ホンダ・アコード 開発者インタビュー
リニアな発進と加速感にこだわりました 2023.09.21 試乗記 2024年春に発売予定の11代目「アコード」。1976年に初代モデルが誕生した伝統あるホンダのセダンは、いかなる進化を遂げたのか。“セダンばなれ”が叫ばれる逆風のなかで登場する新型車の特徴とこだわりを、開発責任者に聞いた。本田技研工業
四輪事業本部 四輪開発センター
新型アコード開発責任者
横山尚希(よこやま なおき)さん
今回が本来の導入スケジュール
通算11代目となる新型ホンダ・アコードの概要が公表された。2023年12月に予約受け付けを開始し、2024年春に発売予定という。
先代アコードは2020年2月に国内発売されるも、2022年8月に生産終了。2023年1月をもって販売も終えた。日本から見ると発売からわずか2年半で生産終了、販売期間も3年に満たず、「販売不振による早期撤退か?」とささやかれたりもした。
ただ、先代アコードも最大市場の北米では2017年秋に導入がスタートしており、5年という例年どおりのモデルライフをまっとうした計算になる。2022年8月の生産終了もモデルチェンジに向けた準備にすぎず、実際、2022年11月には新型アコードがまず北米で発表された。
先代アコードが日本で短命だったのも、日本仕様の生産拠点がタイに切り替えられるなど、いろいろな変化があったかららしい。
その点については、新型アコードの開発責任者をつとめている横山尚希さんも「先代アコードはいろいろな都合で日本導入が遅れてしまいましたが、今回のスケジュールが本来といえるものです。まずは北米と中国で出して、そして日本など……という順番での導入となります」と説明する。
最近のホンダのグローバル商品は販売規模の大きな市場から順次導入。販売台数は多くないが地元市場でもある日本では、満を持するかたちで発売することが通例だ。今回も2022年11月の北米発表に続いて、中国でも2023年5月に正式発表となっている。
もっとも、2022年の先代アコードの生産終了によって、一時的であるにせよ、国内市場からホンダの4ドアセダンが姿を消した。というのも、当時は同時に「インサイト」が生産終了しただけでなく、その前年にモデルチェンジされた「シビック」も、日本ではセダンを廃止していたからだ。
また先日、トヨタが北米でアコードと強力なライバル関係にある「カムリ」の国内生産を2023年末で終了すると発表。このまま日本での販売も終えると思われる。こうして日本ではセダンばなれが顕著に進んでいるのが現実だが、アコードの国内販売に迷いはなかったのだろうか。
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現在はアコードがフラッグシップ
「日本でセダンを出すかどうかの議論は基本的にありませんでした。日本でアコードに乗っていただいているお客さまは、今も一定数いらっしゃいます。また、ホンダでは『レジェンド』もなくなってしまい、今ではアコードがフラッグシップです。
実際、われわれ開発現場でもアコードというのはずっと非常に大切な存在で、いろいろな新技術も、まずはアコードを目がけて開発しています。そして、アコードはモデルチェンジを機に、そうした新技術をしっかり入れるのが恒例になっています。
そんなアコードですから、日本でも発売するのはまったく自然だと考えています」
実際、新型アコードもプラットフォームこそ従来改良型というが、要素技術は新機軸がテンコ盛りである。運転支援システムの最新版「ホンダセンシング360」が国内初導入となるほか、車内機能をひとつのダイヤルで直感的に操作できる「エクスペリエンスセレクションダイヤル」も新しい。さらに車載向けコネクテッドサービス「Googleビルトイン」を標準採用するのも、日本市場ではボルボに続いて2例目となる。
とくに12.3インチのセンターディスプレイと10.25インチの“バイザーレス”メーターパネルに、エクスペリエンスセレクションダイヤルやGoogleを組み合わせたインフォテインメント系装備は自信作という。
「車内で使える機能がどんどん入ってきていますが、そのぶん、そうした膨大な機能を直感的に操作するのがむずかしくなっています。でも、新型アコードなら、お気に入りの機能を登録して、普段よく使う機能を一発ですぐに呼び出して操作できるようになります」
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北米仕様のままでは戦えない
同じアコードでも先行発売された北米仕様は、メーターパネルも一般的なバイザータイプであり、エクスペリエンスセレクションダイヤルも備わらず、エアコンパネルは一般的な3ダイヤル式となっている。
「北米のお客さまにとってのアコードは通勤や仕事で使われることが多く、良くも悪くも、シンプルでこむずかしくないことが望まれています。ですので(北米仕様車は)、メーターやヒーコン(=エアコン調整)パネルもシビックに似たシンプルなものとしました。
いっぽうで、中国や日本では『北米仕様のままでは戦えない』という議論になりました。他社のトップクラスのインフォテインメント技術にしっかり追いつきながら、ホンダの独自性を出すべく考えたのが、今回のデザインです」
新型アコードがインフォテインメント系装備に力を入れるのは先代の反省もあるという。
「日本での先代アコードは、60代を中心に年齢層が上のお客さまには好評をいただきましたが、デザインを含めて、若い人たちに寄り添えていなかったのかなという反省があります。
もう少し若い40~50代で生活に余裕をお持ちのお客さまは、デジタル技術もそれなりに使いこなしていて、華美ではないですが、しっかりと上質なものを好みます。たとえばポロシャツ1枚でも、どこかワンポイントだけでも自分のこだわりを込めるような、シンプルななかにも自分の個性を主張するような人です。
ですので、新型アコードではインフォテインメント系の装備を充実させて、デザインも、あえてギラギラ感をおさえています。シンプルななかにキラリと光る個性を主張することを心がけました」
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新開発のハイブリッドシステムを搭載
「走りについても、先代では反省点のひとつでした。今回は北海道のテストコースで徹底的に走り込んで熟成や微調整をしました」
横山さんはもともと、パワートレイン畑のエンジニアだ。先代アコードではエンジン設計プロジェクトリーダーをつとめたという。というわけで、走りにこだわった新型アコードでも、とりわけパワートレインへの思い入れが強い。
日本で販売される新型アコードは1グレード構成となり、パワートレインは従来どおりの2リッターハイブリッドとなるが、ユニット自体はまったく新しい。
「エンジンはシビックに続く2リッター直噴ですが、トランスミッションは新開発です」
ホンダの開発チーム内では、ハイブリッドシステムも「トランスミッション」と呼ぶ。
「今回のトランスミッションはモーターのトルクが上がっているので、発進の力強さなど、車格にふさわしいパワートレインに仕上がっています。先代ではエンジン音と加速がマッチしていないところが反省点なのですが、シビックに続いてステップシフト制御を取り入れ、加速でも減速でもリニアなフィーリングを目指しました。
また、今回はモーターが強力になっただけでなく、発進時にあえてエンジンを早く始動することで、燃費性能を少し横においても、リニアな発進や加速感にこだわっています。
いちばん大きく変わったのがシフトパドルです。先代より2倍の減速度が出せるようにして、ワインディングロードでもフットブレーキを使わず、パドルだけで気持ちよく、安全に走れるくらいになっています。ただ、ハイブリッドで減速度を出すのは簡単ではなく、新型アコードでは電気自動車『ホンダe』の技術を活用するなど新しい試みをしています。
先代の走りで少し物足りないな……と感じられたところは、ほぼすべて改善できたと思っています」
こうして走りについての話題になると、輪をかけて楽しそうに話しはじめるあたり、横山さんもやはり典型的なホンダマンだ。
(文=佐野弘宗/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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