第144回:すげえぞ、コンセプト4!
2019.10.01 カーマニア人間国宝への道コンセプト4が欲しい!
先般のフランクフルトモーターショーで発表された、BMWの「コンセプト4」。これが次期「4シリーズ」のベースになるといわれるが、その上下にバカデカくなったキドニーグリルに私は度肝を抜かれた。そして思った。「カッコいい!」と。
これまで私は、BMWのキドニーグリル巨大化に否定的だった。「Z4」や「8シリーズ」の横長型も、「7シリーズ」や「X7」の全体拡大型も、なにかこう中途半端に品がなくなったようで、かといって迫力満点かといえばそうでもないように見えたのだ。といっても、今見直してみると、すでに目が慣れていてそんなに違和感ないのですが。
しかし、コンセプト4のキドニーグリルは違った。8シリーズや7シリーズのソレとは別次元!! はっきり縦に長い! 正確には、昔のキドニーグリルの縦横比に近いまま、強烈に巨大化している。ボディー全体のバランスから見ると、どう見ても鼻の穴(でよろしいですか?)がデカすぎるが、それがちっともイヤじゃなくて、不思議なほど適度な違和感&迫力満点なのだ。
バランスは決して良くないのに、なぜか「美人」と言われてしまう顔ってあるでしょう。ジャクリーン・ケネディ夫人とか、ソフィア・ローレンとか。我ながらたとえが半世紀古いですが……。鼻の穴が大きくて美人と言われる人はいないような気もするけど、コンセプト4は美人だ! 間違いない! これこそキドニーグリルの新しいあり方だ!
先代「3シリーズ」オーナーとしては、現行BMWに先代3シリーズを超えるデザインはないと思っているけど、このコンセプト4には負けた! これだったら欲しい! マジです。
でも、世間の反応はどうなんだろう。
賛否両論のデザイン
おそらくカーマニアは、ほとんどの人が否定的だろう。カーマニアは基本的に保守的。美意識が出来上がってしまっているので、違和感を生む新しい造形を拒絶する傾向が強い。試しに周囲のカーマニア数人に聞いてみましたが、ほぼ全否定でした。
でも、一般人は違うんじゃないか。「アルファード」や「C-HR」、「デリカD:5」のデザインは即座に受け入れられてヒットした。一般人のほうが新しい自動車デザインに対する間口が断然広いのだ! よし、一般人に聞いてみよう! 結果は……。
好き:6名
嫌い:12名
ダブルスコアで「嫌い」の勝利に終わりました。ガックリ。
でも、アンケートの中身を見て、私は逆にコンセプト4の勝利を確信した。では、「好き」と答えた6名さまの回答をどうぞ!
「カッコいい! 仮面ライダーみたい!」(28歳女性)
仮面ライダー……。キドニーグリルは仮面ライダーの目なんでしょうか? つーか、仮面ライダーってカッコいいんスか? バッタですが。新鮮なご意見であります!
「これBMWでしょ? かっこいいっちゃかっこいいけど。うーーん、すごいね」(小4男性・カーマニアの息子さん)
カッコいいけどすごい。「すごい」という言葉は、「こんなの見たことない」という感嘆そのものでしょう。つまり絶賛。
「大好き! カッコイイ!」(絵を描くのが大好きな小3男性。フェラーリやアルファ・ロメオが好き)
このコは完全に魂を奪われたもよう。手放しの絶賛であります。
本能に訴えるカッコよさ
続いて、成人男性の賛成意見をば。
「好き。ど迫力! でもちょっと鼻の穴みたい」(医療系検査会社 営業職 45歳男性 愛車は「BMW X1」)
キドニーグリルは鼻の穴ッス! それでいいんです!
「大変いいと思う。好みです。もしかしたら、電動化や低燃費性能のアピールとすれば、大きく息を吸って、みたいな大きなグリルは逆行してるのかもしれないし、高速道路で大きな口を開けて小魚を追いかけているサメなども連想するし、アオリ運転が問題になっている今日この頃、理性では違うのかもしれませんが、カッコいいものはカッコいい。本能的に心をわしづかみされた感じがする。マツダの“魂動”同様、人の心をとらえる部分は、相当開発の時間をかけて計算されているんだろうなと思います」
本能的に心をわしづかみにされた点、私とまったく同じであります! ちなみにこの方は、某大手電器メーカーのデザイナー(45歳男性)。さすがデザインの専門家!
「好き。エンブレムじゃなくて、遠目に顔だけ見てBMWってきちんとわかるトコロがまずいい。最近のマツダみたいに画一的でもなくて、きちんと車ごとにキドニーのデザインのベースを保ちながら、コンセプトによって使い分けられているのがすごいと思う。ず~っと長い間デザインを変えずに、しかもフロントグリルだけで車がわかるのって、BMWとアルファくらいじゃないですか」
この方は音大卒で、現在はキャンプ場勤務の45歳男性。いかにも感性が豊かそうな回答ですね。それにしても45歳男性に人気だな。
こういった意見を読むと、あなたもコンセプト4がカッコよく見えてきませんか? 今は嫌いでも、きっとそのうち好きになりますよ~~~! たぶん。(予言)
(文=清水草一/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第320回:脳内デートカー 2025.10.6 清水草一の話題の連載。中高年カーマニアを中心になにかと話題の新型「ホンダ・プレリュード」に初試乗。ハイブリッドのスポーツクーペなんて、今どき誰が欲しがるのかと疑問であったが、令和に復活した元祖デートカーの印象やいかに。
-
第319回:かわいい奥さんを泣かせるな 2025.9.22 清水草一の話題の連載。夜の首都高で「BMW M235 xDriveグランクーペ」に試乗した。ビシッと安定したその走りは、いかにもな“BMWらしさ”に満ちていた。これはひょっとするとカーマニア憧れの「R32 GT-R」を超えている?
-
第318回:種の多様性 2025.9.8 清水草一の話題の連載。ステランティスが激推しするマイルドハイブリッドパワートレインが、フレンチクーペSUV「プジョー408」にも搭載された。夜の首都高で筋金入りのカーマニアは、イタフラ系MHEVの増殖に何を感じたのか。
-
第317回:「いつかはクラウン」はいつか 2025.8.25 清水草一の話題の連載。1955年に「トヨペット・クラウン」が誕生してから2025年で70周年を迎えた。16代目となる最新モデルはグローバルカーとなり、4タイプが出そろう。そんな日本を代表するモデルをカーマニアはどうみる?
-
第316回:本国より100万円安いんです 2025.8.11 清水草一の話題の連載。夜の首都高にマイルドハイブリッドシステムを搭載した「アルファ・ロメオ・ジュニア」で出撃した。かつて「155」と「147」を所有したカーマニアは、最新のイタリアンコンパクトSUVになにを感じた?
-
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
NEW
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。 -
NEW
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える
2025.10.20デイリーコラム“ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る! -
NEW
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】
2025.10.20試乗記「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。