なぜ新型「トヨタ・プリウス」は“かっこいいクルマ”になったのか?
2022.11.28 デイリーコラムまさかのスーパーカー的シルエット
新型「プリウス」の画像を見て仰天した。まるで「ランボルギーニ・エスパーダ」じゃないか! と。
もちろん、新型プリウスとエスパーダは厳密には違う。いや、かなり、大幅に違うが、流麗かつペッタンコの4シーター/5シーター車という点は同じ。新型プリウスのペッタンコさはエスパーダ並みだ! と感じたのである。
ちなみに私、エスパーダに一度だけ試乗させてもらったことがあるのですが、異次元体験でした。特に後席がとんでもなかった。リアガラスが後席頭上あたりまで伸びていて、温室の中にいるみたい! フロントに搭載された4リッターV12は今にも止まりそうで、とっても頼りなかったです。あ、これは新型プリウスとは関係ない話ですね。
とにかく、新型プリウスのシルエットはスーパーカー的だ。スポーツカーを飛び越えて、スーパーカー的なのだ。そこに私は大いなる感銘を受けました。「トヨタ、やるな」と。
新型「クラウン」の大変身ぶりに関しても「トヨタ、やるな」と思ったけれど、新型プリウスのスーパーカー化にも、同じくらい「トヨタ、やるな」と思いましたよ。いや、「やるな」なんて上から目線は申し訳ない。「ハハーッ!」と平伏するしかない。
大ピンチあっての大バクチ
近年のトヨタは、時としてわれわれの期待や想像をはるかに超えてくる。「まさかここまでやるとは!」とうならせる。特に、もはや失うもののない状況でそれが顕著だ。
クラウンも、「このままでは未来がない」という状況だったが、プリウスもまったく同じ。4代目がデザインで大コケし、トヨタの看板モデルの座から滑り落ちていた。全世界でプリウスは忘れられかけていたのだ。ここ日本ですら!
日本では、もはやハイブリッドはスタンダード。一番フツーの選択といってもいい。つい10年前までハイブリッドカーは未来の乗り物で、プリウスはその代名詞だったが、今やハイブリッドカーは夢ではなく現実そのもの。むしろ保守的な選択だ。ラインナップもウルトラ拡充し、ユーザー側はプリウスにこだわる必要はカケラもなくなった。極論すれば、もうプリウスはいらなかったのだ。だからバクチを打てた。
3代目までプリウスは未来の実用車だったが、5代目たる新型は、未来のスーパーカー……みたいなものを目指したことで、新たな夢の存在となった気がする。
総EV化へのアンチテーゼ
ところで、新型プリウス、サイズはどうなってるのか?
全長×全幅×全高=4600×1780×1430mm。先代に対して、25mm長く、20mm幅広く、40mm低くなったそうです。
全幅、こんなもんなのか。写真を見た印象だと、全幅1900mmくらいに感じたけど。これなら実用性も十分じゃないか! 新型プリウスは、実用的なスーパーカーというわけですね!
