メルセデスAMG C43 4MATIC(4WD/9AT)
すべてがハイレベル 2022.12.28 試乗記 「メルセデスAMG C43 4MATIC」に積まれるM139は、2リッター直4エンジンにF1由来の電動・排気ターボチャージャーを組み込んだAMG謹製の最新パワーユニット。そのパフォーマンスは、「もしや力不足では?」という疑念を拭い去るに十分なものだった。C43に2リッター直4?
W206と呼ばれる5代目「Cクラス」が日本でデビューしたのが2021年6月のこと。それから約1年4カ月後の2022年10月、待望のスポーツモデルであるメルセデスAMG C43 4MATICが日本に上陸した。
AMGといえば、エンジンの組み立てをひとりのマイスターが行う“One man, One engine(ワンマン、ワンエンジン)”という伝統があり(エンジンによっては例外もある)、エンジンづくりの意気込みは並大抵ではない。それだけに、メルセデスAMGブランドのクルマに触れるときには、真っ先にエンジンの仕様をチェックしてしまうのが習慣である。
さっそくプレスリリースを見ると、このC43 4MATICに搭載されるM139ユニットもその伝統にのっとっていると記されていたが、併記されている説明を見て、目を疑った。
「直列4気筒エンジンとして初めて“One man, One engine”の主義に従い……」
C43 4MATICのエンジンって2リッター直列4気筒ターボなのか! 自動車税(種別割)が安いじゃないか……というのはさておき、先代のC43が3リッターV6ターボだっただけに、「いくらエンジンのダウンサイジングが進んでいるとはいえ、Dセグメントのスポーツモデルに2リッター直4じゃあ寂しいだろう」というのが私の第一印象だった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
電動ターボを採用
とはいえ、そこはモデルチェンジの常で、排気量が小さくなっても、最高出力では旧型を上回っている。旧C43 4MATICが最高出力390PS/6100rpm、最大トルク520N・m/2500-5000rpmというスペックであるのに対し、新型は408PS/6750rpm、500N・m/5000rpmと最高出力が18PS向上しているのだ。
数字以上に胸躍らせるのが、新しいターボチャージャーの搭載。このM139には、量産車用としては世界初となる「エレクトリックエキゾーストガスターボチャージャー」が採用されているのだ。
メルセデスがF1で磨き上げてきたというこの技術は、ターボチャージャーの軸に組み込んだ電気モーターで直接ターボを駆動するというもの。排気の流れが遅い低回転域では電気モーターで、排気の流れが十分な高い回転域ではこれまでどおり排気によってターボを駆動することで、全回転域で、いわゆる“ターボラグ”のないレスポンスの良さと、低回転域での高トルク化が図られるという。
これに似たシステムとして、メルセデスは3リッター直6ターボのM256に、モーター駆動のコンプレッサーを組み合わせている。こちらはターボと電動コンプレッサーの2本立てであり、電動ターボひとつのC43のほうが、より進化したシステムであることは容易に想像がつく。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
期待以上のパフォーマンス
そんなことを考えながら向き合うC43 4MATICは、「パナメリカーナグリル」と呼ばれる、縦のバーを強調したAMG専用デザインを手に入れ、迫力満点。フロントフェンダーに輝く「TURBO ELECTRIFIED」の文字も誇らしげだ。コックピットは光沢のあるカーボンパネルと、ARTICOと呼ばれる人工皮革でカバーされたダッシュボードが、スポーティーさと上質さを際立たせる。
さっそくエンジンを始動しクルマを発進させると、「これが2リッターターボ?」と驚くほど、低回転から豊かなトルクを発生してみせる。アクセルを軽く踏み増したときの反応も素早く、電動ターボに加えてベルト駆動のスタータージェネレーターによるアシスト(ブースト機能)のおかげで、大排気量の自然吸気エンジンのような頼もしさである。
少し深くアクセルペダルを踏んでやれば、ラクにまわりのクルマをリードできる加速が得られる。そこからさらにアクセルペダルを踏み込むと、4000rpm手前あたりからターボエンジンらしい伸びのある加速が楽しめた。
このクルマには、トルクコンバーターの代わりに湿式多板クラッチを用いる9段の「AMGスピードシフトMCT」が搭載されるが、切れの良いシフト動作は、とくにマニュアルシフト時には操る楽しさを加速する。エキゾーストサウンドをセンサーで拾い室内のスピーカーで再生する「AMGリアルパフォーマンスサウンド」も、やりすぎ感がないのもいい。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
長距離ドライブもお手のもの
いまどきのプレミアムスポーツだけに、C43 4MATICの乗り心地は洗練されている。前245/40ZR19、後ろ265/35ZR19サイズの「ミシュラン・パイロットスポーツ4 S」タイヤが装着されたC43 4MATICは、一般道で路面によっては多少コツコツと軽いショックを伝えてくることがあるものの、ゴツゴツした不快な硬さとは無縁で、拍子抜けするほど快適な乗り心地を示す。
