プジョー308アリュール(FF/8AT)/フォルクスワーゲン・ゴルフeTSIアクティブ(FF/7AT)
大人にならなければいけない時代 2022.07.09 試乗記 「フォルクスワーゲン・ゴルフ」と新型「プジョー308」を乗り比べてみると、ゴルフに追いつき追い越せでやってきたCセグメントハッチバックの世界でも、意外に味わいや重視しているポイントが違っていることがよく分かる。果たして新時代の基準はどちらだろうか。名跡を受け継いでいる
各種操作が軽いと感じた308だが、ゴルフに乗り換えるとステアリングも他のコントロール類もさらに軽く、これほどだったかと驚いた。正統派のアップライトな運転姿勢もあって、街なかでは軽自動車のように扱える。変わらぬ定番の安心感というものだろう。大横綱ゴルフの8代目は、思い切るならば、先代との違いはパワートレインだけと言っていい。それ以外のハンドリングや乗り心地、室内の快適性や視界のよさなどは、評判が高かった先代ゴルフと変わらない。
「アクティブ ベーシック」と「アクティブ」に搭載される1リッターeTSIは、最高出力110PS/5500rpmと最大トルク200N・m/2000-3000rpmを生み出す。それに対して上位グレードの1.5リッター4気筒直噴ターボエンジンは150PS/5000-6000rpmと250N・m/1500-3500rpmというスペックで、308の1.2ターボはその中間に位置するというわけだ。もちろん、マイルドハイブリッドだけに街なかや郊外一般道などのスピード域では極めて軽快にスムーズに走る。7段DSGの弱点である微速でのドライバビリティーをカバーする滑らかな動き出しや低速域でのスロットルレスポンスを見る限り、48Vマイルドハイブリッドシステムのご利益は明らか。しかし、言うまでもなく1リッターゆえの限界がある。スロットルペダルを深めに踏み込んでも、スカッと空振りするように反応が鈍いこともあるし、負荷や回転数によっては不整脈のような3気筒ゆえのバイブレーションも伝わってくる。山道や高速道路などでは床まで目いっぱい踏んでもなお物足りないと感じる場面があるのは事実である。普段使いにはまったく問題はないものの、オープンロードではある程度の割り切りが必要なパワートレインだ。eTSIは、隙を見つければいつでも、できる限り、むしろちょっと煩わしいほど頻繁にエココースティングと呼ぶエンジン停止状態での惰性走行を選択する。住宅地の裏道をゆっくり走っている時でも作動するほど懸命に燃費向上に努めているのが分かるが、そんな場合でもエンジンのオン/オフなどは極めてスムーズである。このあたりにはプジョーとの優先順位の違いが表れていると言えるだろう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
もっとシンプルなものを
新型ゴルフで気になるのは一新されたデジタルコントロール類である。例えばステアリングホイールのスイッチだ。1リッターのeTSIアクティブはタッチセンサーではなく、それぞれのスイッチが独立したタイプで押し間違いがなかったが、上級モデルのツルツルしたタッチスイッチは行きすぎたり足りなかったりでイライラする。
ダッシュボードのスライダーも同じ。音量スイッチを指2本でスライドさせると地図の縮尺を変えられるのは、まあいいアイデアだと思うが、そもそもの設置場所が見にくくて使いにくいし、「ディスカバープロ」のタッチスクリーンも、狙った場所だけをピンポイントで触ることが難しく、知らずにメインスイッチに触って画面が時計表示に変わってしまうことが度々あった。やり方がマズイだけなのかもしれないが、率直に言ってこれまで使いやすいという意見は聞いたことがない。前編で書いたとおり、さまざまな情報を選択表示できる「デジタルコックピットプロ」にも本当に見やすく有用なのか、と疑問を抱く。簡潔明瞭を旨としていたはずなのに、と寂しくなるが、308はさらにアグレッシブだ。どうやらそういう時代であることを受け入れなければならないのだろう。
遠くまで行くなら308
1リッター3気筒を積むアクティブ ベーシックとアクティブのリアサスペンションはトーションビームとなり、1.5リッターモデルはマルチリンク(4リンク)となるのは先代ゴルフと同じ。フロントサスペンションはどちらもマクファーソンストラットである。
新型308も同様に、何の変哲もない、と言っては失礼ながら、一般的なマクファーソンストラットとトーションビームの前後サスペンションで、もちろん可変制御システムは持たない。それでいながらこのフラット感と安心感を生み出しているのだからお見事である。いかにも重心が低いクルマのようにしなやかにヒタヒタと路面をなぞるように走るのはプジョーの面目躍如と言うべきか。高速道路でのピッチングしないフラット感は抜群で、ずっと大きなサルーンに乗っているようだ。はるかに上級クラスでも308とは比べ物にならないぐらいドタバタ落ち着かない乗り心地のクルマは少なくない。ハンドリングもピーキーすぎず、タイヤの接地感を鮮明に伝えてくれるから、安心して飛ばすこともできる。コンパクトハッチ(というには若干大きくなりすぎたが)のお手本と言っていい。なおさらMTで乗りたくなったのが本音である。
無論、ゴルフもお手本クラスであることに疑いはない。軽快だが安心できるスタビリティーを備えているのは先代同様。静粛性は以前よりも向上しているようだが、ビシリと真っすぐ走る安定感はずっと前からのゴルフの美点である。ただし、山道などでは主にパワーユニットのせいで分が悪い。
定番だからこその安心感、街なかでの扱いやすさと燃費ではゴルフに軍配が上がるが、遠くまで出かけることが多い人には308ということになろうか。新型308は見た目以上に本格的なGTカーなのである。
(文=高平高輝/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
プジョー308アリュール
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4420×1850×1475mm
ホイールベース:2680mm
車重:1350kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:130PS(96kW)/5500rpm
最大トルク:230N・m(23.4kgf・m)/1750rpm
タイヤ:(前)225/45R17 94V/(後)225/45R17 94V(ミシュラン・プライマシー4)
燃費:17.9km/リッター(WLTCモード)
価格:305万3000円/テスト車=314万6170円
オプション装備:ボディーカラー<パールホワイト>(8万2500円)/ETC(1万0670円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:4254km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:529.0km
使用燃料:38.8リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:13.6km/リッター(満タン法)/13.1km/リッター(車載燃費計計測値)
フォルクスワーゲン・ゴルフeTSIアクティブ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4295×1790×1475mm
ホイールベース:2620mm
車重:1310kg
駆動方式:FF
エンジン:1リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:110PS(81kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:200N・m(20.4kgf・m)/2000-3000rpm
モーター最高出力:13PS(9.4kW)
モーター最大トルク:62N・m(6.3kgf・m)
タイヤ:(前)205/55R16 91V/(後)205/55R16 91V(グッドイヤー・エフィシェントグリップ パフォーマンス)
燃費:18.6km/リッター(WLTCモード)
価格:323万8000円/テスト車=359万8000円
オプション装備:ボディーカラー<キングズレッドメタリック>(3万3000円)/ディスカバープロパッケージ(19万8000円)/テクノロジーパッケージ(22万円) ※以下、販売店オプション フロアマット<プレミアムクリーン>(3万3000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1万4140km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:573.0km
使用燃料:33.8リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:16.9km/リッター(満タン法)/16.2km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。














