ハイブリッドモデル(HEV)のパワーユニットは、1.8リッター(システム最高出力140PS)と2リッター(同193PS)の2本立て。特に後者の2リッターモデルは、1.8リッターのみだった先代比で1.6倍となるパワーを獲得しており、スーパーカールックにリボーンしたプリウスにふさわしい動力性能を実現したという。リアに独立型モーターを搭載する4WD車(E-Four)もラインナップし、2リッターのプラグインハイブリッドモデル(PHEV)も用意される。
ここまで理解して、私は思った。「新型プリウスがあれば、『クラウン クロスオーバー』はいらないんじゃ……」と。見た目的にはクラウン クロスオーバーよりさらにカッコいいし、2リッターハイブリッドならパワーも十分だろう。同じ2リッターでもPHEVなら30PS増しの223PS! 「未来のクルマはEV一択」と迫っている連中をギャフンと言わせるなら、クラウン クロスオーバーより、断然新型プリウスだ。
プリウスは、再び「夢」になることに成功するのではないだろうか。少なくとも、ここ日本では。そこには、EV独裁に対する抗議のメッセージも込められている。トヨタは闘ってくれている! ありがたくて涙が出ます。
(文=清水草一/写真=webCG、アウトモビリ・ランボルギーニ/編集=関 顕也)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
高齢者だって運転を続けたい! ボルボが語る「ヘルシーなモービルライフ」のすゝめ 2025.12.12 日本でもスウェーデンでも大きな問題となって久しい、シニアドライバーによる交通事故。高齢者の移動の権利を守り、誰もが安心して過ごせる交通社会を実現するにはどうすればよいのか? 長年、ボルボで安全技術の開発に携わってきた第一人者が語る。
-
走るほどにCO2を減らす? マツダが発表した「モバイルカーボンキャプチャー」の可能性を探る 2025.12.11 マツダがジャパンモビリティショー2025で発表した「モバイルカーボンキャプチャー」は、走るほどにCO2を減らすという車両搭載用のCO2回収装置だ。この装置の仕組みと、低炭素社会の実現に向けたマツダの取り組みに迫る。
-
業界を揺るがした2025年のホットワード 「トランプ関税」で国産自動車メーカーはどうなった? 2025.12.10 2025年の自動車業界を震え上がらせたのは、アメリカのドナルド・トランプ大統領肝いりのいわゆる「トランプ関税」だ。年の瀬ということで、業界に与えた影響を清水草一が振り返ります。
-
あのステランティスもNACS規格を採用! 日本のBEV充電はこの先どうなる? 2025.12.8 ステランティスが「2027年から日本で販売する電気自動車の一部をNACS規格の急速充電器に対応できるようにする」と宣言。それでCHAdeMO規格の普及も進む国内の充電環境には、どんな変化が生じるだろうか。識者がリポートする。
-
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット― 2025.12.5 ハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。
-
NEW
アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター(FR/8AT)【試乗記】
2025.12.13試乗記「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。 -
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】
2025.12.12試乗記「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。 -
高齢者だって運転を続けたい! ボルボが語る「ヘルシーなモービルライフ」のすゝめ
2025.12.12デイリーコラム日本でもスウェーデンでも大きな問題となって久しい、シニアドライバーによる交通事故。高齢者の移動の権利を守り、誰もが安心して過ごせる交通社会を実現するにはどうすればよいのか? 長年、ボルボで安全技術の開発に携わってきた第一人者が語る。 -
第940回:宮川秀之氏を悼む ―在イタリア日本人の誇るべき先達―
2025.12.11マッキナ あらモーダ!イタリアを拠点に実業家として活躍し、かのイタルデザインの設立にも貢献した宮川秀之氏が逝去。日本とイタリアの架け橋となり、美しいイタリアンデザインを日本に広めた故人の功績を、イタリア在住の大矢アキオが懐かしい思い出とともに振り返る。 -
走るほどにCO2を減らす? マツダが発表した「モバイルカーボンキャプチャー」の可能性を探る
2025.12.11デイリーコラムマツダがジャパンモビリティショー2025で発表した「モバイルカーボンキャプチャー」は、走るほどにCO2を減らすという車両搭載用のCO2回収装置だ。この装置の仕組みと、低炭素社会の実現に向けたマツダの取り組みに迫る。 -
ホンダの株主優待「モビリティリゾートもてぎ体験会」(その2) ―聖地「ホンダコレクションホール」を探訪する―
2025.12.10画像・写真ホンダの株主優待で聖地「ホンダコレクションホール」を訪問。セナのF1マシンを拝み、懐かしの「ASIMO」に再会し、「ホンダジェット」の機内も見学してしまった。懐かしいだけじゃなく、新しい発見も刺激的だったコレクションホールの展示を、写真で紹介する。









































