争いが展開された。結果、HWAレースラボの5号車を駆るストフェル・バンドールンが予選でトップタイムをたたき出し、予選の上位6台で争われるスーパーポールを制し、ポールポジションを獲得した。決勝でもスタート直後から激しいバトルが展開され、レース序盤で多重クラッシュが発生。赤旗中断となるなどサバイバルレースが展開され、その後もマシントブラルやクラッシュで戦線を離脱する車両が続出した。
そんな波乱のレースを制したのは、ヴェンチュリーのエドアルド・モルタラ。これが自身初優勝だった。前述のように、アタックモードやファンブーストの使い方で大きくリザルトが変わるフォーミュラEのレース。今後も各ラウンドで熱いバトルが展開され、最終戦まで激しいタイトル争いが続いていくことだろう。
(文と写真=廣本 泉/編集=関 顕也)
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廣本 泉
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