ホンダCT125ハンターカブ(MR/4MT)
なんでもオーケー! 2020.10.17 試乗記 “ハンターカブ”と呼ばれた往年の名車のイメージを受け継ぐ、ホンダの小型オートバイ「CT125ハンターカブ」。ポップでワイルドな見た目だが、実際の走りはどうか? 舗装路と未舗装路の両方で試してみた。マッタリ乗るのがイチバン
新しいハンターカブが発表されると聞いて、僕の周囲のオヤジ連中は色めき立った。実際このマシンは好調な販売を記録している。発売前の事前予約で年間販売予定を超えてしまったほどだ。
と聞くと、知らない人はどんなにすごいバイクなんだろうと思うかもしれないが、なんのことはない。ごく普通のバイクだ。ちなみに筆者は、昔からハンターカブの世界観は好きなものの、特に熱狂しているほどではない。そんなニュートラルな立場でこのマシンを走らせてみるとCT125ハンターカブのことがいろいろと分かってきた。
CT125ハンターカブは、「スーパーカブC125」をベースにして、1981年に発売された「CT110」(通称ハンターカブ)のデザインとコンセプトを忠実に再現したモデルである。実際にマシンを目の前にしてみると、よくここまで昔のイメージで作り上げているなあと思う。
エンジンは非常に滑らかで乗りやすい。強いトルク感はないけれど粘り強さは素晴らしく、上り坂でトップギアのまま速度を落としてみると30km/hくらいになってもスロットルを開ければトコトコと登っていってしまう。
力はあるのにトルク感を感じない不思議なフィーリングなのは、スムーズで振動がないことに加え、スロットルを開けた時の反応が穏やかだからだろう。高回転域まで引っ張ればそれなりに上まで回るけれど、そういう走り方をしても楽しくはない。あえてギアチェンジはせず、トップギアのままマッタリと走るほうがこのマシンには合っているし、のんびり走っていると、なにかホッとするものがある。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
どこかが突出しているわけではないけれど……
ハンドリングは基本的に素直。舗装路は軽快に走ることができるし、タイトなコーナーだったら結構なペースで走ることもできる。しかし、素晴らしいというほどではない。悪くないというレベルである。サスの性能は古いカブとは比較にならないほど向上しているが、スポーツライディングを考えているわけではないのでダンピングもほどほど。路面の荒れたところをハイペースで走ったりするとマシンが暴れることもある。
オフロードの走破性もほどほど。のんびり走るのであれば問題ないが、サスのストロークがあるわけではないので、ギャップの多いところでスピードを出すと跳ね上げられる。加えてステップに立った状態で走ろうとするとタンクがないので体をホールドできず不安定。結果、シートにべったりと座ったまま足をベタベタつきながら走ることになる。けれどこれがハンターカブのオフロードライディング。こうすればかなり条件が悪いところでも前に進んでいくことができる。テクニックなど必要ないからビギナーのオフロード体験にはピッタリだろう。
単にバイクを走らせてみるとこんな感じの印象になる。全体的な完成度は高いけれど加速感やハンドリング、走破性など、どこかが突出しているわけではない。すべてが等身大という感じだから、単に走りだけで見たらインパクトに欠ける。しかし、ハンターカブはそういう部分を評価するようなマシンではない。
ハンターカブが人気なのは、日常の生活に自然に溶け込み、ライフスタイルを広げてくれそうな雰囲気が漂っているからである。肩肘張らず、気楽にまたがって走りだしたくなるフレンドリーさも他のマシンにはない魅力だ。大きなキャリアに荷物を積めるからいろいろな使い方をすることもできる。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
身近に置いておきたくなる
仰々しいバイクウエアを着込まなくてもアウトドアウエアや街着などでもこのマシンには似合うし、特別なテクニックなど必要ないから、ビギナーでもベテランと同じように楽しむこともできる。単一の用途で性能を追求したバイクは高性能な代わりに使い方も限定されてしまうのだが、ハンターカブは逆。なんにでも使うことができる。
前述したように僕自身は、それほどハンターカブにほれ込んでいるわけではない。でも身近に置いておきたいとは思う。たぶん仕事場にあったら近所を走ったり、買い物に使ったりと大活躍するはずだ。なんでもない日常がハンターカブのおかげで少しだけ楽しくなりそうな気がする。そんなライトな付き合い方ができるのもまた、このマシンの魅力なのだと思う。
(文=後藤 武/写真=向後一宏/編集=関 顕也)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=1960×805×1085mm
ホイールベース:1255mm
シート高:800mm
重量:120kg
エンジン:124cc 空冷4ストローク単気筒OHC 2バルブ
最高出力:8.8PS(6.5kW)/7000rpm
最大トルク:11N・m(1.1kgf・m)/4500rpm
トランスミッション:4段MT
燃費:67.1km/リッター(WMTCモード)/61.0km/リッター(国土交通省届出値)
価格:44万円

後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。
-
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】 2026.10.16 欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
NEW
日産キックスX e-4ORCE(前編)
2026.10.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産キックス」に試乗。デザインが新しいのはもちろんのこと、まさに下ろしたての最新のパワートレインを搭載。日産の大きな期待を背負ったコンパクトSUVである。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。
















