高速道路では落ち着いたフラットな乗り心地で、道路の継ぎ目を通過する際のショックも軽くいなす。疲れ知らずのC43 4MATICは、パワフルなエンジンとあいまって、長距離ドライブもお手のものだ。
あいにく今回は本格的なワインディングロードで長時間にわたり試すチャンスがなかったが、ノーズが軽く、またリアアクスルステアリングが備わるC43 4MATICの軽快な動きは、高速道路などでもよくわかる。コーナリング中のロールも抑えられており、スポーティーなハンドリングと快適性をハイレベルで両立するあたり、可変ダンピングシステムの「AMG RIDE CONTROLサスペンション」の効果は絶大といえる。
多くのシーンでレベルの高い走りが確認できたC43 4MATIC。走りの楽しさと実用性、そしてプレステージを求める人には、見逃せない存在といえるだろう。
(文=生方 聡/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
メルセデスAMG C43 4MATIC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4785×1825×1450mm
ホイールベース:2865mm
車重:1860kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:408PS(300kW)/6750rpm
エンジン最大トルク:500N・m(51.0kgf・m)/5000rpm
モーター最高出力:13.6PS(10kW)
モーター最大トルク:58N・m(5.9kgf・m)
タイヤ:(前)245/40ZR19 98Y/(後)265/35ZR19 98Y(ミシュラン・パイロットスポーツ4 S)
燃費:11.1km/リッター(WLTPモード)
価格:1116万円/テスト車=1150万6000円
オプション装備:ボディーカラー<オパリスホワイト>(10万5000円)/パノラミックスライディングルーフ(24万1000円)
テスト車の年式:2022年型
テスト車の走行距離:1121km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:434.0km
使用燃料:42.3リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.2km/リッター(満タン法)/10.1km/リッター(車載燃費計計測値)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
NEW
トヨタRAV4アドベンチャー(後編)
2026.8.30思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「トヨタRAV4」をドライブ。前編ではそのパワートレインの中間加速のよさを語った山野。後編ではそこをもう少し掘り下げて聞くとともに、止まる、曲がるも含めたシャシー全体の印象を聞いてみた。 -
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】
2026.8.29試乗記「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。 -
思考するドライバー 山野哲也の“目”――ポルシェ・タイカンGTS編
2026.8.28webCG Moviesレーシングドライバー山野哲也が「ポルシェ・タイカン」に試乗。最高出力700PSの「GTS」グレードに、ワインディングロードでむちを当てた印象は? -
酷評もされたBEVのフェラーリが4000万ドル!? 「ルーチェ」の初物に誰が、なぜ大金を出したのか?
2026.8.28デイリーコラムフェラーリ初の電気自動車として話題になった「ルーチェ」。その特別仕様の生産0号車が、米国内のカーオークションにおいて4000万ドル(約64億円)という衝撃価格で落札された。その背景について、事情に詳しい西川 淳がリポートする。 -
第60回:BYDオートジャパンの社長を直撃! いま日本で「ラッコ」を買う正義とは?
2026.8.27小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ中国BYDの軽スーパーハイトワゴン「ラッコ」がついに日本上陸を果たした。やっぱりというか期待どおりというか、その低価格と装備の充実ぶりに不躾・小沢コージも大変驚いた。BYDオートジャパンの東福寺厚樹社長を直撃し、いろいろ聞いてきた。 -
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(前編)
2026.8.27あの多田哲哉の自動車放談BMWの期待がかかる電気自動車(EV)「iX3」の新型に、元トヨタの多田哲哉さんが試乗。その仕上がりを、BMWとの協業経験もあるエンジニアはどう評価するのだろうか?

















































