おめでとう50周年! スズキが生んだ小さな巨人「ジムニー」に贈る賛歌
2020.04.27 デイリーコラム 拡大 |
2020年4月10日、スズキのコンパクトオフローダー「ジムニー」が誕生50周年を迎えた。この小さくて四角いクロカンは、なぜ私たちの心を引き付けてやまないのか? webCG執筆陣より、「“上がり”の一台はジムニー」と公言する3人に、思いのたけをつづってもらった。
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山のふもとでジムニーと暮らしたい
人生最後に乗るクルマ、終(つい)のクルマはスズキ・ジムニーに決めている。
ジムニーのどこがいいって、まず遅いところがいい。50歳を過ぎてから、特に夜間は視力の衰えを感じるようになった。この傾向はこれから悪くなることはあっても良くなることはなさそうだから、40km/hでも運転している実感が得られるクルマがいい。ジムニーは、コーナーをスムーズに曲がることや高速道路を気持ちよく走らせることに、ちょこっとだけコツが必要で、乗せられているんじゃなくて操っているという実感が得られる。
サイズと軽さもいい。人生の先輩方は、「若い頃はガードレールとの間隔がティッシュ3枚ぐらいまで幅寄せできたもんじゃったのに……」と、年を重ねるごとに車幅感覚に不安を覚えるようになるとおっしゃる。「デカいクルマは出掛けるのがおっくうになる」と遠くを見る目で話すパイセンもいる。でもジムニーだったらサイズを気にせずどこにでも行けるから、フットワークが軽くなるはずだ。
試乗会で初めて乗った日から5段MTか4段ATかで気持ちが揺れているけれど、現時点では7:3で5段MTに気持ちが傾いている。といってもファン・トゥ・ドライブのためではなく、ボケ防止が目的だ。
遅くても運転している実感が得られるMTだったら、古いクルマを選ぶという手もある。もしtotoを当てたら複数台所有というセンも出てくるけれど、1台だけならジムニーだろう。なぜって、オーバーヒートの心配をするより自分の熱中症を気にしなければならないのであり、オイルのケアより自分の血圧のほうが大事になるからだ。その点、世界のプロフェッショナルのために開発されたジムニーは頼りになる。年齢的に筋力が低下していくこれから、南海トラフ地震、ゲリラ豪雨、猛暑日、その他もろもろを乗り越えるのに、ジムニーほど心強い相棒はいない。
あれは高校生のときだったか、RCサクセションの『山のふもとで犬と暮らしている』という曲を聴いた瞬間、天啓を得た。おじいさんになったら山のふもとで犬と暮らそう。そう心に決めたけれど、「山のふもとでジムニーと暮らしている」というのも悪くない。
いずれにせよ、その日が来るまでジムニーをつくり続けてください。それまでに、ボディー色をキネティックイエローにするか、アイボリーにするか決めておきます。
ジムニー50周年、おめでとうございます。
(文=サトータケシ/写真=荒川正幸)
ユビキタス的ジムニー理論
ニッポンが誇る小さな巨人、スズキ・ジムニーが誕生50周年を迎えた。めでたい。実にめでたい。来年からは、初代が発売された4月10日を国民の祝日にすべきだと思う。
というのは冗談だが、ジムニーが広く皆に愛されているのは紛れもない事実でしょう。「そんなことないわい!」というへそ曲がりな御仁もおるやもしれぬが、少なくとも記者はラブラブである。で、なんでこんなにラブラブなのかと己の心理を観察すると、それはガチのクロカンならではのタフさや、武骨なドライブフィールだけが理由ではないことに思い至る。
このクルマに乗っているとさ、自由を感じられるのよ。どこにでも分け入っていけるという事実がもたらす冒険感と、「○より×の方が偉い(〇と×には適当な車名を入れてください)」的なセコいヒエラルキーから逸脱した……なんて言うの? この融通無碍(むげ)な感じ。とにかく、しがらみにも路面状況にもとらわれない、タテの糸からもヨコの糸からも自由なジムニーには、中島みゆきもビックリだろう。
もうひとつ挙げられるのが、ジムニーを構成するスペック以外の要素にも、記者はいちいち共感を覚えてしまうことだ。前にも書いたけど、この小さなクロカンには、伝統を重んじ、プロの道具に憧れ、つつましさをよしとし、コストパフォーマンスに作り手の“良心”を見いだす、そんな私たちの琴線に触れる美徳がそろっている。時に利用者に我慢を強いるストイズムすら、われわれにとってはある種の憧憬(しょうけい)なのだ。
記者が常々、「条件がそろえばいつでもジムニーを」と考えているのは、自分もいずれは、そんなプロダクトと共にありたいと思うからだ。特に“終の一台”ともなれば、それこそ端々まで自分が納得のいく逸品と一緒にいたい。単純に「ジムニー的なるものがカッコイイから」ってのもあるけどね。
ちなみに、そんな時に記者が思い浮かべるジムニーの姿は、意外かもしれないけど先代の「JB23」だったりする。自分がギョーカイで碌(ろく)を食(は)み始めたころに現役だったジムニーであり、最初に取材したジムニーであり(確か7型)、いうなれば記者の人生におけるジムニーの原風景(?)だからだ。
ナニ? SUVっぽいナリのJB23は中途半端だって? 申し訳ないが、そんな意見は馬耳東風。人の数だけジムニー像があるのだ。ジムニーは遍在するのである……。
(文=webCGほった/写真=向後一宏、荒川正幸、スズキ)
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このクルマは“生きる活力”になってくれる
ジムニーの誕生から50年、半世紀の月日がたった。本格的な4WDシステムを搭載したマイクロクロカンというニーズが、日本はもとより世界の各地で枯れることなく続くものだとは、そのコンセプトに光明を見いだした鈴木 修会長も想像しなかったのではなかろうか。
僕がジムニーに乗っていたのは90年代のこと。型式で言えば「JA11」だ。ドアにウィンドウサッシュが残るフルメタルドア、平たく言えばオープンのモデルで、人生初の新車購入でもあった。理由は中古の相場が高すぎてうま味が全然なかったからで、このあたりはいまだに事情は変わっていない。
工程に各20分くらいはかかる実にややこしいホロ屋根を、若さに任せてまめに開け閉めしながら、ジムニーで色んなところに行った。雪道や林道では何の技術も要さずクルマの側から喜んで走破してくれるそのポテンシャルにうっとりし、高速ではエンジンがぶん回りながら走るというより弾んでいくそのライドフィールにげんなりした。そんなものだから若さをもってしても距離的には都心から水戸まで行くのが精いっぱいだったが、その域内では相当いろいろなところを走ったように思う。
強壮剤のCMではないが、明日を生きる力を得る上で、今の自分がいかに漲(みなぎ)っているかというのは大事なことだと思う。ジムニーには共に走ることでさまざまな漲りを与えてくれる、そんな不思議な共生感がある。それゆえではないが、僕はJA11を降りる時に、人生最後のクルマはジムニーにしようと決めた。ジジイになってから、一緒に日本の各地を一般道で駆け回りたいと思っている。
果たしてその時までつくり続けられているのかという件については全然心配していない。続かないはずがないと確信している。
(文=渡辺敏史/写真=荒川正幸、スズキ、webCG)
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渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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